冤罪
俺の知ってる男女の子供が相当なクソ野郎だという。
そいつは自分の親を殺したそうだ。
そうニュースで報道されていた。
でも俺はそいつをクソだとは思わない。
世間ではそいつのことを酷く言っていた。
だが考えてもみてほしい。
その男女が子供に殺されるほどの恨みを買ってしまった、殺されても仕方ないほどの何かをしていた、そうは思わないのか?
盲目的に殺人は良くないことだと決めつけて、そこに至る経緯を考えずに断罪するのは大いに間違っている。
そいつは虐待を受けていた。
それは酷かった。見るに耐えがたかった。
飯もろくに与えてもらえず、自由を奪われ、精神を傷つけられた。
自分の子供のことなのに何でそんなことできるんだ?
赤の他人じゃないんだぞ。
だから俺はその男女に一度問いただしたことがある。
「何で自分の子に手を出せるんだよ!」と。
そしたらなんて言ったと思う?
「親に向かってなんて口の利き方だ!」
だとさ。
俺は悪くないと確信している。
殺してなければいずれあいつらに殺されていた。あれは正当防衛だ。
そうだ、絶対に悪くない。俺は悪くない。
しかし世間はそう思っていないようだった。この事件が報道され一般に知れ渡ると、死刑を求める声が至るところから上がっていった。
「今まで育ててくれた親を殺すなんてどうかしている」
「お前こそが死んで償うべきだ」
「一度人を殺した奴はまた人を殺す。どうせああいう奴は人殺しゲームで一日中遊んでたんだろ」
そして死刑判決が下された。
身勝手な動機による犯行は情状酌量の余地なしと判断されてしまった。
間違っている!
世の中馬鹿ばかりだ。なぜ真実を見ようとしない。証拠は現場にたくさん残されていただろう。他に罰を与えるべき奴がいるじゃないか!
俺は何度でも心の中で言った。
俺は悪くない! こんなの絶対に間違っている! 俺はただ生きたかっただけだ。そのためには仕方がなかった。世の中がちゃんと見てくれれば俺は償おうとしたさ…………
……ああ、そうさ、俺がやったよ。
俺が殺した!俺が男女を殺してやった!
でもよう、こんなの間違ってるだろ。
俺はまだ死にたくないんだ。
だから誰か……誰か助けてくれよ……
そして死刑は速やかに執行された。
俺の弟は俺がなすりつけた罪で死んでしまった。




