43話 追い詰めるために①
音野先輩との話が終わった後、俺は協力してくれた岩田先輩と倉島と共に、進藤さんの家にお邪魔していた。
俺たちが進藤さんの家の中に入ると、進藤さんや孝蔵さんはもちろんの事、琉生や誠一、松家さんに晴菜と彩夏ちゃんという……多くの仲間が既に集まっていた。
茜は野球部の練習試合があるらしく、参加できない事を非常に悔しがっていていたが、せめてもの思いという事で俺たちの事を全力応援してくれるらしい。
茜からは激励のメッセージが多く届いている事だし、この辺で返信しておくか。
『拓海は出来る男! だから絶対大丈夫! ファイト!』
「ありがとな。頑張るわ」
『おぉおお! タイミングよく兄貴からの返信が来た! これさ、もう宇宙規模で繋がっちゃってるよね。テレパシーできるようになっちゃったよね!?』
「何でこんな時に特殊能力の才能が開花するんだよ。今は大丈夫なのか?」
『もうすぐで次の試合が始まる! なのでここらでドロンさせていただきます!」
「おう。茜も頑張ってな」
茜はメッセージ上でも茜だ。キャラが全く変わらねぇ。
まぁこうして茜も応援してくれているわけだし、俺も気合を入れて頑張ろう。
「え~皆様。今日は集まっていただき、本当にありがとうございます。音野先輩を懲らしめる為、今日のこの場で作戦を最終決定したいと思います。では、玉島先輩から簡単な説明を改めて」
まずは俺が皆に感謝の言葉を述べつつ、玉島先輩が話しやすい雰囲気を作る。
俺の言葉を受けた玉島先輩は意を決したような面持ちに変わり、自分の事について改めて話し始めた。
「私の為に今日は集まってくれてありがとう。詳しい事を知らない人もいると思うから、私の口からちゃんと説明しておくね。私は……去年の生徒会長だった音野先輩と、私が大学生になった時に恋人関係になるっていう約束をしていたの。音野先輩と同じ大学に入って、楽しいキャンパスライフを過ごす! と思ってたところで、浮気をしていたのが発覚したってわけです……」
「それに加えて、音野先輩は想像以上の極悪人だった。高校時代からこういった事はしているような感じだったし、俺の存在に気付いて脅迫もしてきた。今までは相手を反抗できなくなるぐらいまで潰す事で、バレないようにしてきたらしい」
「そ、そうだったの!? ごめん……。たっくんに怖い思いをさせちゃったね」
「大丈夫ですよ。今はこっちが有利ですし、勝てる状況にいると思います。勝つことさえできれば、全て丸く収まるわけですしね」
玉島先輩の説明に俺が今日の事を付け加えて補足すると、ざわざわとこの場が少し騒がしくなる。
また、玉島先輩も音野先輩の本質には気づいていなかったようだ。
音野先輩はバレないよう慎重に事を進めながらも、いざとなったら実力行使で来るのが厄介なんだよなぁ。
音野先輩は自分の友達を呼ぶって言っていたわけだし、今回も用意周到って事だな。
そんな風に音野先輩の事について話していると、ポケットに入れていたスマホがブルブルと振動する。
また茜からか? と思って画面を見ると、『音野先輩』という文字が見えた。どうやら、音野先輩からメッセージが何件か来たらしい。
いや女の子からのメッセージかと思ったら、極悪人からのメッセージやないかい! もう詐欺やないかい!
俺は音野先輩と直接会った事もあって、音野先輩とメッセ―ジアプリの方のアカウントも交換したからな……。
ちなみにだが、進藤さんについては音野先輩にSNSの捨て垢しか教えていないし、メッセージの欄も解放していないので、どうか皆様安心してください。進藤さんは安全です。
音野先輩は俺を通して進藤さんの情報を探ろうとしてきたんだよな。
ただ俺は万が一の事があった時のために、進藤さんの本垢みたいな偽の捨て垢も別で作っていた。連絡用の垢はこの垢ですよ、みたいな感じでな。
何個もアカウントが作れるの、非常に助かってます。
俺はその作ったアカウントで進藤さんのフリをしながら、『親睦会でのお楽しみ』などと言って、音野先輩からのメッセージをのらりくらりとかわした。
ギャルゲーをやったりラブコメをたくさん読んだ俺にとって、こういうのは得意分野。
異性ならともかく、同性に刺さる言葉や仕草ぐらいは俺も分かるしね。
それはまぁともかくとして……音野先輩は俺に何の用なんだ?
『やぁやぁ水城君。実は明後日の親睦会について、いくつかお願いがあってね。今から順にお願いを送っていくよ』
『まず、水城君側の人は極力少なくする事。友達とかを連れてくる予定だったみたいだけど、それはダメだから。あっ、俺の友達はいっぱい連れて行くけどね?』
『そして俺の指示に絶対従う事。できれば、水城君と仲が良い女の子と俺の二人だけにさせてもらえるとありがたいね』
『そして最後は……俺に反抗しない事。反抗したら、どうなるか分かってるよね?』
俺が音野先輩に従うと言ったら、エゲツないメッセージが早速来たな。
特に俺たちの友達を呼べなくなったのは痛い。少し悪あがきしてみるか。
「お疲れ様です。水城です。もちろん音野先輩には従いますが、最初の条件はもう少し緩和させた方が良いのではないでしょうか?」
『ふーん。何で?』
「一応は岩田先輩も親睦会の場にいるわけですし、俺たちの友達が誰一人もいないと違和感を持たれるかなと思いまして。それに音野先輩が気になっている子も、友達と参加する事を楽しみにしているので……」
『なーるほどね。それじゃあ……仕方ない。君たちの友達で女の子であるなら、一人までは許してあげよう。男でもいいけど、万が一の事もあったらいけないしね?』
「了解です。上手く伝えておきます」
『頼んだよ。明日、楽しみにしてるね?』
少しだけ譲歩はしてもらったものの、一人だけとなるとかなり難しい。
これは当初の作戦を少し変えて、岩田先輩に頑張ってもらうしかないか。
俺たち側の人数が少なくなるという事は危険性も高まってしまうわけで……。
人数が少なくなった分、俺や岩田先輩がカバーしなければ、玉島先輩が音野先輩に気持ちをぶつける以前に進藤さんの身が危ない。
俺は音野先輩に監視されているような状態なため、ある程度動けるのは岩田先輩ただ一人だからなぁ。これは、岩田先輩にたくさん働いてもらうしかない。
「今、音野先輩から何件かのメッセージが来ました。それに今日はまた色々とあったんですが……話の流れを見て追々話していく感じでいきたいと思います。じゃあ、当日の流れについて決めていきましょう」
俺、岩田先輩、進藤さん、玉島先輩は大きく関わっているが、他の皆はまだあまり関わってはいない。
何か良い方法があるといいのだが……。
「なぁ拓海。普通に俺とかが隠れておけばいいんじゃねぇか?」
「琉生、普通に隠れておくってどういう事だ?」
「いやさ、進藤さんの家ってこんなに広いわけじゃん。玲奈や彩夏ちゃんとかはともかくとして、俺や誠一が隠れておいて……いざとなった時に出てくれば、あっちも驚くだろ?」
少し重い空気も流れていた中、琉生が自分の考えを伝えるために口を開いた。
琉生の元々のキャラもあってか、何を言っているんだ……? みたいな空気が最初に流れたものの、徐々に皆の考えが改まっていく。
あれ? これってめちゃくちゃ良い案なのでは? と、皆が思い始めたのだ。
「……ありですね。女の子の家を捜索する事は簡単にできないでしょうし、琉生君が久しぶりに役に立ちました」
「松家さんの言う通りだね。まさか、琉生がこんなにも良い事を言うなんて。まぁ琉生はいいとしても、僕が力になれるかは疑問だけど……」
「玲奈も誠一もひどいなおい!? た、拓海だけは俺の仲間だよな!?」
「いざとなったら琉生が飛び出して、誠一はその後ろについていけばいいよ。琉生ならどうにかなるだろうし」
「た、拓海ぃ~! お、お前まで俺の敵なのかよぉ」
「バカ。お前を一番信頼しているからだよ。琉生ならどうにかしてくれる、って俺も思っちゃうから」
琉生は圧倒的な主人公属性も持っている事から、俺もある程度の信頼はしている。
ほんとに……心強い味方ばかりだ。




