過労で大変な竜王
遠くからでも目立つ黄金竜は、ものすごい速さでオリハル鉱山に飛んでくると、フランとヤーが待つ地上に降り立つ。
人の姿に変身したムーチャシーがよろめきながら、フランたちに近づいてくると、ヤーサは驚きの声を上げそうになり、慌てて口を手で押さえた。なぜなら、瘦せこけた頬、ぼさぼさに乱れた髪、目の下にはおおきなくまがある母の姿は、まるで別人の様だったから。
「…………ヤーサ、体の調子はどうですか?」
「私の事よりも、お母さまの方が心配です。何があったのですか?」
「…………少し仕事量が多くて、過労気味なだけです。この程度で倒れる程、私は弱くないですから心配要りません」
「仕事量が増えた原因は、呪い竜の対処をするため?」
「…………ええ、そうですよ。呪い竜の後始末が予想以上に大変で、………今日ここに来たのは、希少鉱石を貰うためですが、採掘は行いましたか?」
「鉱石なら沢山あるから好きなだけ渡すけど、何に使うか説明してくれる?」
「…………………簡単に説明すると、海竜王に支払う賠償金です。遅くなると問題が悪化するから、すぐ帰らないと、鉱石はどこ?」
ぐったりした母から海竜王の名前が出ると、ヤーサは殺気立ち目を吊り上げる。
「お母さま!、急ぐ必要はありません。遅れた事でミーナが文句を言うなら、私が怒っていると伝えてください。『本気で』怒っていると」
「ねえ、ヤーサは海竜王と知り合い?、詳しく教えて」
「旦那様、後で話しますから。それよりも、温泉宿を作ってくれませんか?」
「お母さま、温泉でゆっくりと呪い竜の話を聞きますから、いいですね?。嫌なら、鉱石を渡しません」
母が苦笑いをしながら頷くと、ヤーサは安堵した表情を浮かべて、温泉宿を早く作る様に催促する。
「ヤーサ、せっかく温泉宿を作るのだから、他のみんなも誘ってもいいかな?」
「はい、わかりました。今日は仕事を休んで温泉に入るよう、皆に伝えておきますね」
前回と同じ様に、みんなが極上の温泉宿で楽しく過ごす中、人払いをした足湯スペースで母とヤーサ、グー、フランがくつろいでいた。
「お母さま、今回の事を詳しく教えてください。マージに怪我を負わせた奴は、どうなったのですか?」
「ツークシーから、呪い竜の事を聞いてすぐに討伐に向かったけど、逃げるのが上手くて発見に手間取ってしまったのよ。発見した時には、二つの国が壊滅していた…………………」
「ドラゴンとして、統治している国や、保護している種族を滅ぼされるのは最大の屈辱!!。絶対に奴を倒すと意気込んで追いかけたら、海竜王のなわばりに逃げ込んだのよ。それで……」
「ミーナのなわばりに入った呪い竜が暴れたので、賠償金を払えと言って来たのね?」
「ええ、その通り。海竜王のなわばりでも相当被害が出たらしく、『責任は全て黄金竜にあるのだから、賠償金を支払え。嫌なら、全面戦争だ』と、脅してきたのよ」
「お母さま!!、私がいる限り負けはありません!。全面戦争がしたいなら、相手になります!!」
「それは分かっている。しかし今回は、賠償金を払う方がいいのです。迷惑を掛けたのは事実だし、ヤーサに無理をさせたくない」
母とヤーサの間に気まずい雰囲気が漂ったので、話題を変えるためにフランが話しかける。
「ヤーサ、海竜王について教えてくれない?」
「旦那様、…………………海竜王の名前は、ミーナ・シーネバ。会話不可能な性悪暴力バカ女ですよ」
「えっ!、そうなんだ」
「グーと同い年生まれなんですけど、子供の頃から暴力的でグーをいじめていたのですよ。そのせいで、グーはひきこもり気味になったんですから」
「もちろん、後で私がいじめ返してやりましたけど」
「そうだったんだ、…………………あれ?、グーがいない!」
「!?、旦那様、ミーナの事を聞いて怯えて逃げたと思うから、グーを探してあげて。多分、狭くて暗い所に逃げ込んで震えているから、早く探して!」
フランが慌てて探しに行くと、心配そうにしているヤーサに母が、小声で話しかけてくる。
「ヤーサ、今回の件は人為的に引き起こされているようです」
「えっ!」
「呪い竜や、暴れて手に負えないドラゴンを封印した、『竜封石』を知っていますね?」
「はい、知っています。…………………まさか、壊されたのですか?」
「残念ながら、竜封石が破壊されて、今回の呪い竜が復活したようです」
「そんな、あれはドラゴンでも壊せないのですよ?、誰がどうやって壊したのですか」
ヤーサの質問に母は考え込んでから、ため息を吐く。
「…………わからない」
次回予告
「ねえポラン、グーを見かけなかった?」
「いえ、見かけていませんけど」
「どこに行ったのかな」
「先輩、私に心辺りがあります!」
「本当?、教えて!!」




