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竜人の住処と悪しき精霊の契約者。

竜人が棲む山岳地帯とやらに来た。険しい山々をラゴーに乗り、飛び抜けたものの距離があるので途中で何度となく羽休めをした。だが、オークや低知能なドラゴンが潜んでおり、地中からウジャウジャと涌いて飛び掛かるようにこちらを目掛けて襲いかかって来るものだから、移動の要である白竜(ラゴー)を守って人間二人は地上では常に警戒モードだった。


空気も薄く、魔力を体内で循環させ、環境の悪さを補っている。街道も今や植物に埋もれ消えて、人足もないので助けも無い。


険しい道を前に進めば、魔力の枯渇からかジリジリと内部が磨り減るような感覚に常に襲われ、結構精神的にしんどい。まだ数日この状態が続くなら投身自………………生きて山から出られるか自信が無いや。ソラタはピンピンしている。貧乏貴族の坊っちゃんは生命力強いな。


やがて山脈に埋るようにして存在する遺跡を見付けて、アースノアは本気で泣けそうだった。



「ウル」


ソラタが手を上げて、遺跡の入口の柱脇に立っていた男性を呼んだ。ウルと呼ばれた男性は精霊の里で見掛けたのと同人物だとアースノアは照らし合わせて、唐突に襲って来ないか懸念を抱く。鉛色の髪色をした竜人は確かにアースノアの存在を認めてから、白髪の少年と話し始めた。表情は終止厳めしい様子だった。ソラタは笑顔なのに表情がピクリともしない。


『…』


流石に武器に手は掛けないが、何故黒の道化師が敵視しているのかの理由次第では穏やかではない話になりそうだ。


近寄るには決心がいるので相手から近寄って来るかどうかを狙い、遠巻きにしている。どちらにせよ、ラゴーの背から旅荷を下ろし、重圧から解放する役割が残っている。……ラゴーは速く石階段を駆け上がり、二人の会話に加わりたいのだろう(喋れないけど)。そわそわしている。


『お疲れ様。長い距離だったから疲れちゃったね』


ベルトを外す度、パチンと金具の外れる音がして、草むらの上にテント等の荷物が落ちた。


不意に頭上から影が被る。雲が日を隠したかな、と思いつつ作業を続けていたら、低い男の声が背後から投げられた。


「ここでは魔物も出る。荷を下ろすなら中に入ってからにしてはどうだ」


『!』


咄嗟にバッと振り向いて、言われた内容を理解して首振り人形のようにコクコクと頷く。ガチガチの動作だと自分でも理解していた。気配があるんだか無いんだか分からない。


成人は疾うにしているだろう。高い背丈のまるで大樹を思わせる外見でかなり大柄だが、何処か野生の獣を思わせる屈強さと整った外見が目に付く。


やれやれ、といった様子で白いドラゴンがほどいた荷物の一部をくわえて遺跡への階段を登った。白髪の少年の姿も無く、第三王女は完全にこの遺跡入口に竜人と取り残されていた。


とにかく、何か言わなくてはとアースノアは口を開いた。しかし内容が浮かばず、ぐっと歯を噛み締めた。書庫で読んだ文献を記憶上から乱雑に漁り、竜人が精霊より長寿で、魔力に富んだ生物である事を思い出す。どうしよう精霊の自尊心はかなり強い。


『は!


お気遣い感謝致します。恐れながら、心苦しくも御身の住居に足を踏み入れますことをお許し頂きたく願い奉ります。又、不遜ながら……未だ若輩の身。礼儀知らずと怒りを抱かれるかも知れませんが、精進致しますのでどうぞ寛大なお心で以て、ご容赦下さいますようお願い申し上げます』


「……。急に矢などを放ってこなければ、特に何かをするつもりはない。」


挨拶をした狩人は見るからに緊張しており、警戒からか竜人を見上げる表情は苦い物を呑むようにかなり硬かった。対する竜人は見下ろした相手を時代錯誤だと内心称しながらも、取り敢えずその言葉に対する返答だけ淡々と述べた。かつて国が乱れ、竜人を頼りすがった者達がこの娘のような口調だったか、と。数百年以上昔の話だが。


『話を聞きに来ただけなので矢は放ちません』


咄嗟に冷静に突っ込みを入れた狩人だったが、ならば「精霊術か」と竜人から淡々と返された事で息を飲んだ。敵意は無くても語弊があれば竜人的には(?)話は別らしい。一言一句間違えてはいけない種族ですかと狩人の脳裏に爆弾を抱えるイメージが浮かぶ。


アースノアには冷えた水をコップに入れて走って来た白髪少年が天使に見えた。







コップの水を一気飲みした狩人は、「ごちそうさま」と一言述べて、そのまま少年の胸倉を掴むとその口も軽く飲んで旅荷を担ぐと、目を見張る少年をそのままに遺跡内へ走り去った。


少年は悶えながら竜人の恥じらいの無い突っ込みに耐えるしかなかった。

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