表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご褒美婚賜ります  作者: 桃巴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/49

ご褒美婚おまけ4

 コソコソ

 コソコソ


 深夜に蠢く人影。

 抜き足差し足で目的の部屋へと到着した。

 ドアノブに手をかけて、息を殺して周囲を窺う。

 誰もいないことを確認し、ドアノブをゆっくり回した。


 カ……チャ……


 小さな音だけにとどめられ、ホッと息を吐き出す。

 ソーッと部屋に入り、ソーッと扉を閉めた。


『フッフッフッフッ』


 闇夜に不気味な笑い声。


『ご褒美ちゃあーん、(クラリス)が来ましたよー』


 クラリスは当初過ごしていた冷遇部屋で、静かなスキップを踏む。

 主部屋に移動してからは、この部屋は使わなくなったが……クラリスは、ここ最近密かに訪れていた。

 この部屋に、ご褒美を隠していたから。

 ボロカーテンからさし込む月明かりを頼りに……衝立ての奥へ、ベッドの下に、その鞄を引っ張り出す。

 あの超特大ドレスが入っていた鞄を。

 中身はドレスからご褒美に変わっているが。


『ウフフ、何食べよっかなー』


 パカッと開いて、ご褒美を眺める。

 全て、アレクから貰ったご褒美の甘味だ。

 アレクが約束通り『甘い結婚』を実行してくれている。

 その甘いご褒美を、レオの目を盗み、コッソリこの部屋に隠しておいたわけ。


『深夜の甘味(やしょく)は止められないわあ』


 クラリスはどれにしようかなー、と指をさして楽しむ。

 誰にも知られぬ至福のひとときである。


『バタークッキーにメレンゲクッキー、ひとくちチョコにチョコチップクッキー、飴ちゃんとキャラメル、琥珀糖と本日の新入りは……』


 クラリスは持参した包み紙を開く。


『金平糖』


 長持ちする甘味を、この部屋にため込んでいた。

 そう……どんぐりをため込むリスのように。

 空のガラス瓶に琥珀糖を入れて並べる。

 鞄の中には、ガラス瓶に入れたご褒美が並んでいる。

 クラリスにとっては、宝石以上の価値があった。


『そうだ、今日は全制覇食べにしよう』


 クラリスはそれぞれの甘味を一つずつ取って、ハンカチの上に並べてみた。


『う〜ん、眼福眼福』


 クラリスはひとくちチョコに手を伸ばす。

 と、そこで視界にそれが映った。


「ヒッ!?」


 二本の手に驚く。

 伸ばしたクラリスの手の横にもう一本、ヌーと現れたから。


「ゆ、幽霊!?」


 クラリスは恐る恐る手の(ぬし)を見る。


「母上」


 可愛い子ちゃんが、目をキラキラさせてクラリスを見ていた。


「アルト!?」


 アルトがクラリスに抱きつく。

 アルトのコッソリ行動は、クラリス以上に上手なようだ。この部屋に最初にたどり着いた時に似ている。


「僕に秘密なんてズルいですー、母上」


 上目遣いのアルトに、クラリスはウッと喉を鳴らした。


「僕だって、お腹空いたよ。剣の鍛練すると夜中にお腹が空くんだもん」


 アルトがお腹を擦る。


「そうよね」


 クラリスはアルトの頭を撫でた。


「このご褒美鞄は内緒よ」


 クラリスは自身の口元に人さし指をあててみせた。


「母上と僕、二人だけの秘密?」


 アルトの瞳がワクワクを隠せない。

 クラリスはウンウンと頷いた。

 さて、この日からリスがもう一匹増えたわけ。




 だが、その秘密も長くは続かなかった。

 リスが二匹に増えて、一カ月後……バレてしまう。


 バッターンッ!


「なぜ、私も仲間に入れぬのだ!」


 アレクが騒々しく登場したからだ。

 クラリスとアルトの体がビクンと跳ねた。

 身を寄せ合う二人の背中を、アレクが見つめる。


「今まで大目に見てはいたんですが、流石にこれ以上は陛下に内緒にできませんので、報告させていただきました。夜食のせいで、朝食を残していますから」


 アレクの背後からレオが二人に声をかける。

 どうやら、最初っからレオにはバレていたようだ。


 モグモグ

 モグモグ


 二人が振り向いた。

 リスのように両頬が膨らんだリスクラリスとリスアルトが。

 今日のご褒美キャラメルポップコーンを口いっぱいに頬張っている。


「ブッハッ」


 アレクが噴き出した。

 

「ご褒美は没収します」


 無情にもレオがご褒美鞄を回収する。

 クラリスとアルトはガクッとうなだれる。

 二人の秘密の甘味(やしょく)はこうして終わりを迎えた。






 コソコソ

 コソコソ


「ねえ、母上。次の秘密はなんにしますか?」


 アルトがクラリスの耳元で囁く。


「ウフフ、そうね。なんにしようかしら」


 クラリスは茶目っ気たっぷりの瞳でアルトに身を寄せる。

 仲良しの母と子はまた何やら企んでいるようだ。

 そんな二人の仲睦まじい様子を、アレクが羨ましそうに眺めている。


「だから、私も仲間に入れてくれよ」


 拗ねたように言って、アレクが二人に加わった。


 コソコソ、ヒソヒソ

 キャッキャ、ウフフ、クックックッ


 親子三人の様子を、皆が微笑ましげに見守るのだった。




 



 

2026/8/20

一迅社文庫アイリスより

『ご褒美婚賜ります』出版となりました。

読者様に感謝を。


桃巴。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ