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1話 ついにダンジョンがやってきた!!!!!!

 【一時間後、地球上にダンジョンを生成します】


 この無機質なアナウンスは世界中の人間に届いた。そこから1分と経たずにSNSでは「#ダンジョン出現」がトレンド入り、少しでも「ダンジョン物」のなろう作品をしっている人は「うおおおおお!!ダンジョン攻略!配信!」「きたあああああ!!」「おれ会社辞める!!冒険者になる!」「探索者におれはなる!!」などと狂喜乱舞している様子がうかがえる。


「来た! きたきたきたきたきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 藤原雅人はこのアナウンスを聞いた瞬間に絶叫した。拳を天へ突き上げ、一目散にSNSとテレビをチェックする。


「なんだ雅人。そんな慌ててどうした。」


「危ないでしょ。落ち着いてちょうだい。」


「父さん母さん聞こえてたでしょ!ダンジョンが生成されますって。やっと来るんだよ!やっと!」


「なんか知らんがお前がめちゃくちゃ喜んでるのは分かったよ。」

 

 雅人はテレビとSNSを交互に居ながら興奮を抑えられずにいる。あまりの興奮具合に雅人の父は若干引いているようだ。


「そりゃあ聞こえたけどそんなのあるわけないだろ。」


「そうよ。ただの聞き間違いよ。」


 雅人の両親は雅人を抑えようとするが今の雅人にそんな言葉は一ミリも届かない。


「塔型!俺の時代だ! 俺の禁書目録(アカシックレコード)が火を噴く時が来たぜぇぇぇぇ!!」


 テレビやSNSで検索した結果世界同時多発的に「塔」が出現している。両親がフェイクにしてはできすぎていると唖然としているなか、雅人は携帯を放り投げて急いで階段を駆け上がる。取り出したのは非常に大きなバックと2冊の分厚い本。この本はすべて雅人の手書きであり、『ダンジョン攻略本』『モンスター生態』と表紙に書かれている。


 本棚には他にも『異世界侵略時行動マニュアル』、『世界崩壊後のサバイバル生活』、『侵略生物攻略本(上)』などと書かれたものが置いてある。その数、合計で三十四冊。総ページ数は1万ページを超える。


 普通の人間なら黒歴史として封印する代物だが雅人は本気も本気、本当に本気にダンジョンが現れると今日まで信じて疑わなかった。


 小学生の頃から「もし現実世界にダンジョンが出現したら」を考え続け、剣術を中心に武術やサバイバル術、ダンジョン攻略本の制作の努力を惜しまなかった。


 全ては今日、この日のため。


「落ち着け、俺……まずは状況確認だ」


 窓を開けると、遠くの山々の向こうに巨大な半透明の塔がそびえ立っていた。見える範囲で数十か所あることを見るに現れるダンジョンの数はすさまじいことになりそうだ。


 まるで空を貫く槍のような巨塔。その姿を見た瞬間、雅人の脳内で無数のシミュレーションが走る。


「アナウンスの存在から間違いなく未知の存在がいることは確定。ダンジョンなのに全部が塔であるのはおかしい。」


 ダンジョンは想定では塔型、島型、地面型、現代建造物乗っ取り型など様々な種類があるはず。それなのに塔型しか出現しないということは間違いなくこのアナウンスの主が何らかの脅威を塔という形で出現させたに違いない。


 プランA。魔物出現型。

 プランB。異世界侵略型。

 プランC。塔攻略型。

 プランD。神様ゲーム型。

 以下略。


「これはプランBをメインにしたプランCの攻略方法が最適だな。正直プランA推しだったんだけどこれもいい!」


 一通りの内容を復習して壁に飾っている物を手に取る。手に取ったのは一振りの日本刀。駄々をこね、恥を捨てた見事なローリング寝っ転がりを披露した末に合法的に取得したものだ。


「禁書目録大全版第2章78頁。ダンジョン出現時、警察や行政の規制が入る前に行動を開始せよ」


 完璧だ。まさにこの状況のために書いたページだった。


「よし」


 雅人はリュックを背負う。中には少しの食料と水、火をつける道具に禁書目録大全版を持ち運びやすくした禁書目録。あとは迷彩服に着替え、即座に玄関へと向かっていく。


「俺はスタートダッシュを決めるぜ!あばよ世界!」


 そして満面の笑みで玄関へ向かった。


「行ってきます!」


 両親の呼ぶ声など耳に入ることなく、30kgはあるリュックを背負いながら遠足前日の小学生みたいな顔で走り出した。


 ダンジョン出現まで、残り27分。



 *****


 

「ダンジョン出現まであと9分21秒。警察や他の人間の気配なし。予定通り!」


 時間の限り調査を行うために塔の周囲を一周する。もちろんできる限り足音を消して慎重に。

 確認したところで入り口は一か所。塔の内部は確認できない。遠くから見て分かった通りだが高さは雲を軽く突き抜けるほど高い。ただ、直径に関しては想定より小さく大体100メートル程度しかなかった。


「ふむ。これはダンジョン内と現実の塔で差があるタイプAだな。いやでも中継映像で見たときの塔はこんな程度じゃなかったはず。もしや難易度で大きさが変わるタイプBか?いや全部が1つの塔につながってるタイプCもあり得るな。」


 そんなこんな考えていると塔の状態に変化が表れ始めた。まるで光の柱のように夜を明るく照らし、次第に雅人を飲み込んでいった。


 「禁書目録。ダンジョンをクリアする十の盟約、第一条――絶対に慌てない。サングラスを装着。」


 荷物は体に固定して絶対離れないようにする。サングラスをかけているおかげで塔の存在は確認できる。我ながら素晴らしい準備だ。


「3……」


 塔の光が弱まっていくのを感じる。


「2……」


 地面が震え、塔の実体化が始まる。


「1……」


 ついに塔が完全に姿を現す。

 

「レッツゴー!ふぅぅぅぅうううう!いやっはぁぁぁぁぁぁぁあああ!」


 脳は冷静。たとえどんなに待ったとしても入る前に最終確認は忘れない。


「人の気配、ダンジョンの気配なし!遠隔の録音機から悲鳴とかは聞こえてない!つまりモンスター現実世界に出てない!安全確認完了!レッツゴーーーーーーーーーーーーーー!!」


 雅人は入口の扉に触れる。そして、塔の内部へ足を踏み入れた瞬間、想像通り外から見た景色と全く違う、長く伸びる薄暗い通路に立っていた。


「ダンジョンをクリアする十の盟約、第二条――絶対に油断しない。」

 

 既に不要となった装備は一部を残して全てその場に捨て置く。まずは周囲の安全を確認するために日本刀を構えて周囲の探索を行う。


「……え?こ、こいつは……」


 300メートルほど歩いた先で分かれ道を発見し右を観察したところ、今まで見たことはないはずなのになぜか見覚えのある存在が姿を現した。


「グル……?」


 緑色の皮膚。黄色い目。醜悪な見た目に汚い布切れ。そして手には粗末な棍棒。


 禁書目録第一巻五十三ページ。


 そこに描いた想像上の魔物と全く同じ姿。


「本物のゴブリンだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


「グル!?」

藤原雅人:本作の主人公。現実世界にダンジョンが出現することを本気で信じていた男。十年以上にわたり対策ノートや行動計画を作成し、剣術・サバイバル技術などを独学で学んでる頭おかしいやつ。


禁書目録アカシックレコード:雅人が十年以上かけて作り続けたノート群の総称。ダンジョン攻略法、モンスター生態、異世界侵略時の行動指針などがまとめられている。

総冊数34冊。総ページ数1万ページ超。全部手書き



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