きりたんぽ鍋が食いたい
山で寝そべる二人の男。二人は夜空を見上げていた。そんな時、一人が言った。
「なあ、こんな時になんだが、しりとりでもしないか」
「あぁ……それは妙案だな。やろう」
「じゃあ、最初はお前からな。好きな言葉言っていいぞ」
「そうか。そうだなぁ……じゃあ、カレーライス」
「お、いいねえ。カレーかぁ……食いてぇなあー! っじゃあ俺は……スから始まる言葉で……すき焼き、なんてどうだ」
「ああ、いい。甘辛い醤油のタレが絡んだサシ入りの肉を、溶いた生卵につけて食う……。ありゃあ至福だよなあ……。もう一度でいいから食いたかったなぁ……」
「何言ってんだよ。何度だって食ったらいいさ。さ、お前の番だ。きから始まる言葉を言え」
「き、ね……。き……き…………きりたんぽ鍋が……食いたいなぁ……」
「鍋か……。そういえばお前の実家秋田だっけか」
「…………あぁ」
「じゃあ実家帰ってさ、いっぱい作ってもらえよ。久しく帰ってないだろ。お袋さん心配してるんじゃないか」
「…………そう…だな……帰らない……と……」
「そうだ、帰れ帰れ! さて、俺の番だな。べのつく言葉。べ……ベーコン! は「ん」がつくな。なし、今のなしなし。えっと、べ、だから……ベッド! さ、次お前の番だ」
「……」
「ド、から始まる言葉。思いつかねぇか?」
「…………」
「おーい、ここはベッドじゃないぞー。寝るなー」
「…………」
「おい、早く言えよ。お前の番だって」
「…………」
「おい、言えって……」
「…………」
「言えよ……言えって言ってんだろ」
「………………」
「だから言えつってんだよッ!!!」
「……………………」
「言ってくれよぉ……お願いだから……」
一人にしないでくれ……
その声は吹き荒れる雪の中へと消えていった。




