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崩れた連携
「勇者様、下がってください!」
ミリアの声が響く。しかしユウトは動かない。
「うるさい、今いいとこなんだよ!」
焦りを隠すように、無理に攻撃を続ける。その結果、周囲の連携は完全に崩壊した。
騎士たちはカバーに回るが、敵の動きに対応しきれない。
「ぐああっ!」
また一人、倒れる。
本来なら守るべき仲間が、足手まといのように感じ始める。
(なんで邪魔するんだよ……!)
その思考が、すでに致命的だった。
敵の一撃が、ユウトの頬をかすめた。
血が流れる。
それだけのことなのに、心臓が強く跳ねた。
(……当たった?)
今まで一度もなかった感覚。自分が“攻撃される側”になるという現実。
「どうした、勇者。顔色が悪いぞ」
余裕の声。遊ばれている。
ユウトは歯を食いしばり、さらに魔力を引き出す。
だが、その動きはどこか雑だった。
初めて、“勝てないかもしれない”という考えが頭をよぎる。




