異世界生活の始まり⑵
(しかし、まいっなー。30分歩き続けたのに、ここが森の中としか判らないなんて……。)
俺は、莉沙の手前平静を装っているが、少し焦りはじめていた。普通、異世界転移の漫画なら、それと判る手がかりなりが、そろそろ見つかるはずなのに、そういうものがない。というか、無さすぎる。
人や魔物や精霊やらとの遭遇はおろか、小鳥?の囀ずる声は時々聞こえるが、姿は無く、鳴き声以外の音がしない。何か変だ。勿論、俺の直感がそう思うのであって、これといった確信が在るわけではない。今のところ、身の危険を感じる事が無いのは、幸いではあるけれど……。
「莉沙、ここの空気上手くない?何か、人里離れた自然公園みたいな……。」
俺は、自分の不安をまぎらわす様に、莉沙に話しかけた。
「確かに!加寿にぃ、何か身体か元気になる感じ。こう胸一杯に、空気を吸い込んで、……???加寿にぃ!今、私の胸凝視してなかった?」
そう言いながら、莉沙は少しはにかむ様に胸を僕から隠した。
「ばっ!そんなに、見てないよ!」
「あー!そんなにって、やっぱり見てたんだ。加寿にぃのエッチ!」
(参ったな~。でも、莉沙のあの仕草可愛いな~。って、俺は何考えてるんだ。)
「おいおい、エッチは無いだろう?中学生になって、多少は胸らしくなってきたけど、俺がエッチな気持ちになる程大きく無いだろ……!!!」
(あれ?莉沙、怒ってる???もしかして、今、俺、莉沙の地雷踏んだかな?)
中学生になりたての莉沙の胸は、多少の膨らみはあっても、エッチな事を想像させる程には、まだ成長しておらず、俺からすれば、エッチ呼ばわりされるのは心外なのだが、莉沙は自分の胸の大きさにコンプレックスを感じているのか、胸に関するキーワードに、多少過敏な反応を示したりする。
「加寿にぃ!あたしの胸が何だって!」
そう言うと、莉沙は、僕の方を睨んだ。俺は、莉沙から目をそらしながら、莉沙に弁明する。
「いや……。何、莉沙が、エッチなんて言うから、ついつい…」
「ついつい!何よ!」
「……ゴメン!莉沙の胸が少し大きく成ったみたいだなぁって考えたのは、悪かった。でも、妹の成長をかんじた兄の気分であって、エッチな考えじゃないから……」
そう言って俺が莉沙の顔を見ると、莉沙は少し顔を赤くして無言でいる。(あれ?莉沙どうしたんだ???)
「知らない!加寿にぃのエッチバカ!」
そう言うと、莉沙は俺に背を向けてしまった。
(まいったなぁ。向こうを向いてしまったら、莉沙の表情が読めないよ。でも、今の莉沙の言い方は、少しやさしかったな……)
とっ、その時俺達がもたれていた木に、強い震動が起こった。
「なに?」
莉沙が叫んだ。
「判らない。でも、直ぐ逃げられる様に、立ち上がろう。」
そう言って、俺は莉沙に注意を促した。
「解った。」
莉沙は、俺にそう返事を返すと、俺に真似て直ぐ立ち上がった。少し緊張した面持ちになった莉沙は、俺の背中に寄り添う様な姿勢になり、小さな膨らみを俺の背中に押し付けてきた。
(こんな時、不謹慎かもしれないが、莉沙の胸思っていたより膨らんでるな~。いかんいかん、平和ボケしている場合じゃない!)
俺は、気を引き締め直して、辺りを見回した。しかし、さっきの震動以降は、何も無かった様な静寂さが、俺達の回りに戻ったようで、俺の危険を感じる直感も、働いてこない。
(あの震動は、何だったんたろう。)
「莉沙」
そう声をかけて、振り返ると、少し緊張した面持ちの莉沙が俺を見つめていた。
「加寿にぃ、さっきの震動、何だったんだろう?」
「俺にも判らないけれど、取り敢えず、大丈夫そうだな。」
「そう。なら良かった。でも、少し緊張したからか、加寿にぃ!疲れてきたよ。」
「そうだな、莉沙!俺考えたんだけれど、このまま、先へ進んでも、何て言うか……、何か見つかる気がしないんだ。これから、このまま、進んでも、何も見つからず暗くなったら、何となく危険にも思えるし……」
「そうだね。」
「どうだろう。俺達が初めに気が付いた辺りへもどってみないか?」
「うん!良いよ。」
俺達は、今来た道を戻ることにした。




