グー、クローゼットの中にひきこもる
フランは、突然いなくなったグーを必死で探すが、夜になっても見つからない。温泉宿の中はもちろんの事、天空城の方も探したが姿が見られず、不安感で胸が痛くなりだす。
(どこに行ったのかな?、探していない場所は、う~ん、…………………まさか、ドラゴンの姿で飛んで行った!?。どうやって探したら、…………そうだ、探索魔法があった!!)
グーが見つからない事に動揺して、探索魔法の存在を忘れていたフランは、思い出すとすぐ行動に移った。
(ネコマ、チェンジ!)
「探索魔……」
「先輩~~!!、見つかりましたかーーー!!」
探索魔法を使用する途中で、ポランが手を振りながら、猛然と走って来る。
「いや、まだ見つかっていない。これから、探索魔法で探すから大丈夫」
「あの、私に心当たりがあるんですけど?」
「本当に?、何処なの教えて!」
案内されて向かったのは、ハヤが服と下着作りの作業小屋にしているログハウスだった。
ポランに外で待っているように伝えて、小屋の中に一人で入っていく。中は真っ暗な闇に包まれていたが、ネコマの姿をしているので夜目がきくため、はっきりと見えた。
「グー、僕だよ!。いるなら返事をして」
返事はなかったが、部屋の中を見回すとクローゼットの前に、大量の服が乱雑に置かれていたので、気になり近づくと、微かに泣き声が聞こえる。
「…………グー、怖がらなくていいんだよ。何も心配しないで、出て来てくれない?」
「……………………………………」
「ヤーサはもちろん、ポランやみんなが心配しているよ?」
「……………………………………」
「扉を開けてもいいかな?」
「……………………………………ダメ」
説得に時間が掛かると判断したフランは、ポランの元に行きヤーサに伝言を頼む。
「ヤーサに、見つけたけど説得に時間が掛かるから、グーの事は僕に任せてお母さまの相手を頼むからと、伝えて欲しい」
「あの、グーさんは大丈夫?」
「クローゼットにひきこもって、出てこない。無理に出したら可哀想だし、ゆっくりと出て来るのを、待つしかないかな?」
「そうですか、…………………あっ、良い物がありました!」
ポランは服の中から収納袋を取り出すと、ごそごそと何かを探し出す。やがて、収納袋から革袋の水筒を取り出すと、フランに差し出してきた。
「この中にグーさんの大好きな、大滝のワインが入っています。喜ぶと思いますから、渡してください」
「ありがとう、すごく助かる」
革袋の水筒を持ってクローゼットの前に行くと、相変わらず出て来る気配が無い。
「ねえ、大滝のワインを飲まない?。ポランから渡してくれと、頼まれたんだ」
「…………………」
「グー、初めて出会ったときに、『嫌なことがあったら、大滝のワイン飲まないと、やってられない』と、言っていたよね。だから、ワイン飲もうよ」
しばらくすると、クローゼットの扉が少し開いて、グーの細い腕が出て来たので、革袋の水筒を手渡すと受け取った後、すぐに手を引っ込めて扉を閉めた。
「グーが落ち着くまで扉の前にいるから、出て来るの待ってるね?」
「…………………」
返事はないが、ぴちゃぴちゃとワインを飲む音が、静かな部屋に響く。
「…………………昔、何があったのか知らないけど、今は僕が傍にいるよ?。安心して」
「…………………」
「海竜王がいじめるなら、僕がビシィーー!!、バシィーー!!と、引っ叩いてやるから大丈夫!!。海竜王?、僕は真竜王ですから、けちょんけちょんにしてやるよ!」
フランがわざと明るい声で笑いながら話すと、クローゼットの中から控えめな笑い声が聞こえてきた。
「…………………ありがとう」
その後しばらくすると、クローゼットの中から寝息が聞こえてきたので、フランは安心して扉の前で眠りにつく。
翌朝、太陽が昇り朝日が眩しいころに、グーが恥ずかしそうに出て来る。赤く腫れた目を見られたくないのか、うつむいて話しかけてくる。
「…………………ごめんなさい」
「気にしないでいいよ、もう大丈夫?」
「うん。ねえ、…………………いつも傍にいて助けてくれる?。わたしを置いていかないでね?」
「グーの方こそ、今回の様に僕を置いていかないでね」
グーと共に笑いあっていると、慌てたブリムが部屋に飛び込んできた。
「大変です!!。ムーチャシー様が早く来るようにと、呼んでいます」
明日の6月23日は、すみませんが、お休みさせていただきます。
6月24日に、次の更新をします。
次回予告
「先輩、大変です!!。ツンさんが倒れるまで掘ったトンネルの奥に、人工的な壁が発見されたのです」
「どういう事、オリハル鉱山に横穴のトンネルを、掘っていたんだよね?」
「つまり、山の土中から人工的な壁が見つかったの?」
「はい!、もしかしたら地底人かもしれないですよ?。それとも、未知の地下ダンジョンかも」




