陸拾 逆さ男
1
通学路も校庭もめっきりと秋めいて、空は高く、風も心地よい季節になった。
教室の後ろの席で、紅葉と咲良とコマチが話し込み、脈絡なく話題を変えていく。
その中で、コマチは、
「年取りたくないなぁー。オバサンになるぐらいなら、死んでしまいたい」
と、極端なことを言った。
紅葉がコマチを馬鹿にした眸で見た。
「また、そんな年取るとか誰でも当たり前のことで、すぐ死ぬ死ぬって言う…」
咲良は首を傾げ、
「ええー。でも、静先生みたいなオバサンになれたら、いいなぁーって思うけど…」
と、呟いた。
「静先生は超絶美人でしょ。それに、一応まだ二十代やし…」
と、コマチが言う。
「問題は三十代。一気に汚くなる…」
「可愛い服も着れないし。若くないのに無理するのって、余計にかっこ悪いもんね…」
コマチの友達のスミレと煌星が来た。
「十九から二十歳になるのって、でかいよねぇー」
女の子達は全員で溜息をついた。
掃除の時間、咲良とスミレが一緒に廊下を掃いている時、スミレがスマホを落とした。
咲良が拾ってあげて、菫のシールが貼ってあるのを見た。
「菫って、地味な花よね。花壇の端にまとまって咲いてる感じ。バラと違って、主役になれへん花…。誰にも気付かれへん…」
スミレは照れ臭そうに言った。
「そうかな? 私は小さくて可愛い花だと思うけど。綺麗な濃い紫で…」
咲良は社交辞令なしに、本気で言った。
「コマチはほんまにバラみたい。華やかで激しくて、気が強くて。私もコマチみたいやったらなぁー」
スミレは残念そう。
スミレはややぽっちゃりだけど、別に不健康なほどではないし、目はくっきり二重で、個性的な顔をしている。気にすることもないのに、と咲良は思う。
スミレは咲良のことも、羨ましく思っている。
「咲良ちゃんは小顔で背が高くて、手足長くて。中性的な感じでキリッっとしてて、めっちゃいいなぁー」
スミレは箒を動かしながら、咲良をベタ褒めした。
咲良は困ってしまって、
「そんなことないよ。よく男の子に間違えられるよ。スミレちゃんは女の子らしくて可愛いと思うよ」
と、言った。
スミレはその言葉を待っていたように、大袈裟に照れた。
「そんなぁー。私は大したことないってぇー」
突然、スミレは肩を落とした。
「煌星は新見くんとうまくいってるし、紅葉ちゃんは雨音くんとつきあってるし、コマチちゃんは旭さんを狙ってる? 私も恋したいなぁー。咲良ちゃんは?」
「いないよ。そんなの」
男性恐怖症の咲良はムッとした。
「クラスの仲良し三人組で、私だけ彼氏出来たことないもん。やっぱり、私はイマイチって思われてんのかなぁ。横にいる二人がめっちゃ可愛いから、比べられてしまう…。なぁ、顏って大事やん?」
「そんなの、どう思われてたっていいじゃん」
咲良は急に怒り出し、箒を投げ出して、教室に入って行ってしまった。
スミレは呆気に取られた。
咲良は帰り道、その話を紅葉に相談した。
「スミレちゃんは悩まなくていいことを悩んでると思う。スミレちゃんにはいいとこいっぱいあるのにさ。優しいし、面倒見いいし、話しやすいし…。そのうち、彼氏出来ると思うけど」
紅葉はストレートな咲良に笑ってしまった。
「そうやね。他人の悩みは大したことないように思うけど、本人は深刻やからね。そっか、スミレはそういうこと悩んでるんか…」
紅葉は心配そうに付け足す。
「スミレは優しくて面倒見いいと思われたいみたいやね。ちょっと他人に気を遣い過ぎって言うか…。友達はそんな期待してないのに、相手の都合よく動く。コマチは便利な雑用係みたいにスミレを使ってる。スミレは自分の需要を間違えてるかも…」
「うん。そう思う」
咲良も頷いた。
2
スミレはいつも笑っている。
楽しいからと言うより、他人に気を遣って笑顔で接している。
それで時々、疲れてしまう。
自分で何か言った後、あんなこと言うんじゃなかったと後悔する。
スミレは咲良に放って行かれた後、彼女の捨てた箒を拾い、不安になった。
「私、咲良ちゃんに嫌われたかな…? どう思われた? あんなこと、話さなかったらよかった…」
スミレは咲良の箒を見て、ちょっと笑う。
「咲良ちゃん、自由な子やな。他人にどう思われても、気にならへんのかな…」
咲良は紅葉がいない時は、大抵一人で過ごしていて、寂しそうでもなく、一人で平気そうだった。
「あの子はクラスで、めっちゃ変人やと思われてる。もっと愛想よくすればいいのに」
スミレは咲良が不思議だった。
スミレは洗面所で手を洗い、鏡を覗いた。
やっぱり、どう見ても平凡な容姿の女の子が鏡の向こうにいた。
平凡は悪くはないことだが、彼女には不満だった。
馬鹿げたことだと思っていても、男子にチヤホヤされたり、モテたりしたかった。
テレビのアイドルみたいに細く痩せて、顔も美容整形してみたかった。
可愛いと言われたくて、髪型に気を遣ったり、流行りの服を買ってみたりした。
何を着たらいいかわからなくて、ランキングを見て買ったり、コマチの真似をして買った。
そういう服は大概、うまく着こなせなかった。
人気のあるアクセサリーを買ってみた。最初は周囲に褒められた。
でも、センスがいい人にはなれなかった。他人の真似の領域を出てないからだ。
彼女はどこにでもいる、普通の女の子だった。
「鏡は内面まで映し出す…って言うよね。私、何だか歪んでる…」
スミレは鏡に映った自分を見て、残念だった。
大人になってメイクすれば、きっと雰囲気も変わるだろう。自分に言い聞かせる。
照明を点けてなかったので、手洗い場は薄暗かった。
自分の顔が少しだけ老けて見えた。
「わー。何やってんの、スミレ? 自分の顔に見とれてんの? キモいー」
通りがかった新見と、同じクラスの男子が冷やかした。
「おまえ、ブスのくせに何うっとり鏡見てんのー? その程度で、自分のこと可愛いとか勘違いしてんのかぁー?」
新見がスミレの悩みを知りもしないで、からかった。
スミレは今まで、どんな時も笑顔で言い返していた。
「新見くんみたいなチャラ男に言われたくないよー。自分こそ鏡見たら? 雰囲気イケメンでしょ!」
とか、結構きつめに言い返す。
それで新見も、
「チェッ。スミレは厳しいなぁー」
と笑って済んだのに、今日は彼の予想外の展開になった。
「そんな言い方しなくても…」
スミレは突然涙を零して、走り去った。
「スミレ…、どうしたん? 思春期なの?」
新見は友達を振り返った。
スミレは涙ぽろぽろ零しながら走って、校舎の裏庭まで来た。
誰もいないところで、今までの溜まったストレスが出た。
「どうしたらいいの? 自分が嫌。どうしても嫌…」
スミレは木の幹を叩き、泣きじゃくった。
木の上に、木製の仮面を付けた男が座っていた。
彼は枯葉色の服を着て、棒のように細い足をブラブラさせている。
仮面は目と口の三日月形の孔が開いているだけの、簡素なもの。
彼は無表情な仮面を傾け、
「どうしたの? 何があったの?」
と、スミレに優しく聞いた。
スミレは最初、驚いた。
でも、興奮していて、話し出すと止まらなくなった。
「そうか、そうか…」
仮面の男がゆっくり、木の上から降りてきた。
ヤモリが壁を這うように、体を逆さにして降りてきた。
3
しゅとーん部の道場。
咲良は、紅葉と雨音が仲良く喋って、笑い合ってるところを見た。
咲良はスミレのことを思い出した。
「彼氏か。そんなの、別にほしくないけど…」
咲良は紅葉と雨音をじっと眺めていた。
そう言えば、最近、咲良と雨音は余り喋らなくなった。お互い、何となく紅葉に遠慮している感じだ。
「あの二人、いい感じだよねー」
旭が咲良の稽古相手をしてくれる。
彼の説明はわかりやすいし、彼女がコツを掴めるように動いてくれる。
咲良はドン臭い。なかなか上達しない。
「旭さん。旭さんは運命ってあると思いますか?」
咲良は打ち込む合間に質問した。
旭は目を見開きながら、うまく打ち返して寸止めした。
「運命の出会いってこと? それはどうかな?」
旭は意味深に言った。
聞いていた山上が吹き出した。
「まぁ、私は絶対に後悔したくないんですよ。とにかく、いつも完璧にやりきっておきたい。じゃないと、いつ道半ばで果てるかも知れないし。咲良ちゃんも後悔しないように。運命感じたら、絶対、積極的に行った方がいいと思いますよ」
「旭さんは積極的なんですか?」
咲良は意外に思った。
「はっきりした態度には出さないかも知れないけど、それなりにアピールすると思います」
旭がすまして答えた。
「咲良ちゃん。人間はいつだって変われるし、変わってもいいし、元に戻ってもいいんですよ。運命なんてね、自分次第です。要は、何をしたいか?」
旭が言った。
「俺は腹が減りました…」
雲林院がよろよろと、二人の間を割って通り、自分のリュックから菓子パンの入った袋を出した。
「私は…どうしよう…?」
咲良は雲林院からパンを一つ受け取って、一口頬張りながら、何となくマナブの顔を思い浮かべた。
「どうしたらいいんだろう…?」
彼女は考え込んだ。
4
翌日。
スミレは昨日休んでいた黒田の席に行って、
「ノートいる? 先生、ここをテストに出すかもって言ってたよ」
と、ノートを開いた。
黒田は面倒臭そうにスミレを見た。
「ありがとう。でも、俺、テスト勉強なんか適当やし。いいわ」
黒田はスミレのノートを押し返した。
「でも…」
スミレが笑顔で何か言いかけた。
「しつこいの! 頼んでないし!」
黒田が苛立って、ノートを払った。ノートは教室の床に落ちた。
一斉に、周囲の生徒が二人を見た。
スミレは注目されているように感じ、焦った。
「ゴ、ゴメンね…。押し付けるつもりはないけど。ほな、また必要な時言ってね…」
「いらんから!」
黒田は冷たく断言した。
「おいおい、黒ちゃん…。借りといた方がええよ、君は…」
新見が空気を読み、その場に入ってきた。
「大丈夫、新見くん。私、気にしてへんから…」
スミレは笑顔で言い返した。
でも、何か違和感があった。
「そう?」
新見は昨日、スミレが泣いて出て行ったので、気にしていた。
スミレから灰色の霧がぶわっと噴き出す感じがした。
「何やろ?」
新見は冷や汗をかいた。
スミレは席に戻り、机の中から木の人形を出し、教科書の下にこっそり置いた。
次の授業が始まった。
彼女は口の中でボソボソと、木の人形に話しかけた。
「私、ずっと黒田くんが好きだったんです。片思いだけど」
昨日の仮面の男とよく似た顔の人形で、頭は松ボックリ。
手足は適当にバラバラな長さの小枝で、松ボックリの胴体に糸で括り付けられている。
手足はブラブラと動く。
「でも、何回か告白してもダメで…、しつこいって…」
スミレは唇を噛んだ。
木の人形は教科書の下で、微かにカタカタ鳴った。
スミレは頷いた。
「…はい。そうです。そんな相手、追いかけても仕方ない。…でも、つい、また構いたくなってしまうんです。どう思われてるか、気になって。ただの友達でいいから、普通に接してほしい。…それがまたウザいみたいです…」
木の人形はまたカタカタ鳴った。
スミレはボソボソ喋り続けた。
「キモい…」
黒田が新見に囁いた。
新見も困って、紅葉の肘をつつく。
「うん、わかってる…」
紅葉は咲良を振り返った。
「咲良ちゃん。スミレが何か変な、松ボックリの人形と喋ってはるんよ…」
紅葉は不気味に思っていた。
「あれ、鬼だよ…。かなり悪いヤツだよ…」
咲良はスミレに憑りついた灰色の霧を睨んだ。
「何の鬼?」
「逆さの男の鬼が…、天井からぶら下がってる…」
咲良が小声で呟いた。
「私語は慎んで下さい」
先生が咲良の側まで来て、注意した。
先生で、咲良からスミレが死角になった。
霧が溢れ出していく。
冷気が教室中に広がっていく。
咲良は勇気を出して、起立した。
「先生、お腹が痛いんで保健室に行ってもいいですか?」
咲良は叫ぶように早口で言った。
そして、出て行く途中でスミレの腕をいきなり掴み、引っ張った。
「スミレちゃん、一緒に来て。話があるよ」
スミレはものすごい形相で咲良を睨んだ。
「いつも好き勝手に振る舞う。誰にも興味がなくて、誰にも気を遣わない。気楽な人やね、咲良ちゃんは!」
スミレは左手に人形を持ち、震える声を張り上げた。
咲良は驚いてスミレを見た。
今までに見たこともない、怒った顔のスミレ。
眉間に皺を刻み、スミレが立ち上がった。
「迷惑だけど、付き添って行ってあげる。転校生やから、気を遣って親切にしてたんよ。調子に乗らんといてね!」
教室にざわめきが起きた。
「スミレ…?」
黒田がポカンとした。
「う、うん…。ありがとう」
咲良はスミレと廊下に出た。
「ちょっと、大丈夫? スミレ、様子がおかしかったよ!」
コマチが紅葉に聞いた。
「先生、見て来ます」
紅葉が先生に言って、教室を飛び出した。
胸騒ぎがした。
5
咲良とスミレは保健室まで辿り着かなかった。
階段を降りたところで、スミレは校舎の裏庭に出た。
彼女は咲良を、昨日泣いた場所まで連れて行った。
「咲良ちゃんにはわからないよね。私の悩みなんか、きっとつまらないって思ってるよね?」
スミレが木の下で振り向いた。
枯れた大木が指のような枝を広げ、高くそびえている。
咲良は木の上を見上げた。
仮面の男が木の股に座り、木の股に首を挟んで、足をブラブラさせていた。
「やぁ…。俺が見えるかい…?」
仮面の男がか細い声で言った。
「何をしてるの?」
咲良が尋ねた。
「何もしとらん。生徒達の悩み事を聞いて…、ただ相談に乗っている…。君も、悩める胸の内を吐き出したまえ…」
仮面の男が言う。
横からスミレが、
「咲良ちゃん。不思議っ子ぶるの、やめなよ。そうやって、クラスの注目浴びたいんでしょ。みんなにいつまでも気を遣ってもらって、チヤホヤされたいんでしょ。…でもね、みんな、咲良ちゃんのこと、キモいって思ってるの。めっちゃ変人やなーって、噂してるよ…」
と、言った。
咲良はカッとなった。
「なんで、そんなに他人からどう思われるかばっかり、気にしてるの? 私は他人の機嫌を取る為に生まれてきたんじゃない。どう思われたって、別にいい!」
スミレは言い返されて、眉間の皺を更に深く刻んだ。
「ふーん。強いね。強がってるの? 口でそんなこと言っても、本当は寂しいくせに!」
咲良は一瞬黙った。
考えてみた。
「そうだね…。紅葉ちゃんやコマチちゃんがいなかったら、寂しかったかもね…。スミレちゃんや煌星ちゃんが親切にしてくれたから、私は寂しくないのかも…」
咲良は言葉を選び、ゆっくり話した。
「あんたがコマチと仲良くなってきたから、親切にしただけよ!」
スミレは嫌なことを言った。
木の上で、仮面の男が、
「ほほう…」
と嬉しそうに言った。
スミレは松ボックリの人形を両手で握り締め、自分の胸に押し当てた。
彼女の顔立ちは何も変わることなく、表情だけが鬼に変わった。
「咲良ちゃんみたいに可愛かったら、生まれてから何も苦労しなくても、みんなチヤホヤしてくれる。それで、咲良ちゃんは受け身で待ってるだけなんや。みんなが親切にしてくれるのを、当然のように思ってる。私は面倒クサイみたいな顔して、教室の隅に一人でツーンとすましてる…。見てて腹立つわ!」
「それは違うよ。私はただの人見知りで…」
咲良は言い返そうとした。
木から突風が吹き、咲良は目を閉じた。
次の瞬間、目を開いたら校舎が消えていた。
荒野に枯れた大木が一本だけ立っていて、木の枝からロープに吊るされた仮面の男が、風に揺れながら仮面をカタカタ鳴らした。
仮面は小刻みに揺れ、下から涙の滴が落ちた。
無表情の仮面がどこか哀しげに笑っているように見え、涙と正反対だった。
仮面はギコギコと鳴り、少しずつ回っていき、逆さになった。
逆さになった時、正しい位置に来たみたいに、コチッと音を立てて止まった。
顔が逆さになると、無表情ではなくなっていた。
哀しい怒りが伝わってきた。
「誰からもよぅ、相手にされないんだよぅ…。そこに居ても、居ないみたいに他人が通り過ぎて行くんだよぅ…。こっちを見てくれぃ…。頼むぅ…」
仮面の男のか細い声が唸った。
スミレがしくしく泣いた。
「どうして私はダメなの? 頑張ってるのにダメなの? 優しくても明るくても、笑っていてもダメなの?」
スミレの涙が人形を濡らした。
人形の顔が毒々しい赤に変わった。
咲良はその人形に触れようとした。
熱くて、咄嗟に手を引っ込めた。
「スミレちゃん。ダメじゃないよ。ほら、みんな、スミレちゃんを心配してる。あの声を聞いて…」
咲良が荒野の風に息を吹きかけた。
風が一瞬止んだ。
校舎は見えないが、どこからか、紅葉の声がした。
「咲良ちゃーん! スミレー! どこにいるのー?」
出来る限りの大声で叫ぶ紅葉の声に、彼女の心が伝わってくる。
「スミレー!」
黒田と新見の声が聞こえた。
「俺が悪かったよ、スミレー。ご機嫌直してくれー。笑ってへんスミレなんて、こっちがどうしていいかわからん。困るんやでー」
新見が叫んでいる。
「スミレー。冷たいこと言ってゴメンなー。ノート貸してー。頭悪いの指摘されたみたいで、ちょっと悔しかったんや。素直に言えへんかった。ほんま、ありがとうー」
黒田が叫んでいる。
スミレは顔を上げた。
枯れた大木からぶら下がる男が、
「スミレ、聞くな。どうせ、また傷付くだけだ。今だけなんだ。あいつらはみんな、偽善者だ。おまえは孤独なんだよ…」
と、囁いた。
スミレは松ボックリの人形を足元に捨てた。
彼女は涙を拭いて、
「そんなことないよ…」
と、鬼に言い返した。
「行こう。スミレちゃん」
咲良が手を出した。
スミレは咲良と手を繋ぎ、校舎の方へ一歩踏み出した。
紅葉は木の向こうから突然現れた咲良とスミレを見た。
「どこにいたの? めっちゃ捜したよ」
紅葉が駆け寄った。
コマチと煌星もいた。先生も、新見と黒田もいた。
クラス全員が駆けつけた。
「スミレ、様子変やったよ。ストレス溜まってんのちゃうかー?」
黒田が心配そうに、スミレの顔を覗き込む。
「ゴメン。どう思われてるのか、気にし過ぎた。嫌われてるかと思った」
スミレは息と一緒に、思いを吐いた。
「普通や。悪いけど」
黒田が笑って答えた。
「スミレはとにかく、普通にしてたらええねん。自然体な。そしたら、黒ちゃんは全然ダメってこともないんやで」
新見が内緒で言った。




