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ピンポーン。
誰も居ない家でインターホンが鳴る。モニターが自動的に起動して、そこに一人の男が映る。
「これは、私が実際に体験したお話です」
ピンポーン。
その音は、まるで出ないと何か良くないことが起こるような、出てしまったら最後、もう逃れられないような不安感を煽る。
「はいはーい、今出ますよっと」
俺は寝転んでいた身体を起こしてインターホンの画面を開く。画面に映っていたのは紺色のスーツを着た、二十代くらいに見える女だ。顔は俯いていて見えず、首元は赤く濡れていた。
「これは、私が実際に体験したお話です」
俺が何も言わずに見ていると、インターホン越しに話し始めた。
私はとある会社の営業に所属していました。
ひたすらに足で数を取る仕事で、私の携帯には幾つもの電話番号が並び、名刺の数はもはや数えることすら億劫でした。
ある日、知らない番号から電話がかかって来ました。そんなことよくあるものですが、その電話は他とは明らかに違っていました。
電話番号が、おかしいのです。
普通電話番号なんてのは、080や090。070なんかも最近はありますが、その番号は、000から始まっていました。
その日は連勤の最終日。3コール以内に出ろと常々言われており、疲れていたのもあって、反射的に電話を取りました。
「ユキジマエナカさんのお電話ですか?」
聞こえて来たのは、男性のくぐごもった声。
大抵、電話に出ると同時に、相手は自身の名前と所属を名乗ります。
ただ、それを省略されることもあります。ですが、この程度で腹を立てていたら営業は出来ません。私は精一杯の元気を込めて話しました。
「はい! ユキジマです! ご用件はなんでしょうか?」
「ありがとうございます。それでは向かいます」
「はい?」
何度か聞き返しても、その言葉を最後に電話の主は事切れたように黙ってしまった。
悪戯電話だったのだろうか? だとしたら、何で私の名前を知ってるの?
何だか不気味で、もう切ってしまおうか。そう思って携帯から耳を離した瞬間です。
シャリン、シャリン。
金属の擦れる音。
シャリン、シャリン。
一定の間隔で鳴り、まるで不気味な怪物が舌舐めずりをしているみたいに聞こえて、
「もう、切りますね!」
私は思わず電話を切ってしまいました。
ただ、おかしいんです。電話を切っても聞こえるんです。
シャリン、シャリン。
私の背筋をゾッと冷やす金属音が。
この音は携帯から鳴ってるんじゃない。私の近く、真後ろで鳴っているんだって。
「ご清聴、ありがとうございました」
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