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懐かしさと

魔道具を渡されたあと


レオリードと和やかなお茶の時間を過ごし、部屋に送ってもらったあと、シスツィーアは改めて魔道具を手に取っていた。


(わたし専用の魔道具)


シスツィーアの手のひらにすっぽりと納まる大きさ


魔道具が『女神』の姿をしているのは、もともとは神官たちが患者に与える魔道具だからだろう


シスツィーアにとっても馴染み深い『女神像』


いまでは複雑な想いはあるものの、それでも捨てきれずにいる信仰の対象


そっと首からさげてみる


『女神像』とチェーンは同じ銀で出来ているのだろう。繊細なチェーンは離れないように『女神像』としっかり溶接されているし、なによりシスツィーアが首からさげたままでも握りやすい長さ


まるで、シスツィーアをよく知る者が作ったかのように


(殿下が職人に指示してくれたのかしら?)


伝え聞いただけでシスツィーアにぴったりのものを作ってくれたのだとしたら、かなり腕が良いのだろう


それになにより近くで見れば見るほど、魔道具の美しさに惹かれて


(素晴らしい細工ね)


小さな『女神像』は、聖堂に奉られているものとそっくりに見えるし、なにより背中側に印された『護符』は緻密に描かれていて、ため息がでるほどだ。


(こんなに繊細な魔道具を作るなんて、王宮の職人はさすがだわ。お祖父さまみたい)


身近にいた魔道具職人の祖父(ルドル)


両親に疎まれていたシスツィーアを引き取って、中等科を卒業まで育ててくれた恩人である祖父も、繊細な『魔術式』を組み込んだ魔道具を得意としていた


祖父を思い出すと、ふわっとシスツィーアの心があたたかくなり


(お元気かしら?)


そう思った瞬間、鼻の奥がツンとする





目の奥も熱くなって、じわっと視界が歪んで





ぎゅっと、持っていた魔道具を握りしめると、懐かしさが込み上げてきて







『会いたい』







その想いが浮かぶのを、必死に抑え込んだ











同じころ









(元気そうだったな)


お茶の時間を過ごしたあと、レオリードはシスツィーアを部屋まで送って行き執務室へと戻ると、先ほどのシスツィーアの様子を思い返していた。


メイド長やキーサ、それに魔道術士団長から『普段通りのシスツィーア』に戻ったとは聞いていても、自分自身の目で確認しないことには安心することなどできなかったレオリード


「距離を置こう」と、なるべく会うのを控えていたのに、弱っているシスツィーアを目の当たりにすればそんな気持ちも霧散して


けれど、キーサに「シスツィーアさまへのご面会は、しばらくお控えください」と言われた手前、そしてその理由も納得できるものだったから、あれから会いに行くこともできなかった


だから、シスツィーアのためになにができるか考えて


王宮での生活が負担であっても、外へ住居を移すわけにもいかず、それ以外のことでシスツィーアに負担をかけないことといえば、そう多くはなく


ひとまず、依頼した魔道具の進捗状況を知りたいと思っていた矢先に、魔道具ができたと連絡があり、シグルドが無事に戻るとすぐに取りに行ったのだ。


(これで少しは安心か?)


アランと物理的に距離ができたことがシスツィーアの先日の『体調不良』の原因なら、補助の魔道具があれば少しはマシになるはず


そんな期待を持ちつつも、油断はできないとレオリードが考えていたとき





コンコンコン





扉を叩く音が控えめに響く




「レオリード殿下」

「ああ。入ってくれ」


よく知る者の声に、レオリードはすぐに入室を許可する


「失礼します」


躊躇いがな声とともに扉が静かに開き、入ってきたのはひとりの男性


「来てくれてありがとう、アルツィード」


レオリードが笑いかけると、見習いの騎士服姿のアルツィードが静かに礼をした。

最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話もお楽しみいただければ幸いです。

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