求婚と下賜
騒動が完全に収まり、エトワール王国にいつも通りの平穏が戻った数日後。
王太子夫妻は、前代未聞の問題に頭を抱えていた。
「あのさ、みんな。魅了魔術の後遺症とかないよね?」
「うん、ないね」
「前々からユフィーレ殿下に少しずつ惹かれていたんだよ」
「だからわしに、ユフィーレ殿下を下賜してくれ」
「いや、僕に」
「ううん、僕に下賜して」
三人とも、大真面目にユフィーレへの愛を唱え下賜を嘆願している。
真面目で国のことばかり考えていたはずの乳兄弟兼側近たちのその熱量に、ノアはどうするのが一番いいか悩んでいた。
一方で、アリスは安堵していた。
ノアの心が、ユフィーレに傾いていないことに。
(私が大丈夫と言った婚姻ですが…これほどお三方に求められるユフィーレ様です。ノア様のお心が傾かなくてよかった…それもこれも、徹底してノア様との接触を避けてくださったユフィーレ様のおかげですね)
「アリス…俺どうしたらいいかな」
「そうですね…まずユフィーレ様のお気持ちを確認しないと」
ノアとアリス、オスカーとニコラとマリユスの五人で、ユフィーレの気持ちを確認しに離宮に行くことになった。
「…ほ、本当に三人の誰かに下賜されるおつもりですの?」
「嫌だったらしないけど…どうする?」
「え?いや、えっと、その…嫌ではないのですけど」
「じゃあ、誰に嫁ぎますか?」
ユフィーレはノアとアリスの提案に悩ましそうに眉を寄せた。
「…その、正直言ってオスカー様もニコラ様もマリユス様も魅力的すぎますし、仲良くしてきた日々もありますからこの場で選べと言われても…」
「なら期限を設けてそれまでに決めて貰えばいいさ」
「ユフィーレ殿下の決定なら素直に応じるからさ」
「今のうちに悩んでおいてや」
「そ、そんなこと言われましても…」
ユフィーレがタジタジになる中、オスカーもニコラもマリユスも引かない。
「君は僕の作った箱庭で幸せに甘やかされていればいいんだよ」
「貴女のためなら、なんだって用意するよ?」
「わしはユフィーレ殿下のためなら、世界一幸せな花嫁にすると誓える!どうじゃ、少しは心が動いたか!?」
「う、うう…三人ともとても大切なお友達ですの…れ、恋愛対象として見られるかはもうちょっと時間を置いて考えさせてくださいな…!」
ユフィーレが押さえ込まれ気味だがギリギリ待ったをかけるのを見て、ノアとアリスは微笑ましげだ。
「誰を選ぶか決まったらいつでも言ってね!」
「期間を決めるのもユフィーレ様にお任せします!」
「丸投げではありませんの!!!」
ユフィーレの叫びは虚しく響くだけだ。
幽閉されて静かに暮らす筈だった「悪女」は、国を発展させ国の危機を救ったことで…三人の男たちから熱烈に求められる逆ハーレムルートに強制的に落とされてしまったのだった。
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