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「っ、優樹!!」





その時、正面から名前を呼ばれて顔を上げたら、今一番会いたい人がそこにいた。





「っ、いおりさん…伊織さんっ!!」

「優樹…だいじょーぶ?」

「ひっ、ぐ…っいおりさんっ、なんでっ…?」

「予備校、今日休みになったから、優樹に会いたくて、迎えにきた」

「っ、ひぅっ…うぅーっ」

「どーした?なにかあった?」

「ぼく、ぼくっ…」

「うん?」

「ぼくっ…すきに、なりたくなかったっ!」

「………」

「そ、したら…っ、ともだちの、ままだった、のにっ」

「うん、」

「こん、なっ、みじめなおもい、っしなかったのに」

「うん、」

「ぼく、ぼくのせいでっ…、ぼ、くがっ、すきに、なった、せいで…っ」

「優樹、それはちがうよ」

「っ、」

「優樹のせいじゃないよ」





伊織さんは、ただただ優しく抱きしめてくれて、背中を撫でてくれて、優しい声で、僕の心を溶かしていく。





「あの日、あの入学式の時に、優樹が泣いてなかったら、俺たちは出会えなかったんだよ」

「っ……」

「優樹が、幼馴染くんのことが好きだったから、俺は優樹に出会えたんだよ」

「………」

「だから、その気持ち否定しないで?」

「…ひっ、ぅ」

「優樹、好きだよ」

「いお、りさっ…、」

「好きだよ、優樹」

「ぼ、ぼくっも…すき、っです」

「うん」






◇◆◇






あれから一年。

伊織さんは無事に、S大に合格して、僕も無事に、S大に入ることができた。

晴人と友哉とは、一切会うことはなかった。

風の噂で、2人が別れたとは聞いていたけど、もう僕には関係ない。

友哉を好きだったことに、後悔はない。後悔してしまうと、伊織さんと出会ったことも否定することになってしまうから。

きっと、僕が友哉を好きになったのは、伊織さんと出会うための過程だったんだ、と思うようになった。





「ゆうきー!」

「伊織さん!」

「会いたかったー!」

「ぅぐっ、」





この4月から、僕は伊織さんと共に同じ大学へ通う。

通うために、大学の近くに引っ越すことにしたんだけど、伊織さんから「一緒に住まない?」と言われ、伊織さんの住むマンションに引っ越すことになった。





「荷物少ないね?」

「はい。あまり物持ってないので」

「ミニマリスト?」

「いえ。無駄なものが嫌いなだけです」

「え、それをミニマリストって言うんじゃないの?」

「ちがいます」

「ちがうんだ?」

「ちがいます」

「ふふ。そっか。ちがうのか」





僕には好きな人がいた。

その人を好きだと気づいた時にはもう遅くて。

好きな人には思い人がいた。

苦しくて、つらくて、悲しくて。

そんな思いを溶かしてくれた人がいる。

それが、今僕が大好きな人。僕の、好きな人。






END






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