伍玖 九尾の狐の肝
1
紅葉が鬼女に体を乗っ取られた。
咲良は紅葉の肘を取り、
「エイッ」
と、居合の稽古の通りに、背負い投げた。
咲良が紅葉に触れた時、青い電気が走った。
「痛っ」
心臓が跳ねるぐらいのショックがあった。
咲良は枕を投げ付けた。
コマチは断ちバサミで突っかかった。
「コマチちゃん、ハサミはちょっと…」
「ほな、どうするの!? 紅葉に喰われたいの? 紅葉が殺人犯になってしまうよ!」
コマチが涙目で言い返した。
「私だって、紅葉ちゃんを助けたいんだよ!」
咲良が初めて怒鳴った。
二人は仏間の真ん中で揉めた。
ゴボッ。
変な音がした。
咲良とコマチが紅葉を見た。
ゴボゴボッ。
紅葉が何か黒いものを吐き出した。
紅葉の両眼に特異点が生じ、細くきれいな指が出て、何か掴もうと蠢いた。
「うわ、紅葉…。何本手があるん?」
コマチはゾッとした。
紅葉の喉が膨らんできた。
獲物を飲み込んだばかりのヘビみたいに、パンパンに膨らんだ。
何かが紅葉の口から出ようとしている。
それは出産を連想させる。
けれど、出て来たのは、長い髪の塊だった。
紅葉は瞼を痙攣させ、もごもご言った。
「たふ…けて…」
紅葉は海老反りになっていく。
紅葉の口が裂けそうなぐらい開き、鬼女の崩れた頭蓋骨が、骨を軋ませながら出て来る。
歪んだ顔が外気に触れて、元の形に整い始め、玉藻の顔になっていく。
粘液でベトベトだ。
「う…はぁ、はぁ…」
玉藻が口を開き、外気を吸った。
蛇のように首まで滑り出し、首から下はまだ紅葉の中。
紅葉の両目から出てきた手は、肘まで出て宙を掻いた。
顔の上に顏、手は六本ある状態だ。
紅葉の顔は滅茶苦茶になって、深い皺が寄った。
紅葉自身の二本の腕は、だらんと下がった。
「紅葉ちゃん…」
咲良は悪夢のような光景に、呆然としていた。
玉藻は悪魔じみた声で喋った。
「終わりじゃ…。全てを枯らす…。そなたらの精気を吸い取ってやる…」
玉藻が深呼吸した。
痩せた頬がもっと窪んだ。
「咲良…。あの瘴気を吐かせたらあかん…。みんな、お陀仏や」
祖母トキが伝えた。
咲良は急いで、自分の鞄を開いた。
祖母に数日前にもらった紙袋から、青いゴム手袋が出た。
「これ、何に使うの? 洗濯のゴム手袋じゃないの? ガーデニング用?」
咲良は泣きそうになりながら、青いゴム手袋を嵌めた。
軽い電気ショックはこの手袋で防げた。
でも、途中で火花が散って手袋が破れ、小さな孔が開いた。
その瞬間、咲良の指の皮膚は、破れ目で火傷を負った。
咲良は玉藻の口を押さえた。
この手袋は魔法のアイテムのように、勝手に玉藻の口に吸い付く。
玉藻は四本の手を使って、咲良を剥がそうとした。
咲良は必死で、玉藻の口を塞ぎ続けた。
「ぐうぅ…」
玉藻が暴れ、畳の上を飛び跳ねた。
稲妻が閃き、玉藻の眷属が現れた。
眷属は白い炎を噴きながら吠え立て、咲良を威嚇した。
狐火が無数に浮かび、縦横に飛び回った。
「神様…、助けて…」
コマチは手を合わせて祈った。
「この…小娘が!」
遂に、玉藻が咲良を振り払った。
咲良は襖にぶつかって、隣りの座敷まで飛んだ。
2
玉藻は、紅葉という服を着た妖怪だ。
ベタベタの束になった髪を振り乱した。
コマチの肩に、玉藻の手が掛かる。
玉藻は長い舌を伸ばし、コマチの頬をペロッと舐めた。
コマチはぶるぶる震える手で、断ちバサミを握り締めた。
ギリギリまで、玉藻を突くチャンスを窺った。
「あともう少し…。こいつが私に噛み付いた瞬間に刺してやる…。紅葉に怪我はさせへん!」
コマチは心の中で思った。
玉藻が静かに毒の息を吐いた。
突然、コマチの頭が割れそうなほど痛くなった。
コマチの意識が半分飛んだ。
「その子をお放し下さい、お狐さん…!」
トキが経典で、玉藻の尻尾を叩いた。
「ギャイン…」
玉藻は犬のような悲鳴を漏らした。
「引っ込んでおれ!」
玉藻は老いたトキを蹴って、コマチの方に戻った。
咲良は隣りの座敷から駆け戻って、長い数珠を玉藻に掛けて、
「コマチちゃんを放せ! 紅葉ちゃんから離れろ!」
と、叫んだ。
数珠の糸がバラバラに切れた。
パーンと、水晶の珠が勢いよく飛び散った。
「もうあかん…」
コマチは頭痛に堪えきれなくなって、嘔吐した。
トキも失神した。
咲良だけが頭痛を感じない。
豆電球が切れた。
仏壇の花が萎れ、神棚の榊が枯れて茶色くなり、葉を落とした。
畳がささくれ立って変色し、障子と襖の紙が一斉に黄ばんだ。
仏壇の漆にヒビが入った。
縁側の床板が反り、檜の柱が茶色くなり、庭木が枯れ始めた。
眷属が暴れ、墓地の墓石が倒された。
コマチの肌が乾燥して、髪が白っぽくなっていく。精気が抜け始めた。
コマチは畳に倒れた。
畳にハサミを突き立て、何とか身を起こそうとした。
辺りの重力が増したように、身が重い。もう動けない。
「やめて、玉藻。やめて…」
咲良が玉藻の背中を叩いた。
手袋が焦げ、火花を散らした。
「紅葉、目を覚まして。あんたなら出来る。信じてる…」
コマチが口の中で呟いた。
彼女の眸から涙が一筋流れた。
咲良の腕や肩に、玉藻の眷属が噛み付いた。
咲良は痛みを堪え、岩のように動じない玉藻を引っ張った。
「紅葉ちゃんを助けたい…。怖くなんかない…」
咲良は玉藻の髪を掴み、綱引きみたいに引っ張った。
「若い娘の生き肝は、数百年ぶりじゃ。さぞかし美味かろう…」
玉藻は声を弾ませ、コマチの服を捲った。
「やめてー!」
咲良が玉藻の腕に噛み付いた。
玉藻の皮膚は、鋼のように硬かった。
咲良の唇の方が切れて、血が出た。
「…ない…」
誰かの声がした。
「誰じゃ?」
玉藻がきょろきょろ見回した。
声は玉藻の首の下、壊れた紅葉の顔面から出た。
「コ…マチの肝…、食べたくない…わ…」
紅葉の声がはっきり聞こえた。
「紅葉ちゃん!」
咲良は涙を拭った。
「例え死んでも…、食べてたまるか…」
紅葉が潰れた口から息を吐き、自分自身の手で何かを探した。
紅葉の手は断ちバサミに触れ、コマチから受け取った。
「よせ…。妾とそなたは一つ。今後、そなたの願いを何でも叶えてやろう。恋敵になり得る娘はみな殺してやる。そなたはずっと恋しい男を独占出来る。嫉妬に苦しむこともないぞ…?」
玉藻が自分の首から下の、紅葉に言った。
「…いらんわ。もしフラれたってええわ…。友達の方が大事やもん…」
紅葉がハサミを逆手に握り締め、左手を添えた。
「死ね、九尾の狐!」
紅葉が自分の喉にハサミを突き立てた。
3
閃光が玉藻の首を中心点にして、放射状に広がった。
九尾の狐の瘴気が消えた。
その時、縁側の外で、ポンッと三つの光が弾けた。
咲良達が見たこともない識神が出現した。
一人目は平安装束の男。
青い闕腋の袍に白袴、巻纓の冠、凛々しい緌。
彼は弓弦を鳴らし、矢を次々射かけて、玉藻の眷属に命中させた。
二人目は黒い狩衣の男。
袖を靡かせ、袖に綴られた紐の露先も華やかに、舞うように太刀を使った。
太刀は細身で長く、手元で深く反るタイプで、彼はバッタバッタと眷属を斬り捨てていった。
三人目は戦国時代の鎧兜の男。
角のような脇立で兜を飾り、赤く染めた緒の、いわゆる緋縅の鎧と、小花柄の籠手と臑当、どれも洒落込んでいる。
彼は太刀帯に佩いた太刀を抜き、眷属の群れへ突入していった。
一人目は矢を射終わり、玉藻に勇ましく斬り込んでいった。
他の二人も眷属を斬り殺し、玉藻に向かった。
玉藻は喉からハサミを引き抜いた。
傷口から血が滴った。
彼女は眷属がやられるのを見て、
「何故じゃ!? たかが識神のくせに…」
と、悔しがった。
玉藻は紅葉の体から抜け出した。
公園で、若い男の肝を喰らった時のように、完全に紅葉から分離した。
「遅くなった…。無事ですか!?」
旭の声が庭から聞こえた。
「紅葉ちゃん! 咲良ちゃん!」
旭と雲林院が駆けつけ、縁側から上がった。
「あ…旭さん…。遅過ぎですよっ!」
コマチが起き上がった。
彼女は元気そうに頬を膨らまし、口を尖らせた。
旭はコマチをちらっと見て、
「生きてたんですね。そりゃ、よかった」
と、ぶっきらぼうに言った。
旭は仏間まで踏み込んだ。
明治か大正の古い軍刀に手を掛け、
「祖父の祖父の遺品を借りて来ました。いつも、山上さんの刀を折っちゃうんで…」
錆びの付いたサーベル用飾りベルトから、するっと引き抜いた。
雲林院は食べかけのメロンパンを袋に戻し、
「雨音が俺のとこに、自分の識神を送って来た。咲良ちゃん達を守ってくれって。あの平安時代風が雨音の破軍、黒い着物が旭さんの武曲。鎧武者が俺の識神で、簾貞って言うの…」
と説明して、咲良の祖母を助け起こした。
咲良は紅葉に走り寄った。
紅葉の壊れた顏は元通りで、ハサミで突いた喉も、血一滴すら流れてない。
彼女は荒い息をして、衰弱しているだけ。
「よかったぁ…。本当によかったぁ…」
咲良は安心して、また泣けてきた。
「雨音くん達は?」
「山上の車で寝ておる」
破軍が答えた。
破軍の鋭い目は、海底の水のような冷たさがある。
「識神ごときが…」
玉藻は眼を吊り上げ、唇を震わせて怒った。
破軍、武曲、簾貞が玉藻を囲んでいる。
玉藻は雷を発生させ、攻撃を仕掛けた。
破軍は雷撃を避けた。
破軍が玉藻を引き付け、武曲がサイドから攻撃した。
よく見ると、簾貞はやたら駆け回っているが、玉藻と戦う気が余りない。
「紅葉、よう堪えたな…。破軍と武曲が来たぞ」
巨門が現れ、紅葉の側に膝を着いた。
「うん…、私は大丈夫…。私に隙があったの。でも、もう憑りつかせへん…」
紅葉は口の周りを拭いた。
玉藻を吐き出し、鬼の粘液でベトベトだった。
文曲と貪狼も戻り、これで識神は六人になった。
残る一人、禄存は山上と一緒にいる。
雲林院はおっとりと喋った。
「旭さん。めっちゃ綺麗な鬼なんですけど…」
「そうかな。本当の姿は皺くちゃババァだと思うよ。妖怪なんだし」
旭は冷静に分析した。
玉藻は自分の魅力が通じない相手にがっかりした。
彼女の美しさは、どんな男も虜にしてきた。
男達は死を招くと知りながら、食虫花に自ら落ちていく虫のように、玉藻に尽くして喰われた。
「仕方あるまい…」
玉藻が本性を現した。
三角形の狐の耳を立て、長い九尾を孔雀の尾羽のように背後に広げた。
4
咲良は紅葉と巨門に説明した。
「たぶん玉藻は、紅葉ちゃんに憑りついたことと、生血と肝を摂ったことで、実体化したんだよ。今も、紅葉ちゃんの精気を使い続けてる…」
「その通り。紅葉、おぬしはあやつとの接点を切れ。さすれば、あの鬼は干上がってゆく…」
巨門は得意げに髭を擦った。
「どうやって、接点を切るの?」
紅葉は体力が回復せず、布団の上に横たわっている。
「その点につきましては、お任せ下さい」
天井から二羽のカラスが舞い降り、天狗党の双子・ルイとレイになった。
「つまり、武蔵が記憶を失くしていた三年間とは、紅葉さんのように鬼女に利用されていたのでしょう。謎が解けました」
ルイが言った。
「夜が明けます。武蔵と静、しゅとーんの山上らも、間もなくこちらへ来るでしょう」
レイが言った。
ルイが紅葉の胸に右手を置き、左手を重ねた。
レイとルイが腕を交差し、レイは右掌を玉藻に向け、手の甲に左手を重ねた。
「累加と戻減…」
咲良は彼等の名を思い出した。
彼等は相手の力を増やすことと減らすことの能力を持つ。
玉藻がルイとレイに気付いた。
「小賢しい天狗童子…」
玉藻は戸隠山で会った小天狗を思い出したようであった。
「終わりました。鬼女の中の紅葉さんを、全て紅葉さんに戻しました。紅葉さんの中の鬼女を、鬼女に戻しました」
ルイとレイが手を放し、一礼した。
玉藻はクラクラと眩暈を感じた。
せっかく精気を得て若返ったのに、急速に力不足になっていった。
玉藻の足がふらついた。
男達の足音がした。
怒涛の波が寄せるように足音が響いて来て、先頭を雨音と蘇芳が駆けて来た。
「うおお…」
雨音と蘇芳は唸りながら斬り込み、玉藻を左右から袈裟斬りにした。
僅かなタイミングのずれで、雨音の鬼切と蘇芳の雷帝はぶつからなかった。
二人の剣は交差して、鏡に映したように反対側で止まった。
玉藻の首が前に落ちた。
目を剥き、床の上で瞬きした。
体は棒立ち、指先だけがピクピク動いていた。
雨音は鬼を消し去る為に、玉藻の額を踏み、
「許してくれ。おまえの怨念が早く消えることを祈るよ」
頭頂から鬼切を刺した。
切先が畳に玉藻の顎を縫い付け、止まった。
「ぎゃああぁ…!!」
玉藻は断末魔の叫び声を上げ、死の火焔に包まれた。
だが、玉藻が完全に消える前に、黒い翼が屋根から降り立った。
天狗党の首領、鬼一法眼だ。
「しゅとーんの巫女よ。九尾の狐の肝を抜く仕事を忘れておるぞ…」
鬼一法眼が長い髪を耳に掛け直し、瞬間移動して、玉藻の側に立った。
「首領…」
武蔵と静先生が続く言葉を失う。
鬼一法眼はみんなの前で、炎に包まれる玉藻の体に触れ、肝を抜いた。
「まだ温かい…」
鬼一は血塗れの肝を美味そうに、シャリシャリ音を立てて喰った。
「……」
雨音も山上も、咲良も紅葉も、あっと叫ぶ間もない出来事だった。
「何を不思議そうにしている? 千人もの人間の生き肝を喰った、九尾の狐の肝だぞ。不死の力の源としては、最高だ!」
鬼一が言った。
「まさか…、その肝の為に…」
武蔵は頭を振り、言葉を飲み込んだ。
微妙な空気が流れた。
鬼一と双子の天狗が去り、気まずい顏で武蔵と静先生も帰った。
台風が通過したかのようにぶっ壊れた、庫裏と墓地が残った。
蘇芳が男泣きして、
「紅葉…。よかった…。あんたは何回、俺を心配で殺しかけるん?」
と、紅葉を抱き締めた。
「咲良ちゃんは大丈夫?」
雨音が心配そうに尋ねた。
咲良は、
「鬼一さん、あんな肝食べて大丈夫なのかなぁー?」
と、小さく首を傾げた。
「俺もそう思う」
山上も後味悪い思いをしていた。
咲良は本堂の屋根を見上げた。
雷雲が遠のき、朝焼けの空が美しい。
反った屋根の上にマナブがいた。
鬼らしくない、カジュアルで現代的な装い。
その時は牙もなく、妖気も発してなかった。
「マナブ…」
咲良が呼びかけて、みんな彼に気付き、特に山上はギョッとした。
マナブは片方の目の闇を隠すこともせず、自然体で風に吹かれていた。
「咲良…。母上は死んだ?」
マナブが咲良に聞いた。
「学瀛ら三つ子を生んだ母親は、恐ろしい怨霊に憑りつかれてた…」
山上が小声で言った。
「中国から来た九尾の狐に? そっか。玉藻はどことなく、マナブと似てると思ってた…」
咲良は納得し、
「マナブ。マナブはどう思ってるの?」
と、屋根の上に聞き返した。
マナブは瓦の上を猫みたいに歩いた。
「どうかな。玉藻は死んだかもね。でも、母上はきっと生きてる…。八尾になっただけ…」
と、九本立てた指の一本を曲げた。
「八尾……?」
山上が唇を噛んだ。
「しゅとーん部、礼を言おうか。兄上達とはもう会えないけど、母上とは会えそうだ。あはは…」
マナブは嗤い出し、朝焼けの雲に向かって翔んだ。
彼は暁の明星と重なって光り、消えた。
「鬼一法眼、どうなるんですか?」
雨音が山上に質問した。
「恐らく…」
山上は顎をポリポリ掻いた。
5
奥鞍馬の大天狗の館。
板張りの広間で、鬼一法眼が激しく嘔吐していた。
「首領…」
柱の向こうで、ルイとレイが心配している。
「心配するな、単なる食あたりだ。九尾の狐め。狐は肝までバイ菌だらけと見える…」
鬼一は苦しみながら、強がりを言った。
火で焼いた石を飲み込んだみたいに、腹の中が熱い。
鬼一はまた吐いた。
吐くものがなくなり、血の混じった消化液が出た。
鬼一の肩が小刻みに震えた。
「そんな馬鹿な。…肝に喰われるなんて、聞いたこともない…」
鬼一は後悔しつつあった。
ルイとレイは武蔵を呼びに行った。
大天狗の館は静まり返り、建物全体が彼の胃袋と同様に痙攣していた。
「グェッ…」
鬼一が胃袋みたいなものを吐き出した。
いや、それは誰かの顔の皮膚だった。
徐々に風船みたいに膨らみ、鬼一の顔を覆っていく。
「息が出来ない…」
鬼一が仰向けに倒れた。
彼の口から噴き出るものが、彼の表面を覆っていく。
長い髪がベトベトした粘液とともに吐き出され、鬼一の頭を覆う。
女の乳房と白い肌が鬼一の着物を覆い、中に取り込んで溶かす。
鬼一はどんどん消化され、溶けていく。
最後に、尻尾が出てきた。
艶やかな金褐色の毛が生えた、2メートル超えの長い尻尾だった。
裸の女が起き上がり、唾と未消化のものを吐いた。
鬼一の歯が数個、地面に転がった。
鬼一法眼と、奥鞍馬の大天狗の館が消滅した。




