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原因

(なんだか最近、ぼうっとすることが増えた気がするわ)


薔薇園でお茶の時間を過ごして、1週間ほど経ったころ


シスツィーアは身体の変化を感じはじめていた


(アランとの切り離しが上手くいった、ということよね)


ここ2、3日は特に酷く、朝はすっきりと目覚めることはなく、授業中にぼうっとすることが増えたし、夜は身体が重くて食事も入浴も億劫で仕方ない。


王宮での生活が気疲れするものだとしても、この変化がそれだけが原因とは到底思えず


(これから先、どうなるのかしら)


ぎゅうっと胸が締め付けられるけれど、アランに『魔力を還す』ことは自分で望んだこと


(毎日の魔力測定には問題ないんですもの。夜にしっかり休めば大丈夫よね)


食欲がなくてもしっかり食べて、身体が怠くてもゆっくりお風呂に入って、さっさとベッドに入ってたっぷり眠る


シスツィーアにできることと言えば、これまでと同じように日常生活を送るしかない


(きっと、大丈夫よ)


シスツィーアの様子が変わったことを知れば、レオリードはきっと気にするだろうし、メイドたちにも心配をかけてしまうから、出来るだけ周りに悟られたくはない


だから、出来るだけ『いつもと同じ』に振る舞う


不安で押しつぶされそうになりながら、そう考えていたけれど







「身体が軽いわ」


さらに数日たった日の朝


ここ最近はメイドたちに起こされていたのに、今日はメイドが来る前にすっきり目が覚めて、しかも昨日までの怠さが嘘のように身体が軽い


(昨日までのは、『魔力』は関係なかったのかしら?)



王宮での生活が自分で思っていた以上にストレスで、それで身体が疲れていた




そう考えることもできるけれど




(いいえ。たぶん、違うわね)


いくらなんでも、こんなに急に回復するなんて不自然だ


(いったい、なにが原因なの?)


アランが王都を離れたことを、知らされていないシスツィーア


不安だけが大きく心にのしかかり、落ち着かない気持ちでいたけれど












「え?アランが?」

「ええ。陛下方とご一緒に視察に向かわれていたそうで、昨晩、お戻りになられたそうですわ」


礼儀作法の授業が終わり、シスツィーアがセミフォーマルなドレスから普段着へと着替えるのを手伝いながら、サラは続ける


「なんでも、行き先が旧マーディア領なこともあって、アランディール殿下が同行されることは警護の関係で秘密にされていたとか」

「罪を犯したのはマーディア侯とは言え、逆恨みする者がいてもおかしくはありませんものね」


シスツィーアの昼食の用意をしながら、言葉を添えるのはルリ


ふたりも先ほど知ったばかりのようで、シスツィーアの授業が終わると「ご存じかも知れませんが」と切り出されたのだ。


(いつから出かけてたのかしら?)


リオリースとシスツィーアが最後に会ったのは2週間ほど前


そのときに「ちょっと出かけて来るから、しばらく会えないんだ」と言われたことを覚えている


(たしか、陛下もご一緒だから行き先も聞かなかったのよね)


シスツィーアに教えても大丈夫ならリオリースから行き先を教えてくれると思うけれど、黙っているのは教えられないからかもしれないと、具体的なことは何も聞かずに「お気をつけて」とだけ伝えたのだ。


(あ、でも、たしかリオン殿下は「10日くらいで帰ってくる」って仰ってたわね)


それなら最後に会った日から2、3日のうちに城を出たことになる。


(旧マーディア領・・・・・・たしか、マーシャル領とシルジの街と隣接していたような?)


ぼんやりと、授業で教わったことを思い出す


アランによって罪を暴かれ断罪された結果、お取り潰しとなった侯爵家


家人のなかにはアランを恨んでいる者もいておかしくないし、領民だって心境は複雑だろう。騎士たちが守ってくれるとは言え、危険な目に遭う可能性はあるし、アランだってそのことは理解したうえで行くのだから、精神的なストレスが相当あったはず


(アラン・・・・・・大丈夫だったかしら)


サラに促されるままテーブルに着いたシスツィーアだけれど、アランのことが気になって食事に手をつけることもなく


(サラたちが何も言わないんですもの。きっと無事に帰って来たのよね)




10日も『女神の部屋』から離れて、無事に戻ってこれたのだ。




きっと学園に通いはじめる日も遠くない




心の奥がツキっと痛むような、寂しいような物哀しいような想いが広がって


(わたしとは大違いね)


アランとは正反対のここ最近の自分の体調が良くないことが思い浮かび、うっかりとマイナス思考に陥りそうになって


(これ以上は考えては駄目ね)


このまま考えてはどんどん落ち込むだけだと、シスツィーアはゆっくり肩の力を抜き、静かに息を吐く


ついでに、「クスッ」と自嘲の笑みも零れて


(きっと近いうちに、リオン殿下からお誘いいただけるわ。詳しいことはそのときに聞いてみよう)



「戻ってきたら、またお茶しようね!」



リオリースから言われた言葉を思い出す。


それなら、シスツィーアばすべきことはしっかり食事を摂って、体調を整えること


(こんなに急に回復したんですもの。いつまた急におかしくなっても)


そこまで考えて、ふとシスツィーアは固まる


(え・・・・・・もしかして?)




10日程前




シスツィーアが身体の異変を感じたのは



(同じころ・・・・・・・)




ツーっと背中に冷たい汗が流れて



(アランがお城を離れた・・・・・・・・から?)



サラたちがいるのも忘れて、シスツィーアは固まったまま思い浮かんだ考えに思考を巡らせる。



アランがお城を離れたから、シスツィーアの身体に異変が起こった



それはとってもしっくりとして



まるで、パズルのピースみたいにかちりとシスツィーアの心にはまった。





最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話もお楽しみいただければ幸いです。

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