久しぶり!
リアクションとかしていただけるとモチベーションにつながります。よろしくお願いします。
完結までは失踪しません!
アイフェは無能力異世界転移はただの海外旅行だった。修正版から来ています。
前作、新米魔法使いの生きる道と併せて読むとわかりやすいですが、どちらも読んでなくても問題ありません。
私はレイチェル・デクスター、19歳。
少し前までは駆け出しの魔法使いとしてギルドに所属せず、何でも屋でいろいろな仕事に関わらせてもらった。
しばらくセローさんとジェスタさんという何でも屋の2人と活動したのち、今は冒険者ギルドで簡単な仕事をしつつ、魔法使いの集会で魔法を研鑽をしている。
変わったことは私の仕事だけではない。
去年、王都のすごく西側にある地域から魔王軍が消滅し、新たに国交が開かれた。
そちらの国とは私たちの常識と何もかもが違った。
結局、1年の間に色々なものが統一され、ほとんどが私たちの国の基準となった。
まず、私に一番身近な魔法。
あちらの国では魔石と呼ばれるものを介さないと、色々なものを操れなかったようだ。
「あ、おはようアイフェ」
「おはよーレイチェルー」
私たちのところに魔法を学びに人がたくさん来た。
そのうちの1人のアイフェと私は仲良くなった。
アイフェのほうが歳は少し下みたいだが。
彼女も国では私と同じようにギルドに所属、魔法協会という集団にも所属していて同じような境遇のようだ。
「眠い~」
「おいおい~ちゃんと受けろよ~、レイチェルは学費払ってるんだからさ~。アタシたちはタダで教わってるけど~」
アイフェは整った顔に肩くらいまでのウェーブのかかった茶髪で目の色は青。
朝から魔法の講義だった。
知らなかったことも学べて楽しいけど、昼間は大体暇だし自由だった何でも屋での生活とは全く違う。
やっぱり集団で色々やるのは慣れない。
(3人くらいでなら苦手じゃないんだけどな)
「そういえばアイフェの下着、私のとは全然違う感じだね?」
「確かに。レイチェルの国では下着も麻なんだ?」
集会では基本的に普段着ではなくローブを着ることになっているので、更衣室で着替えていた。
アイフェのほうを見て気になったのだ。つやつやとした綺麗な下着が。
「それ見たことないけどなんてやつ?」
「シルクっていって、たしか虫から採るんだったかな」
「虫!? 蜘蛛の巣みたいなやつを編むの?」
「う~ん、たしか幼虫の繭だったと思うけど。詳しくないや」
「聞くだけだと、なんか肌に悪そうだね」
「そんなことないけどなぁ。今度国に戻ったらレイチェルのも買ってくるよ」
「ほんと! ありがとー」
着替えを終えて、2人で講堂へと向かう。
既に講堂には10人くらいの老若男女の魔法使いが席についていた。
今日の講義は傷の治癒についてだ。
「基本的に冒険者は、傷はこの薬、もしくは魔法で傷を癒すのが普通だ」
私は何度かお世話になったことのある、ガラスの小瓶に入っている緑色の薬だ。
通常は傷口へと薬を振りかけて使う。傷口は時間を戻したように治る。
「この薬、ヒールポーションは国から支援金が出ており、各薬屋で非常に低価格で購入できる。具体的には1瓶につき100ゴールドまでと定められている」
「はい。質問いい?」
「どうぞアイフェ」
講師の偉い魔法使いへと、アイフェが手を挙げて質問をした。
「私たちの国では治癒は魔法使いのやることではなく、神へと仕える神官のやることだったけど? こちらでは神への祈りはないの?」
「えーと・・・・・・そうですね。そもそも私たちには神への信仰というのがよくわからない文化ではあります。少なくともミファメル近郊では治癒は斥候や魔法使いのやることです」
「では、魔力があれば呪文を唱えることで傷を治せると?」
「そうです。できます」
アイフェは難しい顔をして考えこんでしまった。
少し考え込んだのち、
「わかったよ。ありがとう」
「では続きにいこうか」
そうして講義は再開した。
「レイチェルはさあ、治癒の魔法って使えるの?」
「ううん。傷が治るところがイメージできなくてできないの」
「じゃあそれさえできれば治せる感じなんだ?」
「たぶんね」
「う~、アタシにはできる気しないけどなぁ」
講義が終わったあとにアイフェに聞かれた。
「そのうち料理で手を切ったときにでもやらせてよ」
「私、基本料理しないけどね?」
「ああ、そうなんだ」
何でも屋で外に出ていたときに手伝いをする程度で、私の料理の腕は決して良くない。
セローさんの料理が上手すぎて、わざわざ私が手を出すことがなかった。
そして家の近くに食堂があるため、お腹が空いたらそこへ行くだけで、お金さえ出せば食べたいものは自由自在に出てくる。
「アイフェ、何その恰好!?」
「へ? 合羽じゃん」
翌日の雨の日。アイフェは見たことのない服を着ていた。
私の知らない合羽だ。皮のゴワゴワした合羽ではなく、とてもツルツルで柔らかい素材でできていた。
しかも水を全く通す感じがしない。生地の隙間がないようだった。
「ちょっとも漏れないじゃん!」
「コレ、ゴム合羽っていうんだけどレイチェルのとこにないの?」
「無い。傘だって高級品だし、皮の合羽だよ」
「そうなんだ? まぁ確かに一般流通のゴムってちょっとお高いんだけども」
「そもそもゴムって何さ?」
私はアイフェから出た、聞いたことのない単語に疑問をぶつける。
「・・・・・・そういや窓にも馬車にも使ってないね? あ~じゃあこっちでは流通してないんかな~」
「だからゴムって何さ?」
「えっとね、木の樹液なんだけど、色々やると、こんな感じで水を通しにくいんよ」
「コレって木から採れるの? 樹液って虫が集まるやつでしょ?」
私はアイフェの合羽を擦りながら聞く。見た目は全く継ぎ目もないけど、スベスベでもなく独特の触り心地だ。
「熱に弱いのが課題なんだけど、だいぶ改善してきたんだよね」
「へぇ。もし安かったらそのうち私のも買ってきてよ」
「いいよ。なんなら作れるかも」
「ホントに! 雨の日嫌いだから助かる~」
「まあ雨はヤだよねぇ。服重たいし」
雨の日に生地の多い魔法使いの服が重たくなるのは各国共通の認識らしかった。
「アタシの国でもそうなんだけどさ、なんで魔法使いってこういう服なんかな? レイチェルのとこでも、絵本とかの魔法使いってこの服でしょ?」
わりかしダボっとしているフード付きローブのことだ。
私は普段着として麻のシャツに短いスカートやズボンもはくけど、年がら年中この格好をしている魔法使いも割と多い。人によっては本当にこの1着しかないんじゃないかというくらい。
もちろんこれには理由があって、魔法を使用することへ集中するために常に慣れた同じ恰好でいる、というものだ。
嘘か真か、大魔法使いは仕事前数日間に下着すら換えないらしいと言われるほど。
「そうだと思う。どこの本でもローブ着てるよ」
「やっぱりそうなんだな~」
講義を2つ、計3時間受けて近くの食堂へ。
昼食を済ませ、今日はこのあと午後の講義は無かった。
「あ、ちょっと用事があるんだった。書類だしてからギルド行くから先に行ってて」
「わかった。じゃあ後でね」
アイフェといったん別れ、徒歩で10分ほど雨のあがった石畳の街中を歩き、
「こんにちは~」
「ようレイチェル。今日も仕事は無いよ」
「そっか~」
挨拶を返してきたのはヨアンナ。ヨアンナ・タール。
ここは冒険者ギルド『竜の吐息亭』。
タミテンカの街で最も小規模なギルドだ。
セローさんの何でも屋が解散になったあと、私は念願だった冒険者というものになった。
そして、このヨアンナは私たちパーティのリーダー。ストロベリーゴールドの長髪に釣り目。
背の高いヨアンナは私より1つ年上で、剣と盾を扱う戦士だ。
「はい姉ちゃん。こっちはウチの分~」
テーブルに合流してきたのはミナ。ミナ・タール。
ヨアンナの妹で18歳。姉と違って少し小柄だ。こちらもストロベリーゴールドの髪をポニーテールに結っている。
私たちのパーティの1人。
この3人にアイフェを加えた4人が私たちのパーティだ。
ちなみにミナの役割は斥候。使う武器は小回りの利く短剣。
私たちが仲間となって2か月。
いくつかの仕事はしたものの、どれも何でも屋時代の仕事と比べれば大したことのない物ばかりだった。
「にしてもさぁ、あたいたちは薬草取りじゃねぇっつーの。レベル20の中堅に頼むなっての」
「あはは・・・・・・」
私は小さく笑いを返す。
そんなことを言ったら、レベル27になる私はけっこうスゴイことになる。
私はレベルこそ高いものの、まだ3年ちょっとしか活動していない。
ヨアンナは4年目らしいので圧倒的にベテランのはずなのだが、その割にレベルは低かった。
ちなみにこのギルド『竜の吐息亭』にはレベルによる制限というものがあり、10レベルに達していないと入ることができない。
もっともこの街で一番敷居の低いギルドですらこれなので昔を振り返ると私がどれだけ世間知らずなことをしたのかがわかる。
「ウチもはやく20レベルになりたいなぁ。そうすれば受けられる依頼も増えるのに」
「まぁ焦らずいけばいいさ。ミナはまだ18歳だしな」
ミナのレベルは17。
ここにいないアイフェは私たちのカードと違い外国のもので、なんと書いてあるか読めなかったが24ほどだと言っていた。
これで全員合わせたレベル平均が22なので平均20以上推奨という依頼は受けられる。
しかし、ミナの17レベルで全員が20以上というものは受けられない。
「ところでアイフェは?」
「なんか用事だって。書類がどうとか」
「大変だねえ、留学生っちゅうのも」
「あ、あなたたち暇? ちょっとお使い頼める?」
「んあ? いいよ」
「猫を探して欲しいんだけど。見つけて連れて帰ってきて」
「またガキの使いかよ~。いくらくれんの?」
「200かな」
「まあやろうか。ビール代くらいにはなるしな。特徴とかは?」
「茶色と黒が半分ずつくらい、皮の首輪にウリメルって名前が入ってる」
「ほーい。ミナ頼んだ」
頷いたミナは足音もなくテーブルから離れ、どこかへ消えた。
このように暇な人に契約書すらなく"お使い"が頼まれることはギルドに所属しているとよくある。
ひとまずミナの裏の情報網を駆使し、ある程度情報を得てから足を使って捜索した方がよいとヨアンナは判断したようだ。
「姉ちゃん、情報料で10ゴールド取られた」
「はいよ。200から引く」
こうして、自分たち以外の人を使うとお金がかかるという社会の仕組みがよくわかるのがギルドのお使いだ。
かといって全部自分で見つけて解決するとなると効率が非常に悪い。
「猫だまりが資材置き場にできてるって。そこから探してみよう」
資材置き場は街の端にある。とにかく遠く、ギルドからは歩いて30分ほどの場所だ。
「遠くね? チェル見てきてくんない?」
ヨアンナは私のことをチェルということがある。
まあヨアンナのほうが年上だし、特に抵抗はないので好きに呼んでもらっている。
「じゃあウチもいくよレイチェル」
「あ、ありがとう。じゃあ見てくるね」
戻ってきたミナと一緒に資材置き場へと向かう。
「ごめんねレイチェル。遠いのに」
「いいよ~。これでもお仕事だもん、任してくれるっていうことは信頼されてるってことだしね」
そこからミナと雑談しながら30分歩き、資材置き場に到着した。
ここは街の端。通用門の近くだ。
木材や石材に金属管がそこかしこに積まれ、なにがしかの工事をする際にここから持ち出していくようだ。
そして、猫はいっぱいいた。パッと見10匹以上。
「この中にいるのかな?」
「どうだろう。見える感じだと白と茶の猫ばかりみたいだけど」
捜索すること20分くらい。
「いた?」
「いなそう」
と私たちがここにはいないと判断し、帰ろうとしたとき。
「あ! この子じゃない!?」
ちょうど今、猫の輪の中に入ろうと入口から入ってきた猫に首輪がついていた。
色も茶と黒だった。
「ちょっと失礼」
ミナがさっと近づき、さっと持ち上げる。猫はまるで抵抗せず持ち上げられた。
「あ、この子だ。ウリメルって書いてある」
「よし! 連れて帰ろう」
ミナが猫を小脇に抱え、私たちはギルドへと戻った。
「いたよ~」
「お、でかしたチェルにミナ。お~い猫見つけたってよ!」
カウンターの奥に声を掛けるヨアンナ。
出てきた受付嬢のイザベラが猫をチェックした。
「わずか3時間で見つけてくるなんて・・・・・・やるじゃない!」
「そりゃあウチらもプロですからね!」
「はい200ゴールド」
2枚のお札がヨアンナに渡される。
イザベラはカウンターで書類の記入作業に入った。
「もしかしてアタシも貰えんの?」
テーブルに合流していたアイフェがそんなことを言う。
「んなわけないでしょ。あ、でもあたいもなんもしてないわ。どうする? ミナとチェル半分ずつでもいいよ」
「じゃあ情報料を引いた190を半分で、95ずつ。姉ちゃんたちには夕飯をおごるってことで」
そのあとはめぼしい仕事の依頼も張り出されず、2人に夕飯をおごって解散になった。




