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贈り物2

翌日、私は、仕事へ行った。


仕事を何気なく、こなす。


少し、辛くなったら、左の薬指にはめた指輪を見る。


それだけで、彼がここにいる気がするから。


でも、時々、やっぱり、思ってしまう。


会いたいよ…


いつ、帰って来るの?


頭の中で流れる。


それでも、仕事に専念する。


今日は、意外と仕事に専念することができ、集中出来た。


時間は、なかなか、過ぎて行ってはくれなかった。


「永井さん、これ、お願いしてもいいかな?」


その声に振り返る。


すると、同僚の中村さんが私の目の前に立っている。


そして、束ねてある書類を持っており、私に向けている。


「…はい」


その書類を受け取り、目を通し、期限を確認する。


今やっている仕事を優先することにした。


パソコンと向き合い、仕事を続ける。


机の上に置いてある缶コーヒーを手にして、口に含む。


ふぅー


息を吐き、仕事を再開。


そんな繰り返しをしていると、


「お疲れ様でした」


私に声を掛けてきたのは、後輩の那美ちゃん。


「お疲れ様」


そう返すと、


「結菜さん、お先です」


彼女は、私を通り過ぎて行き、行ってしまった。


時計を見る。


既に、7時を示していた。


はーぁ


大きな欠伸をした後、ぐーんと身体をほぐし、机の席から、立ち上がる。


椅子を入れ、上司の元に行き、


「この書類、確認、お願いします」


「おー」


そう言い、書類に目を通し始める上司。


眼鏡を額のところまで上げながら、幹にしわを寄せながら見ている。


少しして、目を通し終えたのか、


「ありがとう、大丈夫だよ」


そう言い、書類を机の上に置いた。眼鏡を元に戻し、


「お疲れ様」


私の顔を見て、言う。


「お疲れ様でした」


お辞儀をしてから、そう言い、その場から去った。



仕事を終え、帰宅している道の途中のことである。


「あっあの…」


突然、肩を叩かれ、声を掛けられた。


その声に、振り返る。


その人の顔を見ると、全く、面識のない、知らない人だった。


「私ですか?」


「…はい…」


……


なかなか、口を開かない男の人。間が空いた。


私は、思わず、


「はい?」


間が空くが、私が口を開こうとすると、


「これ…」


箱を持って手を伸ばし、私に向ける。


え?


そう思いながら、


「何ですか、これ…」


そう聞くと、


「これは、あなたにあげます」


「え?」


戸惑う私。


強引に私に渡し、その箱を受け取ると、即座に、走ってその場を去って行った。


一人取り残された私は、呆然とした。


え?どうしよ… 何これ?


追いかけようとしたが既に、姿も見えなくなってしまっていた。


どうしよ…


ピンク色の包みに、赤いリボンの付いた細長い箱。


戸惑いながらも、私は、取り敢えず、家に帰った。



玄関のドアの鍵を開け、帰宅すると、


「只今…」


思わず、言ってしまう。


……


寂しい空間の中に静か過ぎる寂しい雰囲気。


少し、散らかった部屋。


部屋の奥の方へどんどんと入って行き、電気を付ける。


明かりが付いた途端、驚いた。


不思議ことが起こっていた。


テーブルの上を見て、目を見開いた私。


何故かと言うと、そこには…


テーブルの上には、夕飯が出来ていて、食卓が並んでいるのだ。


不思議だ。


え?え?えー?


呆然とした。言葉を失う。


なっなんなんだ…?


何が起こってるの?


戸惑いを隠せない。


お茶碗は、伏せてあり、おかず達が並んでいる。


箸もきっちりと、箸置きに用意されている。


レタスに、ミニトマトに、ツナ缶のツナ、アスパラも載っているサラダ。


醤油のいい香りがする生姜焼き。ほうれん草のごま和え。


まだ、出来たはがりなのか、湯気が出ている。


……


その光景に捉われていると、手に持っていたスマホが鳴り始める。


その音に、私は、はっとする。


手に持っていたスマホの画面を見ると、


"元気か"

"ちゃんと、仕事に行けてるか"

"あんまり、無理するなよ"

"ちゃんと、ご飯、食べたな"

"それと、暫く、連絡も出来なくなるから…ごめん"


メールだった。


彼からのメールである。


テーブルの上に用意されてある夕食を見て、席に着き、少しずつ、口へ運んで行った。


「美味しい…」


食べ始めていると、目に入る。


私は、ふと、テーブルの上に置いた、面識さえない男の人から、受け取った箱を開けて見る。


箱を開けると、驚いた。


「こっこれ…」


思わず、口から溢れる。


彼がいつも首にぶら下げていたブレスレット。


え?え?


なっなんで…あの人が持ってたの?


そのブレスレットの中を開けて見た。


私と彼が写った写真が入っていた。


私は、胸の辺りで、強く、両手で握った。


「まだ…」


どこにいるの?


何をしてるの?


いつ、帰ってくるの?


頭の中に次から次へと流れ、出てくる。


「でも、なんで、これが…」


お風呂に入り、布団に入った。


そのブレスレットをその夜、ずっと、握り続けていた。


寝ようと目を閉じようとすると、スマホの鳴り、画面が光る。


思わず、咄嗟に、スマホを手にする。


"お知らせです

明日、丸の内公園に来てください

隼人より"


……


帰って来るの?


会えるの?


会ったら、まず、最初に、何を言おう…


いつまで、待たせるんだって、怒っちゃうのかな?


それとも、何事もなかったかのように、


"お帰り"


って言えるのかな?


色々な気持ちや感情が、込み上げて来る。


早く、明日にならないかな…


心臓の音が突然、少し早くなる。


早く、会いたいな…


ドキドキとし始める。


……



気が付いたら、


ブレスレットをそのまま、手に握りながら、眠っていた。



私は、その夜、夢を見た。



車が道路を通っていく音だけがだんだんと遠のいて行き、少し、空いたカーテンの隙間から、月の光が一部を照らしていた。

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