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【書籍化】意味がわかると怖いお話・解説付き(370万PV達成!)  作者: 絢郷水沙


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映画「スマホを落としただけなのに」感想。

 皆さんこんばんは。絢郷です。

 今週の投稿は筆者腹痛のためお休みし、かわりと言ってはなんですが映画の感想でも書いてみようと思います。


 その映画は『スマホを落としただけなのに』です。

 この映画は北川景子さん、田中圭さん主演のホラーサスペンスです。知らない方のために少しだけあらすじを書いてみようと思います。

 ――――物語は、田中圭さん演じる富田(とみた)(まこと)がある日、タクシーに携帯を置き忘れてしまうところから始まる。

 彼は降車後にスマホを落としたことに気づくが、取引先との大事な商談がひかえていたため仕事へと向かうことを優先させた。その後色々とトラブルはあったものの、なんとか商談を終えられ無事に帰社する。デスクに戻った富田はパソコンのメールを確認した。そこには恋人の北川景子演じる稲葉(いなば)麻美(あさみ)からのメールが届いていた。実は稲葉は、富田が携帯を落とした後にメールを送っていたのだが、既読がつかないことを不審に思っていた。そこで彼女は彼のスマホに電話をかけて見た。すると富田ではない知らない男が電話に出た。稲葉が眉を潜めながら「誰ですか」と問うと、男は「タクシーでスマホを拾った」と言う。そして「スマホを返すので、指定するカフェに訪れてください。店員に伝えて預けておきます」と言った。そして指定されたカフェを訪れた稲葉。彼女は難なく恋人のスマホを回収することが出来たのだが……その日から彼女ら二人の周囲で不審な出来事が起き始める。

 一方、とある山中で複数の若い女性の死体が埋められた状態で発見された。その死体は、野生生物が掘り起こし露出したものを、偶然山中に入っていた人によって発見されたものだった。彼女らの遺体には明らかな共通点があった。それは黒く長い髪の毛を持っていて、その一部が無惨に切り取られていたのだった。

 ちなみに稲葉麻美も長い黒髪を持っており、富田のスマホの待ち受けは彼女とのツーショット写真だった……。


 と言うことで、この後色々と恐ろしいことが起きていくのですが、書くのがとても大変なので見ておられない方はぜひ自分の目で鑑賞してみてください。

 では感想。

(以下、所どころネタバレがあるかもしれません)

 というわけで、まさしくこの映画は近代のホラーのひとつの極地にあると思いました。まず怖さの方向性が既存のホラーとは違います。今までホラーと言えば、幽霊やお化け、不可解で未知な現象と言ったオカルトを想像していました。ですがこの映画ではそういった類は一切出てきません。では何が怖いのか。その怖さの根源の一つは、ともするとその恐怖を自分も味わうかもしれないというものです。今やスマホは自らの分身と言っても過言ではありません。写真やメールアドレス、メモ帳に予定表、サイトの閲覧履歴からクレジットカードの番号、自らの位置情報などなど.……。これらが見ず知らずの他人に悪用されたらどうでしょうか。劇中でも富田はスマホを落としたことで、拾い主の犯人によって勝手にクレジットカードで買い物されたり、自分の意図しないメールを他人に送られたり、金を払わないとロックが開かなくなるウイルスを仕込まれたりされていました。


 皆さんは知り合いからメールが届いたら当然その人がメールを送ったと思うでしょう。しかし本当にそうなのでしょうか? 誰かがそのアカウントを乗っとり、成り済ましている可能性があるのではないでしょうか。そして劇中ではそれにより二人の関係は壊されてゆきました。

 これに関しては、決して他人事ではないと感じました。

 もしもある日突然、自分が使っていたSNSが乗っ取られてログインできず、さらには『あなたの恥ずかしい写真をばら撒きます』と脅迫されたらどうでしょうか。そして実際に自分のところには、その証拠となる拡散されたくない写真が送られてくるのです。この場面が映画の中にありましたが、自分に当てはめてみたときにぞっとしたおぞましさを感じました。

 スマホが普及した現代だからこその恐怖ですね。


 さて怖いと感じた点をいくつか挙げてみたいと思います。まず怖かったのは、犯人の正体です。


(ネタバレ注意。知りたくない人は下の✴︎✴︎✴︎まで飛ばしてください)


 これに関しては、彼女たちは少し軽率だったかもしれません。彼女はウイルスに感染した恋人のスマホを、自身のSNSで知り合ったセキュリティ会社に勤めるという男に会って見せることにしました。しかし彼女はここで疑うべきでした。いや、少なくとも詳しく調べるべきでした。そのセキュリティ会社はどんな会社なのか、その男は本当に信用できる相手なのか。会ったことも声を聞いたこともない相手に、初対面で自分の分身と言ってもいいスマホの中身を見せても良いのだろうかと。そう、まさしく犯人はその人物でした。彼のスマホの拾い主であり、一連の殺人事件の犯人だったのです。その男は用意周到にSNSのアカウントを作成して彼女に接近しました。男の目的は彼女に接触すること。そのために色々と彼女についても探っていました。富田のスマホから彼女のアカウントにたどり着き、交友関係や過去の出来事まで色々と探られてしまいました。


 そしてなのより怖かったのは、犯人役の成田凌さんの演技。

 彼女は自分のスマホが乗っ取られたときに、成田さん演じるセキュリティ会社の男――浦野善治に助けを求めました。浦野は過去に自分の恋人のスマホを直してくれた人物です。なので彼女はすでに安心しきっていました。そして彼に会った彼女は、そこで彼から飲み物を渡されます。飲み物ぐらい何も不自然じゃないですし、一度会っていて助けてもらったこともある人物です。そこに疑う要素はありません。彼女は普通にそれを飲んでしまいました。

 しかしそれが恐怖の始まりだったのです。彼女が飲んだそれには、睡眠薬が混ぜられていました。そして眠りに落ちるまでの間に、彼は自分が一連の出来事の犯人であることを告げました。今まで好青年を演じてきた化けの皮が剥がれ、欲望丸出しの喋り口調と、狂人ゆえの手の震えが現れる。それを知った彼女は驚き立ち上がった。強張って引きつった表情の彼女を、大きく目を見開いて見上げていた彼のあの顔。あれは見た瞬間に恐怖が掻き立てられました。私はそのとき、心の中でヒッと小さな悲鳴をあげていました。あの顔は恐ろしかったです。


 信頼していた人物こそが犯人だったときのことを想像してみてください。これ以上の恐怖はなかなかにないです。


 ✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎


 ということで、続いて怖かった点、というか驚いた点は彼女――稲葉麻美の過去についてです。


 稲葉麻美は恋人の富田誠から結婚を申し込まれていました。しかし彼のことを愛していた彼女だったが、とある過去の理由から彼と結婚することを躊躇っていました。なかなか言い出せなかったそんな時に、今回のような事件が起き、犯人によって自らの過去が明るみに出されてしまうのだが――。


(ここからネタバレ注意です。知りたくない方は下の$$$まで)


 富田誠の彼女、稲葉麻美は実は――稲葉麻美ではなかったのです。彼女の本当の名は、山本美奈代。何故美奈代は麻美のフリをしていたのか。本物の麻美は誰でどうなったのか、そのあらすじは以下の通りです。


 麻美と美奈代は大学生時代にルームシェアをしていました。麻美はその当時、株取引に熱中し、食事も疎かになる状況。そんな中で麻美は、美奈代に内緒で美奈代名義での借金をしてしまう。そしてその借金は大きく膨れ上がり、二人の生活を逼迫させる。貧しい生活と後がない状況から二人は神経をすり減らしていく。そしてある日のこと。麻美は線路に飛び込み自殺してしまう。それは美奈代を自分の不幸に巻き込んでしまったことへの贖罪。彼女は自殺する直前、美奈代の名前で「今から自殺する」と警察に通報していた。遺体は顔の判別が難しくなるほど酷く損傷。警察は美奈代が死亡したものとして処理。そして美奈代は整形し、麻美としての人生を送ることになったのです。


 さて、大まかなあらすじはこんな感じですが、いかがでしょう。これほどの過去ではないにせよ、我々もまた秘密にしたい過去の一つや二つは持っているものです。それが今の時代、いろいろな形で残されています。昔付き合っていた人のスマホの中には、もしかしたら自分の恥ずかしい写真がまだ残っているかもしれません。今回の彼女の場合、整形前に撮られたまだ美奈代だったときの裸の写真と、富田のスマホに入っていた今の裸の写真から、そこに写る黒子の位置で同一人物だとばれてしまいました。


 SNS上で他人に成り済まされていたという恐怖と、リアルで他人の人生を乗っ取っていたという恐怖、その構図が重なります。



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 ということで、感想のまとめ。

 この映画のタイトルは「スマホを落としただけなのに」ですが、少し補足すると「スマホを落として、狂った異常者に拾われたら簡単に破滅させられた」という感じです。

 この映画のような狂った人間に拾われない限り、そうそうあんなことにはならないと思いますが、しかし程度の差はあれ、悪意のある人間は身近に潜んでいます。個人情報を抜き取り、食い物にする人物なんてザラです。

 この映画は我々に、スマホに依存したこの状況の危険性を警告していると感じました。


 さて感想を書くということで色々と調べてみると、どうやら続編が公開されるそうです。







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