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1-2-7:担当する小隊チームの顔合わせ

今日から担当する小隊チーム。

その3人が既に部屋に集合し待っている状況だった。


まずは教官から自己紹介するべきと、教導本に書かれていたので、それに倣いアシュレイからすることにした。

教官用の机に両手をついて始める。


「あぁ、今日からお前達3名の小隊チームの教導官を務めるアシュレイ・バークレインだ。呼び方は適当に呼んでくれ。それじゃ…そっちの赤髪の子。自己紹介してくれ」

「わ、わたしから、ですか!?」


アシュレイに呼ばれ慌てた様に席から立つ赤髪の少女。


「ああ。初音は知ってるから最後だ。で、残り二人を適当に選んだ方からと思っただけだ」

「えっと、分かりましたっ。その、えっと…」


なぜか此方の顔を見ていると顔を赤くし伏せる様子を見せる赤髪の子。

変な子だと思った。

オドオドとしている赤髪の子に、青く長い髪をポニーテールにしている男子制服を着ている方が不機嫌そうに急かす様に声にした。


「おい、早くしろよ。あとが閊えてるし、オレは魔法の訓練がしたいんだから!」

「ご、ごめん、なさいっ」

「レスター!あんたっ」

「ふん。なんだよ、本当の事だろうが?初音だって早く訓練を受けたいとかさっき言ってただろうが」

「それはそうだけど、言い方ってものがあるでしょ!」

「ああ、仲が良いのは結構だが、早く進めたいのは俺も同感の意見だ。だからえっと、青髪の方、お前から挨拶しろ。それで次が赤髪の子でいいだろ」


このままでは埒があかないのでと、もう一人に先にさせることにした。

アシュレイに呼ばれ「はぁ」と溜息をつきながら「仕方ないな」と青髪の子がその場に立つ。

ごめんなさい、と顔を伏せながら着席する赤髪の子。


「オレの名前はレスター・リディエル・カルテット。1回生魔法科所属だ。名を呼ぶときはレスターで呼んでほしい」


やはり青髪の方がカルテットで間違いなかったようだ。

数年前にほんの少しの邂逅であったが、どことなく当時の姿を思いださせてくれる。

そして『やはり』とも思ったのだが、何か事情があるのだろうし、今の自分には関係性は低いと判断し気にしないことにした。


「そうか。お前がカルテットか。ん、そうだな。お前は何か俺に聞きたいことはあるか?」

「聞きたい事?そりゃあるさ。アシュレイ・バークレイン。アンタは嘗てこのエアリーズだけでなく、学生魔法師の中でも最強の魔法師だって聞いた。だけど今は魔法を使うのに魔導器(デバイス)を使わないといけないとも聞いた。アンタの左耳にしているその耳飾りも魔導器(デバイス)だよな。魔導器(デバイス)を介さないと魔法を発現できないのだったら、正直オレは期待外れだ。魔導師なんかから魔法戦術を教わる事なんてないからな」

「なるほどな。理解した。今の言動でどうやらお前は随分と魔導師と言う存在を憎んでいるのだな。魔法師特有の差別とも違う」


カルテットの発言の節々に負の感情が乗っているのはすぐにわかった。

そう言うとともに心の中で(あの事件が強く影響を残したようだな)とアシュレイは呟いた。


「まあ確かに今の俺は魔導器(デバイス)を用いている。だがな。お前がこれから学ぶのは”魔法”だけじゃない。”魔導”を知るのも最強への道に繋がる筈だ。”魔法”だ”魔導”だと壁を作ってるようでは、成長は出来んだろうな」

「なんだと!?」


激昂する様にカルテットが睨んでくるが、その睨みもアシュレイには効かない。届かない。


「よし、カルテットの自己紹介は終わりだ。それじゃ、もう流石に落ちついただろ?いけるかトリニティ?」

「あッ……はい…」


席から立つミツキ。アシュレイはどこか彼女が残念そうな様子をみせた様な気がした。それが何故かわからないが気にすることじゃないと思う事にした。


「えっと、私の名前は、ミツキ…、ミツキ・フォン・トリニティ…です。よろしくです、お――アシュレイ先輩」


ゆっくりと小さめの声だったが、今度はこちらの目をしっかり見てトリニティは答えた。

その彼女の自己紹介にどこか、と言うかやはりと言うべきか、なぜか分からないが彼女から期待感が籠っているように感じた。


だが、彼女が此方にどの様な期待しているのか不明と言う事もあり無視する形で放置する。

するとそんなアシュレイの態度に、ミツキはやはり残念そうに肩を落とす。


(……過去の知り合いか?)


そう思ったが記憶の過去に該当する者がない。

まあ何かの機会で思い出す可能性もあるだろう。


「まあよろしくと言っておくか。それでトリニティ」

「あ、あのっ!できればミツキと呼んでくれませんでしょうか、ぉ…先輩っ」


いやに名前呼びを強調してくる彼女。


「よくわからないが、却下だ。俺が名を呼ぶのは俺が認めた者だけだ。まあ例外もいるけどな」

「そ、そうですか…」

「まあ俺に呼んでほしかったらせいぜい俺に認められるように成長することだ」

「は、はいっ」

「さて、一応の確認をするが、トリニティ。お前は魔導器(デバイス)を使用するってことで間違いないな」

「あっ、はい。コレを使います」


ミツキは机の横に置いている大きめの黒い長方形の鞄に目を向けた。

アシュレイも魔導器(デバイス)の入っている鞄に目を向ける。


「……一つ確認だが、それは学院支給の魔導器(デバイス)か?」


彼女は今年度に学院に入学したはかりのはず。自作する技量はまだ習得していないだろう。

どこかで既に学んでいるのなら話は別なのだろうが、事前調査では『ない』と出た。

ただ念の為に確認した。


「あっ、はい。魔導器(デバイス)は此処に入った時に受け取った物です」

「やはりそうか…」

「えっと、アシュレイ先輩?なにか?」

「いや、なんでもない」


魔導器(デバイス)のオリジナル作製が今後の課題になるな、と思いながらミツキに「座っていいぞ」と声を掛け着席させると、最後の一人である初音に声を掛ける。


「それじゃ最後に初音だ」

「はいっ!」


待ってましたと言うかのように椅子から立つ初音。


「とまあ最後に挨拶してもらうとこだが、俺は初音の事を知ってるから今更だろう。さっき3人で自己紹介らしいのもしていたようだし、ここはパスとしよう」

「そっ、そんなぁああぁ!?」


悲壮感漂う叫びをあげ机に手をダンっと付く初音に、レスターは不機嫌そうだった目が点になって驚き、ミツキも「あはは…」と若干引いた微笑を浮かべていた。

冷静で優しい女性と言う意外な初音の一面を知る事になった。




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