戦争を始めよう
帝国では、俺がガキの頃に、戦争がなくなったという話だ。戦争といっても、一部の騎士や兵士たちが知っているだけで、ほとんどの貴族、平民、貧民は、戦争がどんなものか知らない。ただ、帝国が戦争を始める、と宣言したら、ちょっと税が高くなるくらいである。
誰も、戦争を具体的に知らない。実際に戦地に行った者たちは、契約により、口外出来ないようにされている。
だから、戦争の結果を帝国民は終わった後に知らされるだけだ。
その戦争も、どういう方法をとったのか、帝国では永遠になくなったという。王都より向こう側が敵国の領地だという。昔々、敵国が領土の境界線までやってきて、戦争を仕掛けてきた。
常に帝国は勝者であった。しかし、敵国は諦めない。何十年か経つと、また、戦争を仕掛けてくるのだ。
賢帝ラインハルトは、戦争を永遠になくすために、大魔法使いアラリーラを戦地に送った。
これまでの戦争は、人同士の戦いを行った後、筆頭魔法使いの魔法での蹂躙で終わることがほとんどだった。
大魔法使いアラリーラはそうではない。たった一人で、敵国の領土を支配し、敵国民を領土から追い出したのだ。
敵国の領土は海に囲まれていた。敵国民は船に乗って逃げていった。そして、大魔法使いアラリーラは、魔法で、海から侵入出来ないように、空間を歪めて、封印したのだ。
こうして、敵国は領土に戻れなくなった。
この最後の戦争だけ、魔法使いのみの参戦となった。軍部の関わりはない。そのため、勝利の過程は隠された。ほら、魔法使いのみで戦争すれば、簡単に勝てるんだ、なんて言われたら、軍部の面目丸つぶれとなる。
だから、貴族の学校の授業でも、「大魔法使いアラリーラにより、戦争は永遠になくなりました」で終わるのだ。
今日も、貴重な帝国の歴史を学んで終了である。さすがに、俺は帝国の歴史までは学んでいない。教科書も何度も読み返しては、へー、と思ったものだ。
「歴史の時は、真面目に聞いてるね」
一年次席のユナンが次の授業の準備をしながら、話しかけてきた。
「いや、だいたいは聞いてるけど」
「欠伸がすごいよ。教師のほうも、諦めてるけど」
「歴史はさすがに、習わなかったからなー」
「ロイドは、意外と、当然なこと、知らないよね」
「そりゃ、貧民だから」
「そうかもしれないけど」
「貧民って、生き残るのに大変だからな」
「そういうもんなんだ」
貴族平民の常識あるあるだ。
貴族の学校の文化祭、知らないことばっかりだったから、俺は色々とユナンに聞いた。ユナンは上にも兄弟がいるから、詳しかった。お陰で、俺は驚くばかりだ。
「平和だな」
戦争がなくなったからではない。貴族の学校の日常は、気が抜けるからだ。
いや、お嬢さんサリーに捕まってから、随分と俺はぬるま湯につかっているような感じがする。いつでも貧民に戻れるはずなんだけど、ちょっと自信がなくなってきた。
「もうそろそろ、旅に出たいなー」
こういうことを呟いているから、きっと、厄介事がやってくるんだな。
やっと文化祭が終わって、色々と落ち着いた頃に、俺は筆頭魔法使いハガルに呼び出された。
「調整とか、やったばっかじゃん!!」
ご主人様であるハガルの実験体である俺の体は、内も外も、定期的に調べられている。化け物妖精憑きは、本当に、気持ち悪いことを平然とする。お陰で、検査の後は、元に戻っているはずなのに、気持ち悪い。
終わった後の感想をハガルに訴えると。
「眠らせてやったほうがいいのかもしまれんが、ほら、覚醒時の反応が重要ですから。あなたは死ぬまで妖精の目を装着することとなっています。活動時の、生き生きとした情報が重要です。今日も、生き生きとしていましたよ」
笑顔で喜んでいるハガル。これ以上、放置しておくと、具体的に語られてしまうので、俺は黙り込むことにした。知りたくない情報だ。
時々、抜き打ちで検査されることもあるので、呼び出されのはイヤなんだよ。だけど、俺はハガルの奴隷だから、ワンと吠えるしかないのだ。
使用人に案内されるのは、いつもの部屋である。今日は俺を餌付けしたい気分なんだな。すでに机には、俺の好物が並んでいる。
珍しく、ハガルが先にいた。俺はちょっと警戒した。こういう時、長兄ライホーンがいたりするんだよ。そして、部屋を出ると、ライホーンの説教だ。
ライホーンとハガルは仲良しだ。ハガルはライホーンが心配するから、と俺のことをライホーンに話すのだ。お陰で、俺の日常全て、ライホーンに筒抜けである。
あの男、長男だから、とばかりに俺を叱るんだ。何をやっても、叱るんだよ。まあ、俺も悪いことするから、仕方がないんだけど。
今日はライホーンがいなかった。
「この後、兄貴が来るとかないよな」
「呼びましょうか?」
「いや、呼ばないで」
「ライホーンも仲間外れにされると、寂しがりますよ」
「そこまでガキじゃないから!!」
ハガルの感性もずれてるよな。ライホーンは、そんなことで拗ねたりしない。そんなに兄弟べったりじゃないよ。
ハガルはべったりしたいんだろうな。力の強い妖精憑きは執着が面倒くさい。ハガルは家族大好きだ。筆頭魔法使いと表に立った時に、ハガルは家族を帝国に隠された。ほら、家族はハガルの弱点になるから。だから、ハガルは家族とくっつけないから、俺と長兄ライホーンの仲立ちをするのだ。余計なお世話だよ。距離感あったほうがいい家族だっているんだ。
俺の予想は杞憂となった。俺はハガルが作った料理をありがたく食べる。
ハガルはというと、すでに食事が済んだのか、それとも、食べないのか、どっちかだ。妖精憑きには、食事をとらない、というのはよくある話だ。
俺の次兄ルキエルは妖精憑きだ。時々、食事を拒否することがあった。食べられないわけではない。お腹が空かないのだ。心配になって、どうにか食べさせようとしたが、満腹感があるため、ルキエルは食べなかった。けど、そういう時、食べなくても、体調が崩れることはない。気づいた時には、また、食事を口にしている。急に食べだしても、ルキエルは平然としていた。
ハガルもそうなんだろう。食べなくていい時もあるのだ。俺は察して、食事の話はしない。俺にあわせた、美味しい食事をいただいた。
だいたい、話がある時は、デザート直前で言われるんだよ。デザートは俺の好物なんだよなー。こういう時に大人しく待てをさせられるという。
予想通り、俺がデザートに手を伸ばすと、ハガルはデザートを下げた。きっと、こうやって、弟たち妹たちの耳を無理矢理、傾けさせてたんだな。
「大切な話があります」
「知ってる。それで、何?」
ハガルは俺の向かいに座って、デザートを遠ざけてくれる。俺は大人しく待てをする。すっかり、ハガルに胃袋を掴まれてしまった。
「王国で戦争が起こります」
「そんなこと、言ってたな。まだ、終わってなかったんだ」
伯爵ブンガロと筆頭魔法使いハガルが、サツキの子のうち、誰を身売りさせようか、なんて密談していた時に、そんな話が出てきた。あれから、それなりに時間が経っている。戦争なんて、もう始まって、終わっていると思っていた。
「魔法使いの要請がありました。敵国もお行儀よく、戦争の日程まで待ってくれています。戦争を仕掛ける側が敗戦国なので、強く出れなかったこともあります。まず、戦争を始めるためには、準備が必要ですから」
「思うんだが、お行儀がいいな、戦争って。貧民同士のいざこざなんて、そんな、挨拶なんかやってられないよ。情報戦だよ。いつ、襲ってくるか、とか、どこに軍勢が集まっているか、とか、そういう情報を集めて、基本、襲撃だな」
「そういう戦い方をするのは、あなた方がきちんと教育を受けているからですよ。ほとんどの貧民は、思い立ったら殴る、です」
「そうだな。俺は、そっちのほうが楽だな。向かってきたやつ全部、潰していけばいいから。血の気の多い部下も多いから、いい気晴らしになる」
「帝国王国の戦争は、そういうわけにはいかないのですよ。まず、神罰が下ります」
「初めて聞いたよ、そんな話」
まず、戦争が起こる前の過程は知らない。神と妖精、聖域の信仰を持つ帝国と王国に対して、敵国は、そういう信仰を捨てた側だという。信仰が違う感じだ。
「まず、敵国と我々は、生き方、考え方、信仰が違います。敵国は神よりも科学を信仰しています。神に寄りかかる生き方ではなく、科学を元に切り開く生き方ですね」
「俺たちだって、神ばっかりに頼ってないよ。自力でどうにかしてる」
「根本が違います。敵国は神を必要としていません。科学は、誰にでも力を与えます。だから、平民でも、力があります。戦争でも、簡単に人を殺せる武器を使います」
「そんな、誰でも使えるって、危ないな。心得の悪い奴が使うと、悪用されるだろう」
「さすが、ルキエルの教育を受けただけのことはありますね。考え方がしっかり出来ています。ご褒美です」
「いただきまーす」
デザートが俺の前に置かれた。よし、次はお代わりだな。きちんと答えよう。
「帝国王国では、兵士や騎士を戦争に投入します。きちんと訓練し、心得も叩き込まれています。ですが、昔からずっと、剣や弓での戦いです。戦い方には進化はありません。それは何故か?」
「そりゃ、魔法があるからだ。魔道具魔法具も魔法で動かされている。だけど、魔法具魔道具には武器は存在しない。魔法具魔道具は進化する土台がない。そういうことが出来る奴がいないからな。だから、ハガルは妖精の目を改造するわけだ」
「私が、妖精の目をただの人に装着させて、何かすると考えているのですか?」
「戦争の話が出たから、そうかなー、と思ったんだけど」
違ったらしい。デザートのお代わりは諦めるしかない。
ところが、ハガルはデザートのお代わりを出してくれた。
「なんだ、やっぱり、武器として使うつもりなんだ」
「いえ、そういう使い方を私は考えていません。だいたい、私のような妖精憑きが誕生する土台があるのですよ。武器は必要ありません。妖精の目は、別の使い道を考えています。ただ、認められないでしょう」
「どうして?」
「先ほど、あなたは言いましたよね。 誰でも使える武器は危険です。心得の悪い者が使うと、悪用されます。まさしくそうです。私は、妖精の目を武器としての能力を取り払って使えればいい、と考えていました。ですが、不可能なんです。武器としての能力を取り払うには、妖精への命令に制限を与えなければなりません。ですが、妖精は賢い。人がどれほど、制限をかけても、妖精はその穴を見つけます。結果、人を殺す武器になってしまいます。だから、この実験は、始めから、破綻しています」
「じゃあ、どうして、実験なんか始めたんだ?」
最初からわかっていたことだろう。実験が破綻しているとわかっていて、
「帝国側の都合です。あなたは知らなくていい」
ハガルは、妖精の目に関する話を止めた。
「話が逸れましたね。敵国と帝国王国とでは、価値観が違い過ぎます。正直に言いましょう。敵国は約束を破ります。何せ、神と妖精、聖域の信仰を捨てたのですから。だから、こちらは戦争終結時に、保険をかけます。帝国王国は戦勝国です。そして、敵国は敗戦国です。帝国王国は、侵略を望みません。ただ、あるがままです。ですが、敵国は侵略したいのです。だから、話し合いは平行線です。敵国は敗戦国のくせに、押し売りまでしてきます。ですから、不可侵条約を結ぶのです。その中で、戦争の開戦についての条項が設けられています」
「いれなきゃいいだろう!! 不可侵条約なんだから、もう二度と、敵国と関わりを持たなきゃいいんだ」
「戦争は起こされます。それが幾度となくされました。不可侵条約なんて、戦争をふっかけて、勝ってしまえば、守らなくていいのですよ。戦争をなくすことは不可能です。兄弟喧嘩だってなくならないのですから」
「戦争と兄弟喧嘩を同じ扱いをするのはやめろ」
「神の視点から見れば、同じなのです。人なんて、皆、兄弟であり、親子なんです。だから、神の視点から、この兄弟喧嘩をするのなら、神にお伺いをたてなさい、と不可侵条約に加えたのです。戦争は一方では起こせません。一方で起こすのは侵略です。神は侵略を禁止しました。勝手に戦争を吹っ掛けてはいけません。それは、侵略となります。だから、敵国は、戦争を始める時、お伺いをたてなければならないのです。敵国は、敗戦国ですから」
「それで、今、敵国が戦争の開戦を宣言したから、王国は神さまにお伺いをたてているわけだ」
「正確には、魔法使いが、ですよ。それをするのは、筆頭魔法使いである私です」
神さま相手だ。最強の妖精憑きがするものだ。
「それで、神さまはなんと言ってるんだ?」
「まだ、お伺いをたてていません。私も忙しいですから」
笑顔で言い切るハガル。あ、これ、時間稼ぎしてるだけだ。
きっと、敵国が我慢出来なくて、さっさと侵略始めるのを待ってるんだな。王国が侵略されちゃうかもしれないのに、だけど、帝国側は他人事なんだよな。
「私としても、こう、政治まで持ち込まれるのは迷惑なんですよね。だから、お伺いをたてていないだけです」
「王国側に、何かあるのか?」
「ありますよ。融和派と開戦派です。今回、使者は二人来ました。どちらも、王族からの使者です。今、二人を隔離し、城に足止めしています。さすがに二か月は長すぎましたから、二人とも、ご立腹ですよ」
「なるほど、政治か」
「帝国でもよくありました。融和派と開戦派がぶつかりあいましたとも。どちらも、敵国と手を組んでいるのですよね。敵国も一枚岩ではありませんから、こういうことが起こったのです。王国でも、同じようなことが起こっています」
長い歴史の中、こういうことがたくさんあったのだ。そういうことを歴史として知っている筆頭魔法使いハガルにとっては、もう、問題でも何でもないのだろう。解決策はすでに出来ているのだろう。
「王国の政治はどうだっていいです。勝手に敵国に踊らされていればいい。その程度の政治しか出来ない国王は、崩御すればいい。国王の代えはいくらだっています」
流石、影の皇帝は、王国の国王であっても、役立たずには容赦ないんだな。俺も気を付けよう。他のもっといい才能持ちがいたら、俺、ハガルに捨てられちゃうな。
デザートのおかわりも、味わって食べ終わった。それをハガルは待っていたんだろう。
「ちょっと足止めをし過ぎて、王国側の使者二人を激怒させてしまいました。外交問題に発展しそうなんですよ。黙らせるのは簡単なんですが、こちらの都合で二か月も足止めしましたし、手ぶらで帰すわけにもいかなくなりました。どちらも、王族の勅命を受けていますからね。二か月も足止めされ、戦争許可の書状を持って帰るなんて、何しに行ったんだ、と使者二人も責められて可哀想ですしね」
「そこは、上手に書状で宥めればいいだろう。神さまの都合なんだから、と」
「嘘はいけません。私の都合なんですから。神さまはいつだって、私の言葉に耳を傾けてくれますよ」
「忙しいのは、仕方がないだろう。あんた、帝国で二番目の権力者だぞ。背負ってるものが違うだろう」
「面倒なんで、後回しにしてただけですけどね。神との対話は、ものすごく面倒くさいんですよ。神さま、暇だから」
その言い方に既視感があった。何かなー? と考えて、思いつくのは、俺が長兄ライホーンのことをいう時と同じ感じだ。
そっかー、ハガル、神さまに説教食らってるんだな。ハガルに説教出来る奴なんていないなー、なんて思ってたけど、神さまはハガルに説教出来るわけだ。そして、俺と同じように、平謝りなんだろうな。反省しないけど。
神さま関係だから、ハガル、嘘はつけない。二か月放置したのは、ハガルが悪いのだ。
「なんで、二か月も放置したんだ? 俺はもう、戦争自体、終わってると思ってた」
しかし、面倒程度でハガルが放置するはずがない。他に理由があっただろう。
「後回しにしていたら、使者二人が激怒して、訴えてきたわけです。私にとって、二か月って、ちょっとした時間でしたから、待たせてるつもりはなかったんです。ただの人の感覚では、放置なんですよね」
「二か月は待たせすぎだろう!!」
「それが、そうでもありません。本来、帝国と王国は同時に戦争の開戦を宣言されます。ですが、神さまの伺いは帝国のみです。だから、王国の伺いは後回しなんです。一年二年待つというのは、普通なんですよ。だって、帝国側が先に戦争を始めるのですから。ですが、帝国はもう、戦争をしません。敵国の領土は大魔法使いアラリーラ様の力によって、封鎖されています。ですが、王国側が侵略されてしまったら、帝国はまた戦争をしなければなりません。少しでも時間稼ぎをしたいじゃないですかー」
「そんなに神さまの対話、イヤがるなよ!!」
「一度、対話してみればわかります。私は少々、これまでの筆頭魔法使いとは違い過ぎるものだから、神さまのせっきょ……有難いお話も長くて」
あ、説教を言い直したな。やっぱり、ハガル、神さまから説教されてるんだ。
「それで、手土産は考えたのか?」
王国からの使者二人を手ぶらで帰すわけにはいかなくなった、というのだ。手土産は考えているのだろう。それを俺の前でわざわざいうのだから、俺も巻き込まれるんだな。
「もちろん、すでに決定です。皇族セキラを王国の戦争に参戦させます」
「何考えてんだよ!?」
よりによって、皇族でも最弱なんじゃないか、と言われる皇族セキラを王国の戦争に参加させるなんて、とんでもない話だ。
「セキラ様、死んじゃうよ!!」
「死にません。だって、戦争に参加しても私の妖精が守ります」
「それは、被害増大するってことだろう!?」
死なないけど、もっと危ないこととなるのだ。
普段、俺は皇族セキラの護衛をしている。これ、セキラを守るためではない。セキラへの攻撃に反応した筆頭魔法使いの妖精が激しい反撃をさせないためである。
筆頭魔法使いは、皇族に絶対服従の契約紋が施される。これにより、筆頭魔法使いは皇族全てに妖精を付けて守るのだ。そのお陰で、皇族は病気もしないし、怪我もない。だいたい、皇族は寿命で死ぬのだ。だが、皇族の周囲はそうではない。妖精の手加減って妖精並なのだ。皇族への攻撃は全て、妖精が返すのだ。妖精によって返された攻撃は、妖精並の手加減である。倍返しではない。手加減した反撃なので、皇族の周囲が消し炭、なんて笑えないことが実際に起こる。だから、皇族は城から出さないようにするのだ。皇族の周囲って、実は危険なんだ。
皇族セキラを王国の戦争に参戦させる、ということは、敵味方関係なく、大変な被害を起こすということである。
「心配いりません。セキラは実際、強いですよ。ただ、対人関係が弱くて、あんな風に引きこもりになってしまっただけです。王国では、皇族はお客様ですから、後方待機となりますよ。皇族を同行させるのは、王国への保障です。魔法使いだけが行っても、裏切られるかもしれません。だから、皇族は人質です」
「セキラ様、可哀想」
どっちにしても、セキラの扱いって、酷いな。
「セキラも、最初は渋りましたが、ロイドと一緒なら、と了承してくれました」
「………は?」
「いいお金が出ます。良かったですね」
「良くない!! 俺は、男爵家にも雇われてるんだぞ!!! サリーお嬢さんの護衛はどうするんだ!?」
「そこは、問題ありません。代理をたてます」
すでに話がついているようだ。もう、俺の拒否権はなかった。だって、俺はハガルの奴隷だから。




