222話 また今度
明日の昼頃にはこの地を立たなければいけない。
そうなると早めに就寝しないと、満足にお土産を買うこともできない。
「どうしますか…?」
そろそろ覚悟を決めなければいけない。
「脱がすぞ」
身体の一部を隠す布を、響は不慣れな手つきで脱がしていく。
目の前には、上半身を生まれたままの姿の菖蒲が映る。
「可愛いな」
「…えっち」
脳が焼けそうになり、先程までの思い出たちが霞んでいく。
「っ目が血走ってますよ?」
菖蒲は響の目を隠し、視覚外から頬にキスをする。
「…さっきのやつ、使い方分かりますか?」
響はポケットにしまっていたものを取り出す。
すると菖蒲は布団に仰向けで寝転がり、枕で胸元を隠しながらそれを見つめていた。
「今思ったんですが、私と響さんじゃ体格に大きな差がありますけど…大丈夫ですかね?」
「…すまん、俺も分からない」
不安そうにする菖蒲だが『響さんは優しいですし…』と自分を自分自身で納得させていた。
しかし一つ大きな謎がある。
「…なんでサイズピッタリなんだよ」
藍李は千里眼でも持っているのだろうか。
後ろを振り返ると、菖蒲は手の指の間からこちらを覗いていた。
「えっち」
「っそ、それは私のセリフですよ!」
菖蒲のセリフを奪ったところで、準備は整った。
「っじゃ、じゃぁ…よろしくお願いします?」
「こちらこそ?」
こういった時にどんな言葉が定石なのかわからず、とりあえず礼儀正しく挨拶をしてみる。
菖蒲を優しく布団に転がし、下着に手をかける。
「…菖蒲?」
緊張からか震える菖蒲の顔を見ると、大粒の涙を流していた。
慌てて、手を止め菖蒲を起き上がらせる。
「っすみません、私にも分からないのですが涙が止まらなくて…」
「やっぱり嫌だったか?」
菖蒲は残像が残りそうなほど大きく首を振り、それを否定する。
「そんなことはないですっ!響さんのことは大好きですし、響さんのどんなアブノーマルなお願いでも叶えてあげれます!」
「前半だけありがたく受け取っておくな」
菖蒲は自分でも涙の理由がわかっていないらしく、ペットボトルの水を飲みながら気持ちを落ち着かせていた。
「さて、今日はそろそろ寝るか」
「え、そんな…大丈夫ですよっ?」
菖蒲は響に無理をさせているのではないかと感じたのか、響の手を取り、身を乗り出してくる。
「った、多分大丈夫ですし!」
「泣くのは多分大丈夫に入らないと思うぞ」
理由が分からないのであれば、その方が心配というものだ。
菖蒲は脱いだ服を再び着て、ベッドメイキングをし始める。
「っ響さん、私大丈夫ですか…」
「そんなにしたいのか?」
菖蒲は耳まで赤くする。
『そ、そういう訳では…』としりすぼみになりながら、言葉を紡ぐ菖蒲は、響の腰を突く。
「俺は菖蒲のことを大事に思ってるんだ。だから、お互いの気持ちが揃う時までお預けだな」
二人の大人への階段は、少し先延ばしとなった。




