44話 追い詰めるために②
琉生の案が採用され、俺たちは更に作戦を考えていく。
琉生は自分の意見が採用された事が嬉しいのか、上機嫌になって『ふふん』と笑っていた。素直に喜んでいるの、何か可愛いな。
「やっぱね、俺も頭は使えるんですよ。なぁ拓海?」
「いつもはふざけてばかりだけどな。この前の体育祭の時だって……」
「わーストップストップ!」
俺が体育祭の事を話題に出すと、琉生は上機嫌だった様子から急に変わって焦り出し、俺の口を塞ごうとしてくる。
琉生と松家さんは新聞部なわけだが……松家さん曰く、琉生はふざける事が多いらしい。
確か体育祭でも……仕事を多少はしていたものの、半分ぐらいはふざけて写真を撮ってたりしてたな。
俺も進藤さんと二人三脚に出場していた時とかに激写されたわけだし。
「その体育祭の話題、是非聞きたいですね。拓海君、琉生君が何かしてたんですか?」
「いやーそんな大事じゃないんだけどね? 松家さんが前に言っていたように、琉生が結構ふざけてたなぁって」
「へぇ。それは良い事を聞きました。玉島先輩の件が終わったら、二人でゆっくりと話しましょうね」
「ま、待ってくれ玲奈! ちゃ、ちゃんと謝るから! ふざけて撮った写真とか消したから!」
よし、松家さんにチクり完了。いつかこれも松家さんに言おうと思ってたんだよな。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
「それで拓海君。話を戻すんですが、明日の親睦会に私も参加していいですか?」
「松家さんが? それはありがたいけど……大丈夫?」
「大丈夫ですよ。私は色々と攻撃できますし、拓海君たちの力になりたいので」
いや、攻撃って何? 何でそんな戦闘意欲に溢れてるの? 戦闘民族なの?
松家さん、こういう時は何か物騒なんだよな……。
ただ松家さんが参加してくれるのは非常に大きい。松家さんなら頭も良いし、色々とサポートもしてくれそうだ。
「拓海君もそんなに心配しなくて大丈夫ですよ。琉生君たちもいるわけですし、自分の身は自分である程度守りますから。それに……私も色々と危機感を覚えていますので」
「うん? どういう事?」
「この話は、拓海君とかには関係ないので大丈夫です。あくまで私個人の話なので」
「は、はぁ。よく分からないけど、よく分かった」
松家さんが何について話しているかはよく分からなかったが、とりあえずは支障がなさそうなのでスルーする事に。
親睦会については、俺、岩田先輩、進藤さん、松家さんが参加し、最後に玉島先輩がやってきて音野先輩に気持ちをぶつける。
そして琉生や誠一は万が一の時に備えて身を潜めておく、って感じか。
「拓海先輩! 私も親睦会に参加しますよ!」
松家さんに続く流れで、今度は晴菜が声を上げる。
「すまん。晴菜の気持ちは嬉しいんだけど、音野先輩から色々と注文を受けていてな。俺や進藤さんたちの他には、一人の女子しか連れていけない事になっているんだ。だから、もう松家さんで枠が埋まっちゃったんだよ」
「えぇえー! でもしょうがないですね! 今後は松家さんより魅力がある女性になれるよう、頑張っていきたいと思います!」
「お、おう。音野先輩からメッセージが来ただけだから、別に気にしなくていいぞ?」
別に女性の魅力対決とかはしてないからね?
ただ単に、音野先輩の指示に従うような形を取ってるだけだからね?
「親睦会に出れないという事でしたら、私と彩夏は裏方に回ります! 彩夏もそっちの方がいいよね?」
「う、うん」
「二人ともありがとう。じゃあ、二人には当日のまとめ役をお願いしようかな。当日はグループで連絡を適時取り合いながらやっていこうと思っているから、その情報をまとめながら指示が出せる時には指示を出して欲しい。俯瞰的に見る事で、何か気づくこともあるだろうと思うから」
「はい! 私たちに任せてください!」
晴菜と彩夏ちゃんの後輩二人には、裏方に回ってもらう事に。
当日は何が起こるか分からないので、二人には状況を冷静に見てもらいながら、臨機応変に対応してもらおう。
万が一の事があったとしても、二人が裏方でいる事で助かる可能性もあるしな。
「それで水城君。私は何をすればいいかね?」
次は孝蔵さんが俺に問いかけてくる。
琉生と誠一、松家さん、そして後輩ズときて……最後は孝蔵さんの番。
孝蔵さんは俺らと違って立派な大人だ。それに力もある。
孝蔵さんの力を借りる事ができれば……俺たちの勝ちは更に近づくだろう。
「図々しくて本当に申し訳ありません。孝蔵さんの力を最大限に借りたいんです」
「真紀からおおよその話は聞いている。水城君や今回の中心人物である玉島さんには色々と助けられた事だし、何でも言ってくれ。できる限り協力する」
「本当にありがとうございます。この場所で作戦を決行させていただくわけですが……音野先輩が悪人だという強力な証拠を、こっちで手に入れておきたいんです。おそらくですが、今回は相手もかなり動いてくると思っているので、ボイスレコーダーとかを多く忍ばせておきたいな、と」
「分かった。時間もない事だし、今日の夜にはボイスレコーダーを準備しておこう。会社で活用しているものもあるしな」
音野先輩が今後も関わってこないよう、一つは強力な証拠を持っておきたい。今の証拠はまだ結構弱いからね。
そして音野先輩を倒すためには、気持ちをぶつけるだけではダメだ。音野先輩がもう反抗できないように、音野先輩の心を折って謝罪させる必要がある。
そこで俺が思いついたのが、ボイスレコーダーだった。少し古典的ではあるが、今はバレないような小型のものも開発されているし、文字や証言よりも証拠の力が強い。
「それと隠しカメラも数台になるが、設置しておこうか。カメラは少しになるが許してくれ」
「ありがとうございます。カメラはボイスレコーダーよりも準備が難しいと思っていたので……助かります!」
「水城君たちには借りがあるし、娘の真紀に何かあってもいけないからな。しっかりと対策はしておこう。他には何かあるか?」
「ではあと少し。ダメ元でお願いするんですが、明後日に協力してくれる大人の方っていたりしますか? できれば屈強な方で……」
「分かった。私の知り合いを含め、色々と聞いてみよう。水城君の狙いはもちろん……」
「ご想像の通りです。裏方の晴菜や彩夏ちゃんと共に待機していただいて、相手側が実力行使になった時にサポートしていただければと」
孝蔵さんが全面的に協力してくれる事もあって、話はどんどんと進んでいく。
成功者の力って、やっぱりすげぇな。
「そして孝蔵さんは何も知らないような感じで、俺たちの親睦会の方に来ていただければ……」
「私は行っても大丈夫なのかい?」
「孝蔵さんの場合は大丈夫です。俺らとは違うところにカテゴライズされると思うので。空気を読めないような感じで、音野先輩やその仲間の邪魔をしていただければ」
「分かった。私で良ければ、いくらでも力になろう」
「ありがとうございます。じゃあここで、音野先輩の仲間についても話しておきましょうか。倉島! 尾行の結果についてよろしく頼む!」
「へいへい」
昨日の敵は今日の友、ってな。
そして話はどんどんと進んでいく——




