229話 堕天使へのプレゼント
高打点を記録した響は、再び地面に足をつけた。
「っひ、響殿!!」
「気にするな、俺は特に何もしてないさ」
鼻につくセリフを決めた響に、美神は冷めた目でデコピンを放つ。
「全然届いていなかったではないか、ほんとに何もしてない時は何も喋らない方が良いぞ」
今日の美神はやけに辛辣だ。ツッコミ役がいないとカメレオンのように七色にジョブチェンジできるのだろうか。
「っあ!猫ちゃん向こう行っちゃった!」
「ほら、響殿行くのだ!」
響たちはそれから馬車馬のように東奔西走駆け回り、途中でティータイムを挟みながら、ようやく追い詰めることに成功した。
「っはぁ…はぁ…観念しろデブ猫!」
「あの体躯でこのスタミナを持ち合わせているとは…下界のケルベロスは伊達ではないな」
それでもまだスタミナのあるらしいデブ猫は、建物の裏に隠れてしまった。
ここまで来たら逃さないと、響たち三人は思い切り飛び込んだ。
「いちにさんしっ、にーにさんしっ。おや?まぁ、三人お揃いでどうされたんですか?」
「永流お姉ちゃん!?なんでここにいるの!?」
一人、ラジオ体操をしていた永流は、不思議そうに首を傾げる。
「なんでここにって、ここ病院の敷地内ですよ?」
そう言われるとやけに見覚えがある。
「まぁ、こないだのにゃんこちゃん、また会いに来てくれたんでちゅかー?」
先程まで逃げるばかりのデブ猫は、永流の足元に擦り寄ると、怠惰な腹を広げ『撫でろ』と言わんばかりに喉を鳴らす。
「っふふ、ここがいいんでちゅかー?ここですか?それともここっ?」
「永流って猫に赤ちゃん言葉使うタイプだったんだな」
永流はその指摘に頬を染めると『失念していました…』とデブ猫同様、喉を鳴らした。
「っそれよりも!どうしてここに来たんですか?それにこのハンカチは…」
双葉は、モジモジしながらずっと追いかけていた理由を話し出す。
「時は数時間前に遡るっ」
「せっかくうさちゃんが喋ろうとしてるんだから、美神ちゃんはしーっ」
永流に口を塞がれた美神を尻目に、双葉はたどたどしく振り返る。
「今日のお昼頃に双葉が美神お姉ちゃんをお買い物に誘ったのね?」
一華のスマホを使い美神と連絡を取った双葉は、小学生ながらコーヒーショップでカプチーノを嗜んでいた。
響よりも数個も年齢に差があるはずだが、注文は完璧だった。
『双葉殿!大変待たせてしまったな、それで用とは一体?』
美神も注文をこなすと、コートを脱ぎながら質問をする。
『実はね?永流お姉ちゃんの誕生日がそろそろだってのをねぇねから聞いたのっ。だから、双葉も何か贈り物をあげたくてね?』
響はここで初めて永流の誕生日が近づいていることを知った。




