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「第三次攻撃隊発進せよ」

第二次攻撃隊発艦に続いてミッドウェーからの攻撃隊の帰艦収容後、第三次攻撃隊の準備が始まります。

午前8:55 利根四号機より入電 

「敵雷撃機十機 貴方向へ向かう」

利根四号機からの入電に記されている雷撃機は間違いなく敵空母から発進したものと判断されるが位置が不明な為司令部に不安をもたらしただけとなり、報告した通信士が叱責された様な気分になっている。

とにかく第三次攻撃隊の編成を急ぐのと見張りを強化し防空体制を厳にするしかない。


午前8:55 第八戦隊阿部弘毅司令官より 発信

「宛 連合艦隊司令部 本文 敵空母部隊アリ 赤城被爆 二航戦 航空戦ノ指揮ヲトル」

この報告電をみた後方を進撃中の山本五十六連合艦隊司令長官と幕僚達は、一航艦が敵空母出撃を認識していなかった事実を知る。

当事者は責任回避の言い訳を探しその布石を始めそれ以外の人間は二航戦の活躍を祈るしかない。


午前8:57 第二航空戦隊山口司令より 第一・第二航空戦隊に発光信号

「敵空襲チカイ第三次攻撃隊発進準備イソゲ」

利根四号機からの情報に今にも敵機動部隊の艦載機による雷爆同時攻撃が襲ってくるのではと

二航戦司令部の緊張度は最高潮に達していた。

各母艦の航空参謀は無駄と知りつつも格納庫、飛行甲板を駆け回り汗だくになりながら攻撃準備中の整備員、兵器員、搭乗員達を叱咤激励し、艦長は「見張を厳にせよ」との指示を発した。


午前8:59 蒼龍二式艦偵機より入電 

「当該海域ニ敵影ナシ 周辺索敵ス」

蒼龍から出た二式艦偵が利根四号機が計画どうりに飛行し敵艦隊発見の報告電を入れたと思われる海域に到達したのだ、これで利根四号機が当初の索敵計画どおり飛んでいなかったことが明確となる。

その理由が解明されるのは戦後になってからだ。


午前9:01赤城より 発光信号

「応急修理完了飛行作業回復」

「攻撃隊発進準備完了 発進指示コウ」

作戦可能飛行機 二八機(艦上戦闘機十一機 艦上攻撃機十七機)

先のB26A艦橋突入により草鹿参謀長以下一航艦司令部幕僚と青木艦長以下艦幕僚を含む二三名が戦死、南雲長官ら二一名が負傷を負った攻撃からようやく「赤城」の発着艦機能が復旧した。

当初火災鎮火後速やかに戦線復帰可能かと思われたが、炎上した飛行甲板の修復作業に思いのほか手間取り約二時間を要し戦闘中の応急処置についての今後の戦訓となった。

一時は艦橋直下の操舵室も被害を受け操舵長以下戦死負傷が相次ぎ操艦不能となり危機的状況に陥ったが、増田正吾中佐以下生き残った幹部の機転でなんとか予備艦橋での操舵に切り替え、敵機の攻撃を回避し続けることに成功した。


午前9:16 利根三号機より入電

「敵機動部隊発見 空母ミユ 」

午前7:40山口司令の命により発艦した、三座の零式艦載水上偵察機が先に二式艦偵が発見した敵空母を捉えたのだ、二航戦司令部ではあらためて二式艦偵の俊足ぶりに気づかされるとともに最初から運用しなかった事に対しての偵察軽視と敵空母はいないという思い込みから来る漫心と油断を恥じていた。

事ここに至り敵機動部隊が複数活動していることが決定的となった。

重くなる「飛龍」艦橋内の空気を換えるべく

「おまえらまだ負けた訳ではないぞ反省は勝ってからにしろ! 第三次攻撃隊準備はどうか?」

山口司令官が首席参謀に大声で問いかける。

攻撃準備の進捗が思わしくない様なら赤城隊のみ第一波として出撃させるべきか逡巡する。

首席参謀の伊藤中佐は第一次攻撃隊の帰艦からまだ一時間たらずの現状では、各母艦ともようやく攻撃兵装の取り付けが始まったばかりで、現時点では「赤城」の艦攻中隊と各母艦とも艦爆が一個小隊ほど出すのが精一杯で敵に対して有効打と成り得ないとして正規の攻撃隊編成をもって第三次攻撃を仕掛けるべきとの意見を述べた。

ちなみに正攻法による第三次攻撃隊は約九〇機ほどの編成となるが空襲下の兵装作業を勘案すると後一時間半を要し出撃は十時半以降と見積もられた。

猿の腰掛に座りながらも落ち着きなく貧乏ゆすりをしていた加来艦長は即座に

「直ぐに攻撃させましょう!五月雨攻撃での多少の犠牲は致し方ありません。」と身を乗り出してくる。

山口司令官は首席参謀 伊藤中佐の教科書どおりの意見は参考にはするが自分の直感を通すことにした。

すなわち「現状点での攻撃可能兵力で第三次攻撃隊を編成出撃させる、敵は直ぐにやってくるぞ!いそげ」

「第三次攻撃隊発艦後は攻撃準備が成った機から順次敵艦隊を攻撃せよ」との指示をだした。

今敵襲を受けたら攻撃隊の魚雷、爆弾が誘爆し大惨事となるそうなる前に一機でも多く敵艦隊を攻撃させたい。

司令官の意を汲んだ航空参謀の橋口少佐が 早くも伊藤中佐のところに第三次攻撃隊の編成案を持ってきて状況を説明し出した。

司令官は進むべき道を示すだけ。

あとは優秀な司令部参謀が為すべきことを為すべき相手に正確に伝え進捗を確認すれば良いのである。

いかにトップの決断が大事であるか二航戦司令部はじめ飛龍艦橋にいる人々は改めて感じていた。


午前9:18第二航空戦隊司令より 利根三号機 宛

「敵空母ノ数シラセ 攻撃隊ヲ誘導セヨ」


午前9:20第二航空戦隊司令より 各空母 宛 発光信号

「第三次攻撃隊発進セヨ」

 飛行機 六三機(零戦二一機 九七式艦攻二四機 九九式艦爆十八機)

「飛龍隊」零戦五機 九七式艦攻四機 九九式艦爆四機

「蒼龍隊」零戦四機 九七式艦攻三機 九九式艦爆五機

「赤城隊」零戦六機 九七式艦攻十七機

「加賀隊」零戦六機 九九式艦爆九機

総隊長(艦攻) 村田少佐(赤城) 戦闘機隊 板谷少佐(赤城) 艦爆隊 小川大尉(加賀)

この時加賀の雷爆兵器員は搭乗員と協力してわずか30分の間に九九式艦爆九機に25番対艦用徹甲爆弾の爆装作業を完了させた。


午前9:20 第二航空戦隊 旗艦 空母「飛龍」艦上

「搭乗員整列!」と艦内スピーカーが飛龍艦内に響き、飛行甲板上で愛機の試運転に立ち会っていた者、艦橋や搭乗員待機室で敵情や今後の展開を議論していた者達が駆け足で集まって来る。

艦橋からも友永隊長と山口司令官自らが降りて来る。

友永大尉以下艦上攻撃機、艦上爆撃機、護衛の零戦搭乗員達が艦橋下部の飛行甲板に整列した。

第一次、第二次攻撃時と比べ整列した搭乗員も少なく出撃準備中の飛行甲板も閑散として悲壮感すら漂う雰囲気である。

その中で山口司令官自らが敵空襲が懸念されるなか小さな壇上に上がり訓示を始めた。「本日二度目の攻撃になる者は誠にご苦労である。朝からの敵空襲を勘案すると敵は我らを打ち破るべく島と空母の全力で待ち構えており、敵空母はいないと考えていたのは我らの驕りであった。しかし敵空母が出てきた以上今作戦の骨子のとおり敵空母を撃滅する。

本官は敵空母三隻と刺し違える覚悟であり、人殺し多聞丸と言われたのはこの日のためである。どうか諸子には必ず敵空母を撃滅してもらいたい!諸子の武運を心より祈る」と発動機の爆音と風に負けず劣らずの大声で訓示し全員を見渡し敬礼を行った。

その時の山口司令官は阿修羅の如き凄まじい形相であり搭乗員達はその訓示に息を飲んだ。特に血気盛んな若い搭乗員達は海軍航空隊に入隊以来厳しい訓練に明け暮れ夢にまで見た敵空母攻撃に参加できると勢い込んでいたが、山口司令官の刺し違えてもとの悲壮な決意を聞き、敵空母の撃滅は自分達に託されており、その全軍の期待に応えるべく気持ちを引き締め直したのだった。


間もなく発着艦甲板指揮官が「発着配置につけ!」を下令、搭乗員達が一斉に自分の愛機目指して散らばり搭乗機の傍らで分隊ごとに集まり最終の確認を行う。「いよいよだ今回は生きては還れない」「絶対に敵空母を沈めてやる!」山口司令官の激烈な訓示を聞き多くの搭乗員が覚悟を決め、慌ただしく愛機に乗り込み発艦開始を待った。

「飛龍」からの発進機数は零戦五機と出撃準備が間に合った「赤城」所属を含めた艦上爆撃機四機、艦上攻撃機四機のわずか十三機二五名であり攻撃隊隊長は友永大尉である。

「赤城」所属の機は、本来「赤城」青木艦長の命令が無いと動けない立場であったが緊急時ということで攻撃隊に組み込まれた。

また友永大尉の乗機はミッドウェー島への第一次攻撃時に左翼主燃料タンクに被弾して修理工場で応急修理中であり、一次攻撃隊帰還機から無傷の機体に乗り換えての出撃となった。ミッドウェー島攻撃時と同じく隊長機の電信員を務めることになった村井定一飛曹は隊長機を示す黄色地に赤色三本線が尾翼に描かれて無いことに気付き寂しく思ったが、今回は強襲で敵戦闘機が待ち構えている中に突入するのに隊長機の標しは良い目標になってしまうと考え直し次の攻撃時には必ず本来の隊長機BⅡ-130号機で出撃できる様に願った。

この決死に近い第三次攻撃隊搭乗員の選出は各空母の飛行長が各分隊長に指示してその下の掌飛行士が中心に編成割りを行ったが苦渋の決断であり、搭乗員待機室の黒板に編成を書き出していくと直ぐに廻りを搭乗員達が取り囲んだ。特にこのMI作戦が初陣という若い搭乗員も何人か搭乗割りされており顔面蒼白となり観念する者がいる傍らで、水平爆撃響導機の搭乗員などは今後の為と搭乗割から外され掌飛行士に出撃を懇願する場面が見られた。

僅かな機数での五月雨攻撃となる第三次攻撃隊は電探で待ち受ける敵戦闘機の攻撃を突破し熾烈を極める対空砲火の中に突入するという生還の可能性が極めて低い出撃であり、無事に戻って来れるとは見送る方も考えておらず最後の別れになると感じていた。

第三次攻撃隊は、正規完全編成ではないがとりあえず敵艦隊に向け出撃することができた。はるか以前に出撃した米軍艦載機の攻撃隊は迷走しておりそろそろ燃料残量が気になり出す頃です。果たしてどちらの矢が先に相手に刺さるのか。

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