表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/26

1-1-2:戻ってきた


ピンポンパンポーン~

“―投機はまもなくエアリーズ空港に到着いたします。御搭乗のお客様方は到着までシートに付いていて御待ち下さい~―”


飛空艇内にアナウンスが流れた…

間もなく到着する飛空艇には2人の男女が乗っていた。

2人の内の男性の方は、殆ど白に近い赤い髪をしておりその両腕にはガントレットの様で拘束具にも見える物を装着しており、腕を胸の位置でクロスさせその長い脚を組む様に目を閉じ眠っていた。


「先… 先生!… 先生!!」


眠っている男性を、横に座っている年下と思われる少女が男性の肩を揺すって起こそうとしていた。

何度か目の少女の呼び声に眠っていた男、アシュレイ・バークレインはうっすらと目を開けた。


「ん… 到着したのか?…」


組んでいた手足を解いた後、軽く体を伸ばしながら隣に座っている少女へと目を向けた。


「いえ、到着まではまだです。ただ、まもなく着くとアナウンスが流れたので…」


栗色の髪を腰くらい伸ばした少女は少し膨れながら非難するように言う。


「…何を怒っているんだ、初音?」

「別にィ~。どなたかが、『到着しそうになったら起こしてくれ』と、仰られていたので私、何度も呼んだのに…直ぐに起きてくれなかった事に少し思う事があるだけですよ~…」


じとー、とした視線を向けてきた。

どうやら初音は何度も起こそうと声をかけてくれていたようだった。


「悪かった初音。ここ最近は慌しく忙しかったからな、深めに寝入っていたみたいだ。……いいから、これで機嫌を直せ」


そう言って怒ってる風の初音の頭に手を伸ばすとその髪をなでる。サラサラの髪の手心地のよさを感じつつ撫でる。こういったスキンシップが一番の御機嫌取りなのである。


「なっ!? もう、先生はいつも頭を撫でれば、私の機嫌が直るわけではないんですよ!……嬉しいです、けど」


初音の顔が赤くなった。効果は抜群のようだった!

数ヶ月前のあの事件から付き合いになるが初音の機嫌の取り方は理解しているのだ。


***


アシュレイと初音。

2人の出会いは数ヶ月前になる。

空に浮びし12の浮遊島の一つである【サギテリアス】。

アシュレイはある特権を使い世界中を回る旅に出ていた。その旅の最中にアシュレイは【サギテリアス】に訪れた。そしてこの地で今一緒にいる少女、初音・フュードリッヒと初めて出会った。


また同時期に、【サギテリアス】にて『ある事件』にアシュレイは関わることになった。今後の自分を変えるほどの大きい関わりとなった。

その一つがその時の事件に初音も少なからず関わりがあり、後、今年魔法師として学院に入学する事になっていた初音とその両親にアシュレイの魔法師としての実力を見込まれた事もあり、初音の魔戦教官を頼まれたのである。

それ以降初音はアシュレイを『先生』と呼ぶようになった。


そして嘗て…旅に出るまでの1年前までアシュレイの故郷であり所属していた【エアリーズ】の地へと戻ってきた。

今後所属するエアリーズ学院の長を務めているアシュレイにとっては後見人の様な存在である黒姫チハヤからの帰還要請を受けたこと。


そして、あの時の事件に関与した”奴”が、このエアリーズ近海にて”奴”の魔力を感知した為だ…

今は”奴”の魔力は感知出来ないが、動きがあれば自ずと知れるだろう。


”ピンポンパンポーン~”

『ーエアリーズ空港~エアリーズ地区空港へ到着いたしました~お客様の皆様、忘れ物のないよ~ー』


少し回想している内に問題なく【エアリーズ】に着いたようだ。

今の世界では浮遊島への移動は空路が基本である。

無論問題が発生し飛空艇が墜落する場合は多い。

その多くは人類が空へ生活空間へと移行したのと同時期に現れた人類の敵。

人類と異なる魔力を持つ異形の怪物【魔核獣】。

その魔核獣の襲撃が原因として多い。

他にもテロリストの様な連中とかも存在している。


(まあ襲い来るモノは何であれ遠慮なく排除する)

「よし、行くか」

「はい、先生。楽しみです」


数時間のフライトを経て飛空艇から降りエアリーズの大地に足を踏みしめる。ずっと機内に座位の状態でいたので体を解す意味を込めながら腕を上げ背を伸ばす。

初音もアシュレイに倣い同じく伸ばしていた。


「せて…」


アシュレイはズボンのポケットに入れていた通信情報端末器、通称【Plate(プレート)】を取り出すと時間を確認する。

今の時間は13時過ぎ。

食事は飛空艇内で摂ったので問題はない。


「先生。この後はどうされるのでしょうか?一先ず今日から住む家に向かってお父さんとお母さんが到着するのを待つのでしょうか?」


隣の初音がアシュレイに尋ねる。

初音の両親は、アシュレイと初音より遅く、恐らく夕方頃に【エアリーズ】に到着予定なのだ。一人娘である初音をアシュレイに託すのだ。相当信頼されていると言える。


「そうだな。ご両親を待つにもまだ時間があるしな。そうだな、まずは学院に行って転入手続きとかを済ましに行くとしようか。今日から住む家も逃げたりはしないからな」

「わかりました。先生にお任せしますね」


初音の家に向かう前に、明日から世話になるエアリーズ学院へと初音を案内する事にした。

アシュレイは案内する傍らに、久しぶりに会う学院長であるチハヤの事を思い浮かべていた。


〈あの人に会うのも、旅に出る前だから1年ぶりくらいか。定期的に連絡はしていたけど…まっ、変わってないのだろうな……〉

「?」


そう思い浮かべ若干口の端を上げるアシュレイを不思議そうな表情を浮かべる初音だった。



・・・・・・・・・・・・・・



「明日からここが…」

「そうだ。今後初音が魔法を学ぶ場所、エアリーズ魔導学院だ」


初音が学院を見て呟いた。

アシュレイはその呟きを聞き、初音に視線を向ける。

初音の表情はやる気に満ちており、頼もしいなと思い、アシュレイは口の端を少し上げた。


学院を眺めていた初音を促し学院の中に入ろうとした。

そんな時だった。2人を止める声が届いた。


「こらこらそこの私服の二人組。ここは観光で来るような場所ではないぞ。速やかに出るように」


学院の門にある事務室に務めているガードマンの男だった。


「…いや、俺達は此処に用がある。チハヤにも連絡は言ってるはずだ。確認してくれ。アシュレイが会いに来たと」

「なに?…ん?よくよく見ると確かに”一なる全”の面影があるような。少し待ってくれ」


ガードマンの男はポケットからPlateを取り出すと学院長に連絡を取り始めた。


「さすが先生ですね」

「なにがだ?」

「いえ、名前一つでは普通は機関の長である学院長へアポを取ろうとしても信じてもらえないと思うのです。なのに。だからです」

「まあ、な。昔取った杵柄と言うやつだな。利用できるものは何でも、ということだ。しかし…」


今日は平日。つまりは他に学院生がいると言うことだ。

何やら数名がこちらに気付いておりザワザワと言った雰囲気が伝わってきていた。

アシュレイは耳を澄ませる。


「…なんかどっかで見たことあるやつがいるぞ」(こそこそ)

「…私、聞こえた。アシュレイって名乗ってたわ」(こそこそ)

「…ほんとに!?まさか、他人の空似じゃ?だって、さ」(こそこそ)


どうやら半信半疑と言った声がチラホラ聞こえてきた。

おそらくは今の自分の姿と、以前の容姿が異なっているのが要因の一つなのだろう。

そう思っていると連絡を取り終えたガードマンの男が入るのを容認してくれた。


「とりあえず学院長は職員室にて君が来るのを待っているらしいので、そちらに向かってくれるかい。案内は?」

「いや問題はない。1年くらいで忘れるはずがないからな」

「それもそうですな。ではどうぞ。いやぁ~君の様な優秀な魔法師が戻ってくれたのは嬉しい限りだよ。これでエアリーズは安全に…」

「長話はいい。待たせているなら早く行きたいからな。少し注目も浴びてるようだし」

「おお、悪いね。年甲斐もなくはしゃいでしまったね。ちょっとイメチェン?をしたようだけどオジサンは期待してるよ」


そう言う男を気にせずアシュレイは初音を促し学院の中に踏み込む。

とりあえず職員室に向かうため、まずは校舎の生徒用の玄関前に歩を進める。

その間も学院の生徒と思われる魔法師達からの視線や小声が聞こえてくる。


(まったくもって鬱陶しいな…)


おそらくはアシュレイが、”一なる全”が戻ってきたと知れ渡る事になるだろうな、と溜息を付く。



玄関前に着くと2人の、正確にはアシュレイの前に、エアリーズの本科生制服を着た見覚えのある、しかしなぜ此処にいるのかと不思議に思わせられた1人の黒髪の男が立ちはだかった。

黒髪の男の視線は真っ直ぐアシュレイに向けられていた。


「先生のお知り合いの方ですか?」(こそこそ)

「ああ。一度だけ会ったと言う関係だが確かに知ってるやつだ。しかし…」(こそこそ)


初音から小声で聞いてくるのでアシュレイも知り合いだと答えた。


「やあ、待っていたぞアシュレイ!俺は、俺はッ、君が此処に戻って来るのをな!アシュレイ・バークレイン!!」


アシュレイに指を指しながらまるで感動の再会であると言わんばかりに叫ぶ黒髪の男。

名前はデュオ・レルクザード・アーサー。

アシュレイがまだエアリーズ学院に在籍していた2年前に参戦した【魔術競技会】。その決勝で対戦し引き分け、唯一アシュレイが相手の実力を認めた数少ない人物だ。


(しかし……なんでここにいるんだ?コイツ…)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ