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1-3-1:最初の教導

最初アシュレイ視点、途中レスター視点。


「先生のバカ…、先生のバカ…、先生のバカ…」


先の紹介をパスさせられた初音が念仏を唱えるかのようにブツブツとアシュレイに文句を呟いていた。

そんな初音に対してレスターとミツキは呆然と意外なモノを見る様に思っていた。


(少し邪見にし過ぎたか…)

「ああ、初音。悪かったから、機嫌を直せ。あとで頭撫でてやるから」


アシュレイの頭を撫でる発言にレスターとミツキは(そんなことで機嫌が直るのかな?)と思った。またこの時ミツキは少し撫でて貰えるのは羨ましいなと思った。


「ほんとですか先生っ!!」

「えぇ~」

「アハハ~」


どうやら効果はあったようだった。

光の無い瞳が今ではキラキラと輝いているように2人には見えた。


「ああ。だから機嫌を直せ初音。それといい加減時間も惜しい。教導を始める」

「はい、先生♪」


レスターとミツキは今のやり取りでこの二人には絆の様な何かがあるのだと思えた。



「まず最初にだが、最初の教導は此処でなく空で行うから、各自用意している魔法衣を着用して第6演習フィールドに集合とする。何をするかはそこで伝える。じゃあ先に行ってるぞ」


そう告げた後アシュレイは教室を出る。

アシュレイが出た後。

初音は席を立つとミツキに声を掛けた。

理由はまだこの学院の施設を把握できていないからだ。つまりは更衣室がどこかよく分からないと言う理由だ。


「ミツキ。一緒に行きましょ。私まだ更衣室がどこにあるのか把握出来てないの。だから案内いいかしら?」

「うん。いいよ、初音さん」

「それじゃ、オレは先に行ってるからよ。お前達も遅れずさっさと着替えて来いよ」


そう告げレスターは教室から出て行った。

初音もミツキと一緒に教室を出ると,ミツキの案内の元更衣室に着き着替えた。


魔法衣に着替えた二人は第6演習フィールドに向かった。


「おお、来たか。ん?初音とトリニティの2人だけか?カルテットはどうした?」


魔法衣でなくそのままの学院服のアシュレイが既に待っていた。

アシュレイはなぜ3人でなく初音とミツキの2人だけなのか疑問に思い訊ねた。


「あら?レスターってばまだ来ていないのですか先生」

「えっと、レスターさん。私達より先に部屋を出たんですけど」

「ああ。お前達二人だけだ。アイツも一緒だと思っていたんだが…と噂をすればと言うとこか」

「わるい。少し準備に手間取ってな。オレが最後になっちまったか」


最後の一人であるレスターも魔法衣に着替えてやってきた。


初音、レスター、ミツキの前に立つアシュレイ。


「よし。揃った所で早速だが始めのだが、まずお前達に言っておく事がある。俺はこうして教導官として他人を指導するのは初めての経験となる。なので、指導は俺のやり方でやることになるから。其の辺を覚えておけ」


と、教導官とし「いいのかそれで!?」と突っ込みを入れられる様な事をアシュレイは3人に告げた。


「はい!私は先生の方針に問題ありません!」

「が、頑張ります」

「……フン。まずはアンタのやり方に従うよ。意味がなければしないから」

「ん…なら良し。それでは各自、武装の準備が出来たら空に上がって来い――」


3人に告げるとアシュレイは左耳に付けている四方形の金色のイヤリング型魔導器(デバイス)=【エアリル】を左手の指でピンと弾く。

すると【エアリル】に記憶してある飛空制御魔法の術式が起動した。

アシュレイの足元に術式が浮かぶ。「早く来いよ」の一声の後、軽く膝を動かした瞬間、アシュレイはそのまま上へと昇って行った。


(さて、あの3人がどう動いてくるか。まあまずは観察と行こうか)


初音達の行動を見極める様に(うえ)から心の中で呟いた。


【レスター・リディエル・カルテット視点】――


アシュレイが空に上がった後。

初音、レスター、ミツキは軽くストレッチを行い体を解した。


「よし。こんなものだろ。しかし最初に模擬戦とはアイツも見所あるな。オレの実力をアイツに示してやる!」


レスター・リディエル・カルテットの目にはやる気に満ちていた。

流石に相手は仮にも過去に最強の称号を持っていた男。

魔導器(デバイス)を用いているとはいえその魔法技能は並ではないだろう。

だからどうした。自分は強くならないといけない。

あの日の誓いを。--との約束を実現させる為にも、その約束成就の為に利用できるものなら何でも利用する。


(その為にもまずはあの男に――の実力を魅せつける。そして――の評価を変えてみせる)


あの教官はこう言っていた。

自分の認める者しか例外を除いて名を呼ばない。

そう言っていた。

そして今自分の事はあの人は『カルテット』と呼んでいる。

『レスター』と呼んでと言ったが、その名をも呼んでくれない。

初めて(・・・)会った相手なのだからそれも仕方ない。

だからこそこの模擬戦は好都合だと思った。

自分の実力を示す絶好の機会。

それに、


(魔導師なんかに負けないっ!)


学院に入る数年前に起きた事件。それに巻き込まれた際に、魔法師を嫉み落ちた外道魔導師と同じ魔導師には決して負けない。

そう誓った。


「よしっ、【魔装展開】ッ!」


自らの内に秘められし魔力を開放する。そして解放した魔力を右手に収束させる。

蒼白い光が自分の右手に集まるのを感じ、自分の相棒である魔装を生み出す。

魔力を持って生まれ魔力を形として生成することが出来る選ばれた力。


「よし展開完了っと」


問題なく展開出来た。

レスターの右手には魔力の色と同じ蒼白い一振りの槍が握られていた。

それこそがレスター・リディエル・カルテットの【魔装】。


「ふぅん。レスターの【魔装】は槍なのね」


声を掛けてきたのは同じ魔法師である初音・フュードリッヒだった。

同じ魔法師である初音の【魔装】がどの様なのか興味があったので初音の方に意識を向ける。


「ああ。オレの誇りと誓いの籠った自慢の魔装さ。初音のは……杖か?」

「ええ、そうよ」


初音の手にあった【魔装】は杖の形状をしていた。

杖と言っても指で持ち振るう様な杖ではない。

確かロッドと呼ばれる杖に分類されるのではないだろうか。

しかしなぜ杖なのだろうか?

と思った。

確かに初音の魔装は洗礼された輝きがあると思う。

しかし今時【杖】はない。

今まで見た魔法師の殆どは今の自分と同じ様な武器をモチーフにした形状をしているのが主流となっている。

少なくともこの学院で杖は見た事がなかった。

だから意外だと思った。

だから率直に聞いてみた。

そしてその答えは――


「だってこの方が魔法使い――いえ、魔法少女みたいでしょ」


と真顔で言われた。

その顔には満足感があった。


「そ、そうか。まあ人それぞれの趣味嗜好があるよな」

「そうね。ミツキは準備できたかしら?」


初音がミツキに準備が出来たか確認した。


「あっ、はい。組み立て完了です」


正直魔導器(デバイス)なんて興味はなかったが、一応不本意だが同じ小隊なのだからとレスターも目を向ける。


「スナイパーライフルか」

「あっ、はい。そうです」


何だか声を掛けた瞬間ビクッとなる彼女。

魔導師嫌いの影響で冷たくあしらった事に怯えでもあるのだろうか。

ちょっと大人げないかとも思うが魔導師に対してはまず嫌悪感が来るのだからしょうがない。


おっとりした雰囲気漂うミツキには意外性があるなと思った。

初音がどうしてスナイパーライフルの魔導器(デバイス)なのと聞いた。

初音も意外だと思ったかもしれない。


「魔技科の初めての授業で色々と適性を測ったんです。それで私にはその、コレが合うだろうと渡されたんです」


大事そうに抱える様に魔導銃を持つミツキ。


そんな彼女と言うより、魔導器(デバイス)其の物に対して無意識に侮蔑の視線を向けてしまう。

そんなレスターの視線に気づいたのか表情を曇らせるミツキ。

ミツキを気遣い、呆れたような雰囲気を向けてくる初音。

何だか居心地が悪く、居た堪れない気持ちになった。

そんな雰囲気から無意識に目を背けてしまった。

それがまた屈辱に感じた。


「くっ、オレは先に行くぞ。早く来いよ」


”飛行魔法”の術式を展開し、教官の待つ空に昇った。



その今のやり取りを空から観察していたアシュレイ。


「まっ、こんなものだよな、始めは」


と呟いた。



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