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呪いの支配者  作者: 春香秋灯
学校へ行こう
22/101

お家騒動は面倒臭くて、周りは迷惑だ

 その場を有耶無耶にしたが、あれはあれで、面倒くさいのが関わってきたな。

 二年の生徒会役員リコットの妹リーゼだ。移動教室ついでに、リーゼが所属する下級クラスを覗き見たんだが、私可愛いでしょ、を上手に使いこなす、頭空っぽな感じの女であった。あれで、男の心を手玉にとるんだろうな。

 姉リコットは先妻の娘で、リーゼは後妻の娘なのだ。腹違いというだけあって、父親は同じだ。リーゼは父親の浮気で出来た娘である。リコットの母親が病気で亡くなると、すぐにリーゼの母親と再婚したのだ。ちなみに、相続権はリコットが持っている。リコットの父親は婿養子だ。

 あれ、俺の母親と同じ感じだ。母サツキとリコットの立場、全く同じである。さすがに年齢に一年の差がある分、リコットの父親も正妻に気を使ったのだろう。母サツキの義妹は同い年なんだが、妻公認の浮気だったという。貴族、こわっ。

 そういうのを俺はサリーが持つ後ろ暗い力を使って調査させた。まとめられた報告書を中央都市の貧民街で確認する。

「ロイド様ぁ、新作、見てくださーい」

「ん、見た。可愛い可愛い」

「わーい」

 見た目はいかつい男だが、心は乙女のリリーベルは大喜びである。ごめん、俺、適当に返事した。よくある、可愛いっていっておけば解決だ、最低な男になった気分だ。

 見た目はいかつい男だけど、リリーベルの趣味はひらひらの服である。しかも、リリーベルの手作りだ。あの体格にあう服、普通に売ってないよ。

 リリーベルの部下たちは、引きつった笑みで誉めている。大変だなー。リリーベルも機嫌をそこねると、面倒臭いから。

「昨日の今日で、完璧だな」

「サリーちゃんって、すごいわね!! 変更があっても、すぐに覚えちゃうから」

「実際、頭がいいんだよ」

 俺はサリーの能力を色々と試した。ただの物覚えのいいだけの小娘かと見ていたんだ。

 情報源の地点をいくつか変更したり、集められた情報の分析をさせたり、色々とやらせた。

 サリーは間違い一つしなかった。無作為にされる情報の変更にも完璧に対応し、与えられた情報の分析も完璧にこなした。

 俺は色々と心配だった。サリー、ちょっと考えなしの所が見られた。俺に一目惚れしたから、とずっと俺にべったりだ。思い込みも激しそうだから、将来、大丈夫かな? なんて見ていた。

 だけど、サリーは、言動はともかく、しっかりしている。いざという時は、その頭脳を動かして、問題解決してしまえるのだ。

 俺がリコットとリーゼのことを調べる必要なんてないんだ。勝手に、相手は話してくれるし、噂だって拾えばいいんだ。だけど、こうやってサリーの能力を試して、サリーの能力を確認するのは、大事なことだ。サリーの今後の扱い方がこれで変わる。

 誰もが、サリーは守ってあげないといけない、ちょっと頭の足りない子、と見ている。サリーの兄たち姉たちもそうだろう。男爵マイツナイトは、あれだ、歳食ってから出来た末娘だから、溺愛しているだけだ。

 家族の中で、一番、冷静にサリーを評価しているのは、男爵マイツナイトである。だから、サリーが男爵の跡継ぎなんだ。

「それで、誰を殺せばいいんですか?」

「え、殺さないよ」

「わざわざ調べたのに?」

「お嬢さんの能力を確かめただけだよ。あと、お前らも暇だろう。貧民街の支配者って、大してやることないからなー」

「そんなことありませんよ。汚れ仕事の依頼、きています」

「せっかくだ、裏付けしてから、どうするか、決めろ。お嬢さんの能力、存分に使うぞ」

「はーい」

 汚れ仕事だから、裏がどうなっているか、わかったもんじゃないからな。

 サリーはというと、お子様だから、夜遅いので、俺の膝で眠っていた。






 リーゼ、なかなか面倒くさい女である。食堂で、俺がサリーと皇族セキラに囲まれて、まあまあ美味しい食事を食べていると、わざわざ、向かいの空いている席に、お友達と一緒に座ってきた。

「あ、ごめんなさい!! 空いていたから」

「じゃあ、別の席に行け」

「で、でも、座っちゃったし」

「皇族の許可とらずに座るな。無礼だ」

 そういうのは厳しい俺。俺は礼儀に関しては、厳しいんだ。何故って、俺も厳しく教育されたからだよ!!

 俺はイラっとなった。だけど、リーゼ、諦めない。

「いいですよね、セキラ様」

「ひっ、離れろ!!」

 皇族セキラ様は、女が大嫌いなんです。もう、有名な話だろう。

 さすがにリーゼの友人たちは、席を立った。ここまで拒否されているのだから、そこに座るのは、将来に響くと見たのだ。

 リーゼは、悔しいと顔を歪めながら、ゆっくりと席を立ち、それでも、近くの席で俺を睨むようにして食事をとりはじめた。

 どうでもいい視線には鈍感になるように教育されている俺は、お嬢さんサリーと皇族セキラの食事を進み具合を見ながら、さっさと食べきってしまう。ほら、一応、護衛だから。食事は飲み物だよ。

「いつ見ても、体に悪い食べ方をしていますね」

 そこに話しかけてきたのは、二年の生徒会役員リコットである。相棒のナバンも一緒だ。付き合ってるのか?

 さっきのやり取りを見ていたから、リコットとナバンは別の席に進もうとする。

「生徒会役員同士、親睦を深めよう。ほら、向かい、座れよ」

「でも」

 リコット、もの言いたげに皇族セキラを見る。セキラは、ゆっくりとした動作で食事をするだけで、俺とリコットの話、聞いちゃいない様子だった。

「別に、いいです、よ。ロイドがいい、なら」

 だけど、しっかり聞いてたんだな。セキラは視線をあわせないようにしながら、許可を下ろした。

 皇族の許可が下りたのだ。断ってはいけない。リコットとナバンは顔を見合わせるも、俺たちの向かいの席に座った。

「なんて意地悪なんですか!?」

 それを側で見ていたリコットの妹リーゼが、とんでもない声で叫んだ。

「お姉様、わざと、私がここに座れないように、意地悪なことをしたのですね!?」

 責める相手はリコットである。リーゼはわざわざやってきて、ちょっと涙目になった。そんなリーゼに味方するように、三年の男子生徒が近寄る。

「相変わらず、冷たい女だな!!」

 また、新しいのが出てきた。けど、俺はこいつが誰か知っている。

 名乗られていないが、俺も、サリーも、皇族セキラだって知っている。俺は調べたからだ。セキラは皇族であるため、生徒会役員の身辺調査の報告を受けている。

 だが、一応、ここで訊ねるのは礼儀だな。

「あんた、誰だよ」

「貴様のような貧民が口を出すのは無礼だ」

「ロイドはいいんだ! ぼ、ボクの、護衛なんだ、から」

 皇族セキラ、偉い!! きちんと声を大にして言ってくれたから、俺は頭を撫でてやった。セキラ、可愛い顔で喜んでいるよ。可愛いな!!

 皇族セキラが俺の味方だから、三年の男子生徒はギリギリと歯ぎしりしながら俺を睨んだ。ほら、さっさと名乗れよ。

「俺はご存知、皇族の護衛もしている一年のロイドだ。後見人は筆頭魔法使いハガルだな。俺の兄貴は、皇帝陛下の友人でもある」

 殿上人みたいな人たちの後ろ盾がどんどんと出てくる俺。俺をそこらへんの貧民と侮ってると、後で大変なことになるぞ。

「名乗らなくて、いい。リコット先輩の、婚約者、エンペル、だ。家は、侯爵、だ」

「覚えていただけるとは、光栄です!!」

「お前は、リコット先輩の関係者にすぎない」

 喜んだエンペルは、次の瞬間、皇族セキラによって、下げ落とされる。そりゃそうだ、お前みたいな侯爵の子、帝国中にはいっぱいいるよ。セキラに関係ある奴でなければ、皇族は顔すら覚えない。

 リコットの婚約者エンペルは、ぎっとリコットを睨む。リコットは、深いため息をついて、沈黙する。

 ここに、お家騒動みたいなことが勃発しているようだ。リコットの婚約者エンペルは、どうやら、リコットの妹リーゼとそれなりに想いが通じ合っているようだ。将来は、リーゼはリコット公認の愛人になりそうだな。

 そんなことを頭の片隅で考えながら、俺は傍観する。ここで口出ししたって、いいことはない。

 エンペルは、ちょっと泣いているリーゼを慰めつつ、リコットを睨んだ。

「お前は、妹に意地悪なことばかりして、姉として、人として、恥ずかしくないのか!?」

 これまた大声で責めるエンペル。帝国では声が大きいほうが有利なんだよな。

「そういう恥ずかしい話、ここではしないでちょうだい」

「恥ずかしいことをしているのは、お前だろう!!」

 なんと、エンペルは手を出してきた。それには俺は席を立って、エンペルの腕を捻り上げる。

「な、貴様、何を」

「皇族の前で暴力だと? ここに、皇族への暴行未遂罪が成立した。今すぐ、警備を呼べ!!!」

「なっ!?」

 皇族の前では、絶対に暴力も、武器を見せることもやってはいけないのだ。三年になって、知らないなんて言わせない。

 昔、本当にあったんだ。喧嘩に見せかけて、皇族を害そうとした。皇族を守る筆頭魔法使いの妖精が動き出して、皇族を中心に、火柱が立ったという。建物の天井が吹っ飛び、近くにいた貴族は消し炭となったのだ。

 本人の言い分なんて関係ない。皇族の近くで暴力行為をしたことは、皇族への暴行未遂となる。

 貴族の学校で、こういうことがわかっている生徒はそれなりにいる。すぐに、警備や騎士がエンペルを拘束する俺を包囲する。

「ロイド様、ありがとうございます!!」

 しっかり、教育されているから、俺には敬称つけてくれる。呼び捨てでいいのに。

「なんて恐ろしい所なんだ!?」

 俺がエンペルを引き渡すなり、皇族セキラが泣きついてきた。お前なー、その身は鍛えているだろう!? 抱きつかれてわかる。こいつ、むちゃくちゃ鍛えてるよ。

 だけど、気が弱いんだよなー。俺が頭を撫でてやると、セキラ、泣いた顔を上げて、笑顔を見せる。ちっくしょー、泣き顔も可愛いときてる!! はやく、成長して!!

「わたくしも怖かった!!」

 どさくさで、お嬢さんサリーまで抱きついてきた。勢い強いから、俺はその場で尻もちをついた。痛いけど、我慢だ。こんなガキ二人、支えられるくらいの力はある。

「な、なんで、なんでこうなるのよ!!」

 味方であるリコットの婚約者エンペルが退場して、リコットの妹リーゼが髪をかきむしって叫んだ。そして、ぎっとリコットを睨んだ。

「婚約者を助けないなんて、最低ですね、お姉様!!」

「一番、近くにいたのは、あなたじゃない!!」

「こんなか弱い私に、出来るわけがありません。お姉様なら、その優秀な頭脳で、どうにか出来たはずです!」

 リーゼ、勉強出来ないけど、悪賢いな。よく、人を陥れる手段がわかっているよ」

 自分は悪くない、全て、姉が悪い、というすり替えの見事さに、しかし、俺は呆れるしかない。

「リコット先輩が味方したら、お前の家は潰れるぞ。平民落ち、したいのか? だったら、今からお前が助けに行け。二人仲良く、平民になれるぞ」

「それもこれも、アンタが悪いのよ!! アンタが、騒ぎを大きくするから!!!」

「俺は自分の職務に忠実に従っただけだ。俺は悪くない。だいたい、貧民の俺だって知っていること、三年にもなって知らないなんて、バカだろう。そんなの、貴族として残らないほうが、その家のためだ。道連れで、家門ごと、平民落ちするぞ」

「嘘ばっかり!!」

「一年では知らないんだな。皇族の近くでは、暴力沙汰は犯罪だ。いい機会だ、覚えておけ」

「きっと、アンタが権力に物を言わせて、そういうふうにしたのよ!?」

 頭悪いから、何言ったって、無駄だな。俺はさっさと見捨てた。

 言いたいことだけ言って、逃げていくリーゼ。そんな彼女に味方して、追いかけるのは、まだまだ、世の中をわかっていない下級クラスの奴らだ。貧民である俺が言ったことなので、信じていないんだろうな。

 リコットは、真っ青になっていた。とんでもないこととなってしまった、と今更、気づいたのだ。

「ど、どうしよう」

 今更、泣きそうな顔になるリコット。何故か俺を縋るように見てきた。きっと、俺なら、どうにか出来る、なんて思ってるんだな。

「こういうのは、初犯は厳重注意だ。二回までは許してもらえる。が、あの男の実家には、手厳しいお叱りがいくだろうな。そこは、止められない。きっちり叱られて、反省すればいいけどな」

「………」

 どちらにしても、リコットの表情は暗い。

 どう見ても、失敗は全て、リコットのせいにされるのだろう。リコットが泣いて否定したって、多数決でリコットが悪者だ。

 これ以上は、いくら俺でも手が出せない。ほら、こういうのは、家同士で解決することだ。俺は完全な部外者である。




 良かったことといえば、しばらくは、リーゼが俺たちに近づくようなことはなくなった。




 夜、また、勝手に妖精の目が発動するので、俺は野良の妖精たちと幽体の母サツキとご対面の予定である。

 いつも、あの離れはのは詰まらないので、その日は、庭でお茶会みたいな感じでテーブルに菓子と茶を置いて、俺は座っていた。

 人払いはした。俺の妖精の目って、発動すると、光るんだよ。それを見て、色々と感情を抱かれるから、夜は人を近づけないようにしている。

 意識すれば、妖精の目を休止出来る。だけど、それをする必要なんてない。俺は発動している妖精の目を眼帯で隠して、辺りを見回した。

「こういう時に限って、お袋、いないんだよなー」

 まだ、俺が言った事、守ってるんだな。

 俺は腹立ちまぎれに、お袋を侯爵家の邸宅から追い出した。言葉のみだが、傷ついたお袋は、二度と、侯爵家の邸宅にある庭には姿を見せなかった。

 結局、出てこないから、仕方なく、俺は屋敷から出て、迷惑かけても、きっと笑って許してくれる商人ダクトの店にお邪魔する。

「ちょっと、部屋だけ貸してー」

「部屋だけって」

「ちょっと密会だよ、密会」

「まさか、浮気か!?」

「あ、間違えた、密談密談、って浮気という前に、相手がいないよ!!」

「ライホーン様から聞いてるよ。男爵令嬢と婚約したって」

「してない!! 一方的に言われてるだけで、俺は全力で拒否してるよ!!!」

「とうとう、お前も捕まったかー。家庭を持つのもいいものだよー」

 親の紹介で結婚した男は、上から目線だ。むっかつくなー。

 こうやって、俺の知人友人にまで、俺とお嬢さんサリーの婚約の噂が流れている。俺がどんなに否定したって、そのうち、「知り合い皆、そう言ってるよ」なんて外堀埋められちゃうんだろうな。

 いつか逃げてやる、と決意しつつ、俺はダクトが提供してくれた部屋でくつろいだ。ダクト、茶と菓子までくれたよ。

 そうして、俺がぽつんと居残ると、野良の妖精たちの中に幽体の母サツキが紛れ込んだ。

「なあ、これから、リコット先輩はどうなるんだ?」

 すでに経験者である元伯爵令嬢サツキとして、意見を求めた。

 母サツキとリコットの立場はよく似ている。

 母サツキは、同い年の義妹と婚約者が、真実の愛、という戯言をのたまって、浮気をしていたという。結局、お家乗っ取りの犯罪となって、婚約者は廃嫡となった。義妹は父親の生家に救われたが、結局、母サツキの虐待が表沙汰となり、生家から絶縁されたのだ。婚約者も義妹も、最後は不幸となった。

 こんな経験者であるサツキが、リコットのその後、わからないわけではあるまい。

『わたくしは、わたくしの手で破滅させるために、色々と助けてあげたわ。皇族への暴行未遂だって、痴情のもつれに落としてやったわね。皇族侮辱罪も、わたくしへの謝罪で、皇族方から許しを得ました』

「助けたのかよ!?」

『あのまま、罪人となってしまったら、復讐できないではないですか。どうせ、家の力で彼らは助かってしまいます。だったら、落ちるとこまで落としてやるために、自由でいてもらわないと』

 過去を思い出し、幽体の母サツキは嫣然と微笑む。こわっ!!

 母サツキは、復讐のために、生きたまま苦しめたのだ。小さい罪程度、家の力で消してしまえる。だったら、絶対に消せないように、と帝国中を巻き込んだのだ。

『ですが、リコット嬢は、そこまでの気概を感じませんね。家では、そこまで酷い扱いではないのでしょうね。家門のため、領民のため、という使命感を感じます』

「あんたは、家門も領民も見捨てたもんな」

『わたくしを裏切ったのです。見捨てます』

 じゃあ、仕方ない。母サツキにとっては、教育上の義務感だけを持っているにすぎない。一方通行の義務感だったので、その情熱はすぐに消えたのだろう。こういうのって、お互いに義務感を投げ合わないと、情熱なんてすぐに消えるものだ。

 だけど、二年生の生徒会役員リコットはそうではない。生家での扱いは、あまり良くないようだが、それでも、使用人たち、家臣たちの信頼は強いのだろう。領民も、リコットと一緒に盛り立てよう、と頑張っているようだ。

 だけど、リコットの父親、義母、妹、婚約者は違うようだ。この四人が、躍起になって、どうにかリコットを陥れようとしている。それに手を貸している使用人や家臣だっているのだろう。

 すでにお家騒動が水面下で勃発していた。それに、どうやら、貴族の学校は巻き込まれそうである。

 過去に、伯爵令嬢サツキと、義妹、婚約者が貴族の学校でやらかした。その煽りは、卒業生にまで及んだという。

「何十年経っても、誰も学習しないなー」

 毎年、可哀想な伯爵令嬢サツキの演目が帝国中で発表される。もう、帝国民たちは、飽きてきたのだろう。

『リコット嬢は、わたくしのようにはならないでしょうが、お家騒動が、学校内の権力闘争を勃発してしまうでしょうね。次、やらかすとしたら、舞踏会ですね』

「舞踏会って、何?」

『わたくしは参加出来ませんでしたが、一応、生徒会の最初のお仕事ですよ。舞踏会に参加する前に、わたくし、生家から追い出されてしまいましたから』

「聞いてないよ!! 舞踏会って、俺、その、制服じゃダメ?」

『一応、貸出もされますよ。ですが、生徒会役員ですから、きちんとした物を身につけないといけません。ナイツマイト様のお古で、一番、無難なものをお借りしたらどうですか』

「舞踏会に参加したくないんだよ!!」

『生徒会役員は欠席が許されません。しかも、パートナーは絶対です。婚約者がいるのでしたら、婚約者と入場です。もう、ここから、リコット嬢は大変なこととなるでしょうね』

「お袋は、どういう予定だったんだ?」

 舞踏会に参加する前に出奔したとはいえ、母サツキは、参加のために、それなりに準備していたはずだ。

『エスコートの相手である婚約者は、すでに義妹のパートナーとなっていました。ですから、生徒会副会長にパートナーをお願いしました。衣装は、もう、出来ていましたね。一度も袖を通すことはありませんでしたが』

 色々と詳細を聞きたかったが、あえて、俺は飲み込んだ。母親の過去を聞いたって、楽しくもなんともない。

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