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【書籍化】意味がわかると怖いお話・解説付き(370万PV達成!)  作者: 絢郷水沙


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冤罪

 俺の知ってる男女の子供が相当なクソ野郎だという。

 そいつは自分の親を殺したそうだ。

 そうニュースで報道されていた。

 でも俺はそいつをクソだとは思わない。

 世間ではそいつのことを酷く言っていた。

 だが考えてもみてほしい。

 その男女が子供に殺されるほどの恨みを買ってしまった、殺されても仕方ないほどの何かをしていた、そうは思わないのか?

 盲目的に殺人は良くないことだと決めつけて、そこに至る経緯(けいい)を考えずに断罪するのは大いに間違っている。


 そいつは虐待(ぎゃくたい)を受けていた。

 それは(ひど)かった。見るに耐えがたかった。

 飯もろくに与えてもらえず、自由を奪われ、精神を傷つけられた。

 自分の子供のことなのに何でそんなことできるんだ?

 赤の他人じゃないんだぞ。


 だから俺はその男女に一度問いただしたことがある。

「何で自分の子に手を出せるんだよ!」と。


 そしたらなんて言ったと思う?


「親に向かってなんて口の()き方だ!」

 だとさ。


 俺は悪くないと確信している。

 殺してなければいずれあいつらに殺されていた。あれは正当防衛だ。

 そうだ、絶対に悪くない。俺は悪くない。


 しかし世間はそう思っていないようだった。この事件が報道され一般に知れ渡ると、死刑を求める声が至るところから上がっていった。


「今まで育ててくれた親を殺すなんてどうかしている」

「お前こそが死んで(つぐな)うべきだ」

「一度人を殺した奴はまた人を殺す。どうせああいう奴は人殺しゲームで一日中遊んでたんだろ」


 そして死刑判決が下された。

 身勝手な動機による犯行は情状(じょうじょう)酌量(しゃくりょう)の余地なしと判断されてしまった。


 間違っている!

 世の中馬鹿ばかりだ。なぜ真実を見ようとしない。証拠は現場にたくさん残されていただろう。他に罰を与えるべき奴がいるじゃないか!


 俺は何度でも心の中で言った。

 俺は悪くない! こんなの絶対に間違っている! 俺はただ生きたかっただけだ。そのためには仕方がなかった。世の中がちゃんと見てくれれば俺は償おうとしたさ…………


 ……ああ、そうさ、俺がやったよ。


 俺が殺した!俺が男女(あいつら)を殺してやった!

 でもよう、こんなの間違ってるだろ。

 俺はまだ死にたくないんだ。

 だから誰か……誰か助けてくれよ……






 そして死刑は速やかに執行された。

 俺の弟は俺がなすりつけた罪で死んでしまった。





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