第20話
「そんな……」
エリスが呆然とした面持ちで呟きを漏らす。王宮はゴウゴウと燃え上がり、消火など不可能なことが一目瞭然。もしもまだ王宮内に人がいるなら、命あって出てくることは叶わないだろう。それほどの勢いで火は燃え上がっていた。
「エリス様!」
エリスを呼ぶ女性の声が聞こえる。そちらの方に顔を向けると、フードで顔を隠した人を連れた女の人がこちらに駆けて来ていた。
「アリア! 無事だったか」
「はい。……ですが、私以外の部隊は全滅してしまい……申し訳ありません」
アリアはエリスに深く頭を下げる。エリスはその頭を上げさせ、ここで何が起きたのかをアリアに訊いた。
アリアはいつもの様に王女を影から護衛していると、突如王宮内で爆発が起こったとのこと。それと同時に背に黒い翼を生やした、書物に書かれた悪魔そっくりの集団が王宮を襲撃してきたらしい。すると、応戦しようと出てきた兵士や特殊部隊の多くに異変が起きた。味方同士で攻撃しあったのだ。俺たちが戦争の前線で見てきた状況と同じように。
「――それから私は、カテリーナ姫を連れてここまで逃げてきた次第です」
アリアは後ろに佇む人を見ながら言う。
……つまり、顔は見えないがその人は王女だということか。
俺の問いにアリアは静かに頷く。
「味方同士で攻撃しあう原因とその影響を受けない人がいる理由はわかりませんが、とにかくここを離れるべきです」
アリアは切羽詰まった表情でエリスに訴える。
「えぇ、そうしたいけど今現在、逃げる場所なんてどこにもないのよ……」
「そんな……」
異世界に召喚された俺は、かつてないピンチに見舞われていた。
1分間の読書、ありがとうございました。
また明日の18時に会えることを願っています。




