第10話 患者第1号
~~~ 住宅街 ~~~~~~~~~~
時は、子一つ時(23時)。
人通りのない住宅街にさまよう1人の姿がった。
風雷である。
周囲を見渡し、何やら怪しげな行動で歩行してる。
落とし物を探してるのか。
はたまた盗みを企んでるのか。
挙動不審で見ても怪しい人物にしか映らない。
こんな夜更けに彼は一体何をしているのか。
風雷(くっそ。腹減った。)
人の血を求めていたのである。
ここ2日ほど食事にありつけてない。
先ほども沙樹殿からのご馳走は頂いてはいる。
その好意はありがたい。
だが、人が木の葉で腹を膨らませたところで
満たされないのと同じように、風雷もまた
沙樹殿の料理では満たされないのだ。
彼はバンパイアである。
血をすすらなければ生きて行けない性なのだ。
風雷(この地は治安がいい。
これだけ歩いても死体が見つからない。)
彼はここ桐生領へ来る前、今と変わらず夜の街を徘徊し
死体を見つけては食事をするといった方法で
生きながらえて来た。
決して、人を襲って無理やり血を奪うような
ことはしてこなかったのである。
それが功を制してか、お尋ね者になるだとか
バンパイアの存在が明るみになるとったことに至ってない。
~~~ 吉原 ~~~~~~~~~~
相馬領のある一角で、深夜だというのに
ひときわにぎわう繁華街があった。
通りは提灯で明るく、男性陣で
あるれている。
ここは吉原である。
酒か女を求めて夜な夜な男どもはここへ訪れる。
酒屋と風俗店しかなく、ここでなら合法的に
女を売り買いできる特殊な地域に認定されていた。
荒くれ者1「金二朱(1万円)だ。貴様は?」
荒くれ者2「俺は空だ。何もねぇ。」
荒くれ者3「俺も空だ。」
荒くれ者1「やばいぞ。」
荒くれ者2「このまま戻れば半殺しだ。」
荒くれ者の3人は、やすい酒を飲みながら
今日の稼ぎについて会話してる。
荒くれ者3「計画通り、金持る奴を襲うとしよう。」
荒くれ者1「あの痩せはどうか?」
荒くれ者2「脅せば簡単に金出しそうな面しとる。」
荒くれ者3「あ奴は期待できない。」
荒くれ者1「なぜだ?」
荒くれ者3「あの店は値の安い女しかいない。」
荒くれ者1「お主詳しいな。
さてはここの常連だな。」
荒くれ者3「たまに来るだけだ。」
荒くれ者2「なら一番高い店はどこだ?」
荒くれ者3「2つ左の店だ。」
荒くれ者1「なるほど、あそこで品定めしてる輩
を捕まえればいいのだな。」
荒くれ者2「お!ちょうど侍が出て来たぞ。」
荒くれ者1「まて、あれば村隆殿ではないか。
俺達は付いている。」
荒くれ者3「知り合いか?」
荒くれ者2「侍に手出したらお縄だぞ。」
荒くれ者1「いや。奴は浪人だ。用心棒で飯食ってる。
金持ち連中の引く手あまただが、
反面、やつの首に賞金を懸けてる連中もいる。」
荒くれ者2「奴の首を持って行けばいくらもらえる。」
荒くれ者1「百両(800万)は受け取れるはずだ。
だがかなりの手練れだ。
俺が後を付ける。
お前は仲間を呼んで来い。」
荒くれ者2「俺が連れてこよう。」
荒くれ者1と3は、浪人を尾行し、
荒くれ者2は仲間を呼びに行くのであった。
~~~ 住宅街 ~~~~~~~~~~
人気のいない裏路地で、村隆は足を止める。
そして腰の刀に手を添えた。
村隆 「おい!こそこそ付け回してる奴。
顔を見せよ。」
荒くれ者1「流石は村隆殿。」
村隆を尾行していた荒くれ者の2人が姿を表す。
村隆 「いくら貰った?」
荒くれ者1「これから交渉だ。」
村隆 「死にたい奴から前に出よ。」
荒くれ者1「1対1はしない主義なんで。」
村隆の背後に4人の荒くれ者が現れた。
道は前後しかなく、2人と4人に挟まれる
形となった。
そして、荒くれ者の6名全員が刀を握り
村隆へ剣先を向ける。
流石に分が悪い。村隆も刀を抜き両手で握る。
荒くれ者は徐々に近づき、前後10mまで迫った。
一触即発の状態である。
ここで最初に行動で出たのが荒くれ者1。
ふところから何かを取り出し、口元に当てた。
そして、思いっきり息を吐く。
何かが飛んで来たのは村隆にも理解できた。
だが月明かりだけでは正確に見切れず、
避けたものの村隆の右腕に何かが刺さった。
直径5cmほどの矢である。
村隆は、即座に矢を抜き勢いよく投げ返す。
その矢は、荒くれ者1の真横にいる荒くれ者3
の額へと突き刺さる。
荒くれ者1「まだ動くな!毒矢を放った。
倒れるまで待て!」
荒くれ者1は、村隆の反対側にいる同士へ
指示をする。
それを聞いた村隆は確かに右腕がしびれるのを感じた
このままでまづいと判断し、村隆は4人方へと走り出す。
4人は逃げたら背中から刺されると判断し
立ち向かうことに。
一瞬だった。
村隆が4人のふところに入った時には、
腹と首が切られ4人は同時に倒れる。
村隆は、既に全身が震えており、
立っているのもつらい状況であったが
それを感じさせず、
気迫で荒くれ者1に正面をにし、にらむ。
その光景を見て、荒くれ者1が恐怖し。
半歩下がると。
隣の荒くれ者3が倒れた。
荒くれ者3に目を向けると、
口から泡を吹いて全身が震えている。
荒くれ者1は、背筋に悪寒が走り。
気付くと、無意識に後ろへ全力で走っている。
そう、荒くれ者1は恐怖で逃げたのだ。
それを見届け、村隆は力尽きその場に倒れる。
~~~
風雷(血の臭いだ。近い。)
ちょうど近くを風雷が通りかかった。
血の臭いで居ても立っても居られず、
自然と早歩きとなる。
そして、先ほどの現場に風雷が現れる。
5人の死体を発見する。
遠くにもう一人倒れている。
風雷(やっと見つけた。しかも大量だ。)
風雷は無我夢中で、手前の腕にかぶりつく。
風雷(死んでまだ間もない。運がいい。)
血の鮮度は大事。
料理と同じで時間が経てば経つほど味は落ちる。
死んだ直後なので自分は運がいいと感じたのだ。
風雷(こ奴はどうかな?)
お酒と同じように血の味も人によって千差万別。
死体が沢山あるので試飲を始めることに。
風雷(こ奴。生きてる!)
最後の1人を試飲したところ、生きてることが発見。
しかも毒におかされている。
風雷は、毒針が刺された部分を即座に特定し。
その箇所をすすって毒を体内から吐き出す。
既に手遅れではあるが、やらないよりかはましである。
風雷の診断では助かる可能性はある。
血は十分飲み干した。
身体全身に活力がみなぎっている。
村隆を肩にしょい診療所へと走り出す。
患者第1号だ。