表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新米魔法使いの生きる道 その2  作者: GANON


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/10

石炭掘り

「山から資源が採れるようになった。新資源の石炭というものだ」

「ああ。石炭ね。アタシたちの国へ売るんでしょ?」

「そうだ」

「どういうものか知ってる?」

「そこまでは知らないが、高く売れる資源だと聞いている」

「ふぅん」


 ソファーに座ったギルド長が何やら火のついた棒を口にくわえている。

 煙の出ているそれ。棒の大きさは人差し指より少し大きいくらいだ。

 なにやらそれから発される甘い、お菓子のようないい匂いが部屋に充満していた。


「その山で採掘中に魔物が現れたそうだ。大きな口のある芋虫だそう」

「ふぅん? そいつを駆除すればいいのか?」

「ああ。その通りだ。依頼料は―」





「ねえねえアイフェ、あれはなんだったの?」

「ああ葉巻? 初めて見た?」

「葉巻っていうの? すごいいい香りだったね」

「いろんな香りがあって、たぶんいい匂いが出るように染み込ませてあるんだ。すごくいい値段するよアレ」





 いつもの通り準備して馬車で南へ。

 たどり着いた町の外れの山の入口。

 すごいムキムキの体格をした男の人たちが、全身を真っ黒にしながら山から荷物をどんどん運んでいた。


「この奥なんだわ」


 作業所の事務所、一階の大部屋に通された。私たちと話しているのはここで一番偉い親方さん。

 地図で指をさした場所は、洞窟の入口から歩いて10分くらいの場所らしい。


「ここを掘っていたら、何か魔物のようなものが出てきて、掘り出した1人が死んだ。そこはすぐに封鎖したが、けが人はいくらか出た。それを何とか討伐してほしいっちゅう依頼だよ」

「その魔物はどんな姿でしたか?」

「すごく大きい芋虫が一匹だと。皮膚は固く、つるはしによる攻撃はダメだった」

「なんだろうなぁ。カタピラーかなぁ?」


 こういうときに頼りになるのはアイフェの知識。


「カタピラー?」

「アイアンキャタピラーともいう。アタシの国ではカタピラー。よくしなる体のくせに皮膚が固いんだよ」

「それで、どうやって倒すの?」

「こいつ火に弱いんだけどなぁ。遺跡とかによくいるのは燃やして終わり。でも石炭の採掘所でそんなことやったら全部なくなっちゃうし」

「じゃあどうするの? つるはしが効かないなら剣も効かないんでしょ?」


 作業所の親方さんを含め、ウンウンと5人みんなで話し合っても対策が決まらなかった。


「剣もダメ、火も使えない。じゃあ氷は? 水は?」

「口はあるんだけどねぇ。窒息はしないと思うよ」

「生き物じゃないの?」

「生き物っちゃあそうなんだけど、呼吸はしてないと思う。たぶん。魔法によって動いていて、どうして人間を襲うのかは不明」


 こんなときに高度な魔法剣が使えれば倒せる可能性がある。

 昔、一緒に仕事をしていたセローさんはよく魔法による切れ味の強化をしていた。

 これが結構高度な魔法だったようで、私もアイフェもまだ使うことができない。





「嬢ちゃんたち、そこの木には気を付けな。ヤケドムシがついてら」

「ヤケドムシ?」

「そうだ。触るとやけどしたみてぇにビリビリ痛くなる」


 親方さんが指さしたところの木には白い毛虫がついていた。


「ここいらの山にたくさんいてな、駆除しようにも手袋がいる。俺たちゃだいたい手がデカイからそういうの向いてなくてよ。宿舎にもでて、まあ困ってんだ」

「じゃあアレだね、別に依頼してよ! あたいたちがやるからさ」

「いいよ~、ヨアンナちゃん。君たちはマジメそうで仕事ができそうだから」





「アイフェ、このヤケドムシって使えないかな?」

「毛の毒を使うっていうの? う~んどうだろう? そもそも毒が効く生物なのか怪しいんだよ」

「も~、じゃあどうすればいいんだよ!」


 町の宿に戻ってからも相談は続く。

 ふと私は思いつく。


「ねえ、切る必要はないんじゃない? ヨアンナの剣に衝撃を強化する魔法を使おうよ」

「あ、それいいかも! 普通はハンマーとかに使う魔法だけど、たぶん有効打になるよ」


「でも一個問題があって、たぶん魔法を使おうとすると反応するよ。だから2人で一緒に唱えて、どっちかがヨアンナかミナの武器を強化できればオッケー」


 翌日、作戦を親方さんに伝え、埋めた坑道を掘って開けてもらった。

 奥に進むこと数分。

 それはいた。

 銅色をした体長2mくらいの芋虫。でっぷりと太った見た目で、こちらはまだ見つかっていないようだ。もっとも見るための目はついていないようだが。


「いくよ!」

「うん!」


「この者の武器は全てをこ―!」

 

 杖を取り出し、2人で詠唱したが私の方が唱え終わる前。

 魔法の詠唱を感知したらしいアイアンキャタピラー。

 前に居たヨアンナとミナにぶつかってどかし、私の方に突撃してきた。

 とっさに杖を捨てて防御したが、おおきな口に右腕を噛まれてしまった


「たす―」


 全部言い終わる前にヨアンナが走ってきて力ずくで引きはがしてくれた。

 防御した右腕の皮膚が口に吸われ、無理やり引きはがしたから毟られた。血が出てとても痛い。


「ミナ! チェルを連れて外に!」

「わかった!」

「ヨアンナ! 魔法が効いたよ!」





「・・・・・・ミナ、ありがと」


 ヨアンナとアイフェを残して外に向かった私たち。

 ミナの肩を借りて、無事にアイアンキャタピラーのテリトリーから逃れたようだ。

 ミナはポーチから止血用の布を出して、私の腕の傷口付近をきつく縛った。

 

「念のため、毒消しを塗るから。ちょっと滲みるけど我慢してね」

「っ―」


 傷口に軟膏が塗られる。

 鼻の奥がツンと痛くなり、頭がクラクラするような痛みが腕から走る。

 グッと涙をこらえる。


「おうい、倒したぞぅ!」

「今治療中!」


 ヨアンナの声が洞窟内に響いてくる。

 ミナも負けじと声を張って返事をした。

 アイフェが駆け付けてくれる。


「へぇ。傷の治り方が違うや」

「何が?」

「その薬と、アタシの国の治癒と」


 ミナが傷口にヒールポーションを振りかけてくれたので、痛みがだんだんと引いてきた。

 普通に喋る余裕が出てくる。

 かわりにすごく体がだるくなり、お腹が空いてきた。


「これは治るのを高速にしてる。アタシのところの奇跡は逆に戻してる」


「お腹が空いたり、気分悪くなるのは体が無理やり治してるからだと思う」

「へ~。・・・・・・ヨアンナ、悪いんだけどおんぶしてくれないかな?」

「チェルはほんと体力ないな~」


 そういいながら武器をミナに渡し、背中を向けてしゃがんでくれた。

 女性にしては大きな背中に身を預け、坑道を後にする。


「じゃあ、レイチェルはゆっくり寝てな。アタシたちであとはやっとくから」

「あ、杖拾っておいて」

「わかった」


 ベッドに横になる私。

 アイフェとの相部屋なので、宿のドアがギィとしまってカチャリと鍵がかけられる。

 お腹が空いてはいるが、それよりも睡魔が襲ってきた。

 眠気に任せて目を瞑った。

 長い夢を見て、起きたら深夜だった。


(めちゃくちゃお腹空いたんだけど、もうどこもやってないよね?)


 月明かりがアイフェの寝顔をてらしている。なんの悩みもなさそうな穏やかな顔だ。

 小さなサイフを荷物から引っ張り出し、部屋から出てみる。もちろん鍵はかけた。


(あ、ご飯食べられそう!)


 2つ先の通りに明かりが見える。

 たどり着いたそこは、山で作業する人向けのご飯屋さんだった。

 入口のスイングドアを開けた。


「いらっしゃ―こんな時間にどうしました?」

「あ、お腹すいちゃって」

「ウチ、働く男向けメニューで大盛以上しかないんですけど、少な目で出します?」

「あ~、どうなんだろ?」

「お、嬢ちゃん、大盛で頼んでけ。残ったら俺たちがもらうぜ」

「じゃあ大盛で!」


 テーブル席には山で働く男の人たちが集まっていた。

 そう言うことなので通常のメニューで注文する。

 まず大盛フライドポテト。大盛サラダ。顔以上に大きいサイズのプレーンピザ。


「ねえちゃん年は?」

「19です!」

「お、酒飲むかい? これで俺たちもっと仕事ができるし、今日は飲み代くらい出すぜ」

「じゃあ、ちょっとだけ」


 結局、私は数時間男の人達と一緒に呑み、日が昇りかけたころに宿へと千鳥足で戻ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ