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第40話:庶子皇子、これからも裏ボス王女を守り抜くと誓う

 アデラード王女の襲撃を退けてしばらく。

 大魔境にはすっかり平穏が戻ってきた。

 無事だった家々に反して大地は攻撃の爪痕が深く、ここ最近は領地総出で復興の日々を送った。

 領民の頑張りもあって、もう完全に元通りだ。

 ハルト邸の縁側からは長閑な日常が見え、隣に座るシャルロッテが穏やかな微笑みで語る。


「みんなに怪我がなくてよかったわ」


 優しげな横顔には陽光が当たり、美しい金髪は黄金のように、赤い瞳は耀く。

〔クロニクル〕で見た世界を滅ぼす【堕天使】になるなんて信じられない。

 まさしく、他者を思いやる慈悲に溢れた聖女だった。


「俺も本当にそう思うよ。……ところでシャル、ちょっと話したいことがあるんだが」

「何かしら?」

「以前も話したように、ナタリーもカサンドラも似たタイミングで居場所を追われている。そして、追放の理由はどれも濡れ衣。これは偶然じゃない気がするんだ」

「……誰かが裏で糸を引いているってこと?」

「ああ、もし濡れ衣なら、俺はそれを晴らしたいよ」

「ということは、禁制品の扱いやカサンドラの内通、これを報告した人物が怪しいわね」


 真剣な表情に変わったシャルロッテの言葉に真摯な思いで頷く。

 

「彼女たちの追放だけじゃない。アデラード王女の襲撃……もしかしたら、これも誰かが焚き付けた可能性がある」


 もはや、〔クロニクル〕のシナリオから完全に逸脱したと考えて間違いない。

 あらゆる可能性を考え、備えておくべきだろう。

 俺の話を聞いたシャルロッテは静かに呟いた。


「もしそうなら、少しは浮かばれるのかもしれないわね。アデラード姉さんが本当に私を嫌っていたわけじゃないのなら……」


 彼女の目からは、アデラード王女に対する慈悲の心が滲む。

 シャルロッテを傷つけてはしまったが、もし和解の瞬間が訪れるのならその日が来るのを祈りたい。

 俺はなおも黙り込む彼女の手をそっと握った。


「何があろうと、俺はシャルも領民も絶対に守るよ。だから、安心して暮らしてほしい」

「……ありがとう、ハル。あなたの隣が一番安心できるわ」


 シャルロッテは俺の手をそっと握り返す。

 手を握ったまま外に出ると、領民たちが明るい声を上げた。


「ハルトさん、シャルロッテさん、また新しい作物が出てきましたよ!」

「一緒に収穫を手伝ってくれんかのー!」


 会うことがとても珍しいレアキャラ"彷徨の薬師"であるリリスとズゥーイさん。

 

「ハルト殿、また新しい商売を思いついたよ! ともに考えてくれたまえ!」


 俺とシャルロッテと一緒に始めた“トライシャイン商会”を、今や帝国と王国でも有名な商会に育てつつある、行商人のナタリー。


「ハルト氏! 今日の訓練はまだか!? 早く貴殿と戦いたくて待ちきれないぞ!」


 【魔導騎士】が【剣聖】に進化してあらゆる敵を倒してくれる当代一の女騎士、カサンドラ。


 みんな、日々領地の発展に尽力してくれていた。

 戦争中の二大強国に挟まれた平和な世界。

 ここでは何物にも代えがたい尊い時間が流れている。

 右手に感じる温かさも大切な存在だ。


「これからも一緒に楽しく暮らしていきましょうね。……私の大切な旦那様」

「……ああ、そうだな。俺の大事な奥様」


 俺とシャルロッテは領民たちの元に向かう。

 互いの手を強く握りながら――

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