1-3-7:1対3の最初の模擬戦⑥
初音とトリニティの意外な連携攻撃で攻め切れず、摸擬戦が開始されて4分が経過した。
摸擬戦のタイムアップは5分。
目標は3人で5分以内に一撃当てる。
回避に徹すればまず当たることはない。
それだけの力量の差がある。
しかし自分でこう3人に告げていた。
『5分が近づいたら今の本気で撃墜する』。
そう告げたのだ。
告げた以上は有言実行しなくてはいけないだろう。
だから――本気を出す。
無論全力の本気は出さない。
摸擬戦で使ぅレベルの本気と言う意味だ。
これから使うのは≪集束魔砲≫だ。
自身の魔力を練り上げて一点に集める。
そして集めた魔力を”光”に変換し放つ。
単純な技である。
”光線魔法”。
殆どの魔法師が空を飛ぶ魔法と一緒に覚えるであろう魔法。
そして、アシュレイ・バークレインを知る者であれば、この”光線魔法”が代名詞であると言うだろう。
いくつものバリエーションの加えたこの誰もが使える初歩魔法ただ一つで、アシュレイは多くの魔法師を撃墜した。
≪魔砲で撃墜しそこには何も残らない≫
故にある者達から≪ゼロ≫と称され恐れられてもいる。
(さて…)
集束魔砲を使う。
ターゲットはトリニティだ。
姿を隠している為正確な位置が把握しずらい。
こちらを攻撃してくる際に”狙い”の感覚が肌についてくるので、相手が撃って来たら迎撃は簡単だ。
しかし今は初音の援護によるフォローもあり、うまく躱される。
狙えるが回避される。
なら回避できない規模の魔砲を狙う範囲に打ち込めばいい。
単純な話だ。
右手の短銃式魔導器=フェイズ。
そのシリンダー部分に、今回初めて魔力を注ぐ。
今までは予め魔力の籠められた魔弾を撃っていた。
これなら魔力を消費せず、また魔力を解放する必要もない。
しかしこれから使うのは文字通りの魔力による魔砲だ。
(この後封じる作業をしないといけなくなるな)
己自身の魔力を解放し行使すると、内なる魔力が溢れようとする。
内なる魔力は異質なのである。
おそらく普通の人間にはあり得ないであろう。
封印の作業も面倒でもある。
だからアシュレイは極力魔力を使う必要のないように魔導器を用いている。
アシュレイはこの模擬戦を終幕させる為、まずは初音に接近しようと加速した。
バシューン!!
すると自分の死角から魔弾が撃ち込まれてきた。
撃ち込まれた魔弾を紙一重で躱すとアシュレイは撃ち込まれた方向に初音とミツキとの攻防の中で初めて右の魔導銃=フェイズを向けた。
――そして魔導銃に魔力を込め始めた。
「!? “まずいわ!ミツキ、今すぐその場を離脱して!早く!!” 」
「”えっ!?”」
アシュレイの魔導銃に魔力が集束しているのか感じ取った初音は、アシュレイがこれから何をするのかを初音は理解したが故にミツキに逃げる様にと通信を入れた。しかし―
「…一瞬、遅かったな、初音」
アシュレイの零した一言。その呟いた瞬間、魔導銃に魔力が更に込められた。魔導銃のシリンダー部分が激しく光り出す。
そして魔導銃にチャージされた魔力が、魔砲の一撃がミツキが隠れている空域に向かって掃射された。
潜在魔力を自身から周囲に開放し、開放した魔力を一か所に集め凝縮する。そして凝縮された魔力を対象に向かって一気に解放し射ち放つと言う増幅射撃魔法である。開放した魔力量によってその破壊力は当然増す。
過去において、この魔法のみで数々の小隊チームの魔法師、魔導師を蹴散らし2度の優勝を果たしたアシュレイ・バークレインの最強魔法である。
アシュレイは今回、魔導器に魔力を籠める形で【収束魔砲】を使用した。
「こんなの…躱すとか…無理ィ!」
ミツキは引き攣った笑みを浮かべ迫りくるその魔砲を躱すことが出来ず、慌てて魔障壁を展開するも障壁も限界を突破し撃墜となった。
「なっ!ミツキ!?」
「ふっ、トリニティを心配する暇はないはずだが?」
「しまっ!?」
ミツキを撃墜された事と、まさかアシュレイが得意魔法である【収束魔砲】まで使うとは思わず動揺し隙が生じた。無論、アシュレイがその隙を逃すはずもなく、一気に初音の間合いに入ると左手の短剣を初音の首元に向けた事で初音も撃墜となった……
「ジャスト5分だな。とりあえず摸擬戦はこれまでだ。…各自、学院に降りた後はクールダウンしろ。その後、待機室で今回の講評を行う。では…一度解散とする…」
どこか焦りを含ませた様なアシュレイは集まった3人に告げると、そのまま空から学院へと帰還する。
しばらくして初音、レスター、ミツキの三人も空から学院に降下して行った。




