王太子の新たな婚姻
エトワール王国。
この世界でも有数の軍事大国、かつ経済大国で領地も大きい。
その王太子は今年十八歳になるノア。
人を惹きつける魅力を持つ青年で、真っ直ぐな誠実さから国民に愛される。
そのお人好しなノアの代わりに憎まれ役、黒い仕事を引き受けるのは乳兄弟三人。
宰相候補として父から直々に仕事を教わるオスカー、若くして宮廷魔術師となったニコラ、近衛騎士長を担うマリユス。
三人のサポートで、ノアの治世は安泰と言っていい。
また王太子妃となったアリスも、お人好しで実直な子だが精一杯ノアを支えていた。
ノアとアリスのラブラブなお話は有名で、城下町でも毎日語られるほど。
しかし、そんな夫婦を引き裂くかのような依頼が同盟国からもたらされる。
「我が国の皇女を、エトワールの王太子の第二妃として引き取っていただきたい」
シエル皇国。
エトワール王国の同盟国であり、軍事経済ともにエトワールに匹敵する実力を持つ国だ。
確かに、同盟国同士で婚姻を結ぶのは政治的には有りだ。
しかしノアはアリス以外は愛せない。
悩むノアにアリスは言った。
「お気になさらないでください、ノア様。大切な同盟国のお願いですから」
ノアも、アリスの覚悟に動かされた。
愛するのは、アリスだけ。
しかしユフィーレという第二妃も、家族として温かく迎え入れよう。
仲良くなれたら、アリスとも仲良くしてくれたらいい。
そう思い受け入れた。
…面白くないのは、むしろノアの気持ちをよく知るオスカーやニコラ、マリユスの方だ。
「愛し合うノア殿下とアリス殿下を引き裂くなんて、馬に蹴られたいのかな」
「だよねー!僕が幻術でその姫様をおかしくしてあげようか?」
「わしが切ってやってもええきに。異国の血が入ったわしを受け入れたノアのためなら、わしはなんでもやってやる」
しかし三人の憤りなど関係なく、婚姻は無事結ばれた。
ユフィーレがノアに嫁いできたのだ。
結婚式や披露宴はユフィーレの希望でやらなかった。
書類上は夫婦になったが、まだ顔も合わせていない。
三人はノアより先に、ユフィーレを迎え入れる。
ノアとアリスは出迎えたいと言ったが、どうしても公務の都合上無理があったのだ。
…というか、オスカーやニコラ、マリウスが日程調整をわざと難しくさせたのだ。
三人はユフィーレに対して冷たい空気を向ける。
しかし、冷ややかな視線を浴びたユフィーレは事も無げに言った。
「聞いていらっしゃるとは思うけど、私妹を虐げた意地悪な姉で悪女なの。だから形だけ妃ということにしてさっさと幽閉された方がよろしいわ」
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