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明けて綺羅星

ご機嫌よう皆様、閲覧感謝します!

二番目のお兄様は本当を知っていた。

言わないけど王様は初めから知っている。

次の王様だから一番目のお兄様は知っている。

二人のお姉様は知らないかも知れない。でも何かに気付いていた。

お母様は心が弱いから知らされていない。

精霊は全てを知っている。でも言わない。


どうして?


簡単だ。


全て変わりようの無い事実だからでしょう。





夕暮れ時に目が覚めて、頭の怠さに額を抑える。


フードが取り払われた視界に己の髪が映って、白いシーツの上に散らばる黒が少年の白髪に絡む。


「今日くらいゆっくりしようか」


返事の代わりに肩口に顔を埋めて、抱き締める力を強くする。少年のエメラルドグリーンは見えないが、耳元から聴こえる声音の心地好さに破れた心が縫い直された気がして、ジクジクと胸が痛い。


『ごめんなさい』

「いいんだ」


夜明け前、錯乱して多分彼を彼とも理解せず、私は「帰りたくない」「一生あそこから出られないなんて嫌」と口走っていた。だからソラタは何も尋ねて来ない。それどころか抱き枕と化して、時折困ったように眉を下げている。


柔らかい白い髪をしたまだ幼さの残る少年にすがりつく自分はさぞ情けない姿を晒していると自覚していた。だが真実、一期一会。

出身国、生い立ち、家族構成。何一つとして私がソラタに関して深く知る物はなく、もし明日にでも進む道を違えてしまえば、広大な世界で二度と出会えないかも知れない。会いたいと思っても二度と顔も見れないかも知れない。目の前にあった物がもう手に届かなくなる絶望は知っていた。


「スゥ……僕がスゥを護るから、---だから……」


サラサラと髪越しに頭を撫でられ、肩をやんわりと離され、互いの顔を確認し合った。


白い睫毛に縁取られた緑瞳。切なげに寄せられた眉に絹糸のような柔毛が。かかり、シャープな輪郭の下からしなやかな首が覗き見える。……


……


……


何かを前にした時のように心音が乱れた。


ドキドキ。バクバク。


濡れた瞳。薄く開いた形好い唇が隠し切れない情欲を滲ませ、息を呑む。造形だけでなく魂までも美しい。


手を出したら道を踏み違えてしまうスリル満点のあれだ。確かにソラタは手を出したらレッドカードな存在ではあるが、清く美しくそして悲しい関係なので未だセーフです。


私は、私は中に芽吹いた新たらしくも身近な感覚に少し冷静さを取り戻した。このままでは、このままではいけない!


『ソラタ。宿を出よう。天気は悪くないし、今夜は野宿でいいや』

「はあ!?」


少年にはぁはぁしてクンカクンカしているだけでは何も変わらないどころか事態は悪化してしまう。との狩人の思いは伝わる訳もなく。


少年から見れば、泣いて落ち込んだ相手を慰めてみれば、顔を赤くした後、唐突に真っ青になり肩を震わせ、意気込み始めた。


……あれ?僕結構大切なこと言おうとしてたのに。


白い竜の背を跨がる頃には、見事に不機嫌になった少年の様子に狩人は焦るも、暫く最低限しか口を聞いてもらえなかったとか。……まぁ騎乗しているのをいい事に彼の腰を抱き締める手は緩めなかったので狩人は少年にベタベタしていた。


魔導器の気配を知る竜人に会いに、天高く聳える山の頂にある太古の遺跡を目指す二人の背を、一つの影が追う。


高度が高くなるにつれ、飛行型の魔物の声も山脈に轟き、緊張を抱く。じっとりと汗を握りながら注意深く周囲を注視する。



夜も深まり、枝を焚き火に投げ込みながら、竜人に会う前にアースノアは情報を整理する事にした。


他ならぬ兄により王家での第三王女の役割はずっと城に幽閉されている事だと告げられた。国内から出てはいけないとの国王。多分悪しき精霊が理由だが詳しくは不明。


ずっと不思議に思っていた。国内の王公貴族はある年齢に近付くと、王都を離れて魔法の素養を測り、訓練も王都から離れた場所で行う。兄姉が訓練を受ける中、私は城にいた。悪しき精霊の事を周囲に知られてはならないと思い込んでいた。だが、これが曲解だったとしたら王家がそれらしい理由を付けて第三王女を隠匿したかったのが一番手短な理由として疑わしい。悪しき精霊は人の目を剃らす虚像。


魔法を使えば代償は精神の疲れとして帰って来る。だが、悪しき精霊に魔法を頼むとアースノアは一切疲れを感じなかった。契約者と精霊が死で繋がっているとの言。だが魔力の繋がりはない。これは可笑しい。では契約とは一体、何により何の為にあるのか?


『……答えないのね』


黒の道化師。


人外はうっとりと狂気の表情を浮かべると樹木の幹に座ったまま、愉快そうに笑みを作っている。闇の中光る紫。声を上げて笑わない為か、仮面のように見えた。





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