1-1-3:デュオ・レルクザード・アーサー
【デュオ・レルクザード・アーサー】
【一なる全】と周囲から呼ばれ学生魔法師最強と呼ばれたアシュレイと、過去において唯一互角以上の魔法戦を行えた人物である。
身長は178㎝とアシュレイより身長は少し高い。
髪は黒でツンツンとした髪型。眼はブルーアイで、どこか子供のような好奇心を秘めている。
彼は内在する魔力を、魔力から武器形態である【魔装】に変質させる事が出来ない。それ故に彼は自作の黒の大剣型の魔導器、【デバイス】を用いることで魔法を操る。
大剣を振るうために鍛えられており、こと接近戦において彼の右に出る者はいないと言われているほどだ。
そして、カスタム化された【黒剣】と彼の髪の色から、周囲からは【黒の剣帝】と呼ばれていた。
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(なぜコイツが…レルクザードが此処、エアリーズにいるんだ?)
目の前の知人に不思議がるアシュレイ。
それはアシュレイは彼が此処エアリーズの所属ではなく、浮遊島の一つである【トーラス】の魔法師である事を知っていたからだ。
アシュレイはデュオと2年前に魔法で戦ったことがある。
その舞台は【魔術競技会】。
2人はその舞台の決勝でぶつかり合った。
当時アシュレイはエアリーズの魔法師。デュオはトーラスの魔法師。
異なる浮遊島の代表として会い見えた。
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さてここで【魔術競技会】について簡単に説明しておこう。
【魔術競技会】とは、年に一度、【エアリーズ】、【トーラス】、【ジェミナイ】、【キャンサー】、【レオーズ】、【ビルゴ】、【リーブラ】、【スコルピオ】、【サギテリアス】、【キャピリコル】、【アクエリアス】、【パイシーズ】の計12の浮遊島にある魔導学院に所属する魔法師による【魔法】を使った選抜戦の名称である。
この【魔術競技会】の基本は小隊戦。つまりは団体戦である。
この競技会には各浮遊島の魔法師のレベルの把握も兼ねている一面がある。そしてこの競技会だけでなく学院が小隊を組ませるのは、人敵である【魔核獣】の脅威に対抗するためである。
メンバーは最低数である2名から最大6名のチームを組む事になっている。
各浮遊島からまず小隊3チームを予選から選抜し、3×12の36チームの小隊で優勝を目指しぶつかり合う。
方式はトーナメントで行われる。
一対一の小隊戦を繰り返し、最後に残った二つの小隊で決勝を行い、そして優勝した小隊には一つの【特権】が贈られる。
この【特権】を求めて躍起になる魔法師もいる。
この魔術競技会は団体戦。つまりは小隊所属数が多く、各力量が高い魔法師が多いほど有利になると言える。
少なくとも2名の小隊チームでは最後まで残ることは不可能である。
物量に勝るものはない。それを体現しているといえた。
しかしそれを壊した者が現れた。
それがアシュレイ・バークレインである。
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アシュレイは異例である【単騎】で魔術競技会に参加した。
前評判は【単騎】で小隊に敵う筈がない、と囁かれていた。
しかしアシュレイはそれを覆した。
アシュレイは多くの小隊を撃墜した。それも誰もが最初に学ぶ魔法の一つである光線魔法、通称【レイ】と呼ばれる魔法。その魔法のみで勝ち抜いた。
アシュレイの放つ【レイ】は異様でたった一発が強力で、魔法師の防御魔法を貫通し破壊しノックダウンさせた。
無論バリエーションを加えてである。
それでもたった一つの魔法に、【単騎】による圧倒的力量に、そして優勝を捥ぎ取ったその姿から【一なる全】と呼ばれる所以となったのである。
一年目にして【魔術競技会】優勝を決め、次の年でも【単騎】で参加した。
アシュレイは2年目に参加するつもりはなかった。
しかし前年の優勝者でもあり、単騎である為に色々学院長であるチハヤに便宜を図って貰っている事もあり、渋々了承し参加したのだ。
そしてその2年目も【単騎】で準決勝まで完封した。
その時には既にアシュレイは興味がなかった。ただの作業の様だと感じ冷めていた。
この競技会を終えたらこの学院から出て行こうとすら考えていた。
只只退屈なだけ。時間の無駄とすら思っていた。
通常学院に入学し所属したら4年間は在籍しないといけない決まりがあった。
アシュレイが学院に在籍したのは学院長のチハヤに頼まれたからであり本意ではなかった。
『お主は此処で、いずれ好敵手と言える者で出会える。それに今のお主には此処で学ぶことは意味あるものになるはず!』
”千里眼のチハヤ”と称され後見人として恩のあるチハヤに言われ仕方なく在籍していたに過ぎなかった。
決勝前までは、チハヤの”千里眼”もたまには外れるんだな。とか考えつつ、チハヤへの義理も果たしたと考えていた。
そんな時だった。
アシュレイは出会った。
決勝の舞台。
そこでチハヤの予見した好敵手たり得る存在に。
それがデュオ・レルクザード・アーサーだった。
出会った時は、他と同じで直ぐに終わる。
そんな風にしか思えなかった。
期待する気持ちなんて既に冷えていた。
(また直ぐに終わる。本当につまらない…)
本気でそう思った。
しかしそれは変わった。
何を思ったのか相手である目の前の黒髪の男はアシュレイに1対1を提案してきた。
その時は正気か?と心底思った。そして今までの小隊戦を目にして、その提案をしてくる目の前の男にアシュレイはどこか高揚感の様なものを感じていた。
アシュレイはその提案を受け入れた。
どこか、何かしてくれる?と言う期待感と、直ぐに終わるなら早い方がいい、と思った。
そして――結果はお互いに勝負のつかない引き分けで幕を終えた。
そして、アシュレイはその時の戦いで世界はまだまだ広く秘めたる存在がいるのでは思うようになった。
結果は引き分け。しかしアシュレイはその時にこう感じた。この男、レルクザードと実戦で殺し合ったら自分が死んでいた、と。
自分もまだまだだと思わされた。そして――優勝者に贈られる【特権】を行使し、学院を出て世界を回る旅に出ることにした。
その旅の過程で初音と出会ったのだ。
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「それで先生、この人はどなたですか?」
「ああ、こいつはレルクザード。過去に俺が引き分けた魔導器を使う魔法師だ」
「まったくもう、だな、君は。ちゃんと紹介するならフルネームが基本だぞ。俺はデュオ・レルクザード・アーサーだ」
アシュレイの発言に驚き目を見開く初音。
信じられないという気持ちだった。
初音はアシュレイの実力の一端をこの目で見て知っている。
並の実力者では彼に太刀打ち出来ない。
だからこそ学院の教員室に一緒に向かっている人物に驚愕する。
「信じられません…。先生と引き分けるほどの実力者なんて」
「まあな。俺も出会った時はそう思ったからな」
「何だか言いたい放題言ってくれるね、お二人さん」
ジト目を向けてくるが気にしない。
そんなことよりとなぜこのエアリーズの学院にコイツがいるのかという疑問を訊ねた。
「しかし、なぜお前がここにいるんだ?レルクザード、お前はトーラス学院の所属だったはずだろ?」
そうなのだ。レルクザードが所属していたのは【トーラス学院】のはずなので、このエアリーズの学院にいるのは不自然に思えたのだ。
そんな不思議そうにしているアシュレイに、レルクザードはキラキラとした子供ぽい目で、全力で叫んだ。
「…なぜって?そんなもの…お前に会う為だ!!」
全力の発言にアシュレイはドン引きし表情を歪ませた。「“え!?男に会いに来るって、コイツそういう気があるのか?“」と…。
なんだか初音からも「えっ、この人敵?」と若干引きつつ瞳から輝きが消えそうになっていた。
そんなドン引きし、嫌な者でも見たと言わんばかりのアシュレイ達の表情を見たレルクザードは慌てた様に訂正してきた。
「!?……いや、引くな!…そういう意味じゃないから!…当時を、2年前を振り返っても俺、全力を出せたのはお前だけだったんだ。君とならもっと俺の全力を出せる小隊戦ができる!と、そう思ったんだ!……だからあの後、2年前の魔術競技会で得た優勝者の【特権】を使って、エアリーズ学院に直ぐ移籍したんだ!それなのに、お前、既に出ていった後だったし!」
……それは、それは…ご愁傷様な事で…。




