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初めての蜥蜴人 バリフェル達の事情

お待たせさせています。

この作品はのんびりがモットーですので気長にお付き合いして頂ければ幸いです。

【光】と【慈愛】を司る女神ルミナスに仕えし者は、毎朝の日課である礼拝堂にて聖典を開く事から始まる。

一字一字丁寧に読み解きながら詠唱し、敬愛する神に感謝と信奉を捧げるのだ。


数年前の私に出会えたのなら、信じられるだろうか?

私が教会へと足を踏み入れることになるなんて、思いもしなかった。


決して忘れられない幼少時代の遠き過去を振り返る。



オルグフェン王国の王都の東側には、通称スラム街と呼ばれる行き場のない人間やゴミなどの掃き溜めの地区がある。

私はそこにいて親も兄弟も物心つく頃にはそんな存在、誰もいなかった。

誰かに庇護される事なんてなく、そこで生きる為には誰かを出し抜くこと、そして無害そうな旅人から財布をスルなどして日々の糧を得ることが日課だった。

腹が減ればその辺の雑草を齧る。

まだ齧るもののある方は幸せだ。浄化もされていない汚い飲み水でお腹を壊す事もあったが、そんな環境で生き抜いてきた私にとっては次第に胃腸や免疫は鍛え上げられる。死んだ者の方が多いのだから私はまだ幸運の方だ…いや、こんな生活は何時までも続けられる訳じゃないから死んだ者の方が幸せなのかも知れない。

こんな環境で生き続けなければいけないのだから。


スラム街には基本的に子供達が多い。

それは色んな理由があって子供は捨てられる対象なのと、大人になる前に生き残る事が出来なかったり、奴隷商などに売られていく子も含まれる。

運が良い子は稀に貴族などに目が止まり、此処よりは少しだけマシな生活を送る者もいる。そんな例外は非常に稀だけれども。



そんな子供社会にも派閥は存在する。

あってないようなものだけど、子供ながらの規律はあった。

因みに私は何処にも属さないフリーだったけど、何とか生きていけるだけの力があった。


それは私は手癖が悪い…もとい器用だったので上手く渡り歩き縄張りをシェアし協力する事で、どの派閥からも重宝された。

鍛えた盗みの技術で人様から人間らしい食べ物を奪って、腹を何とか満たしていた。

時には近くの農村、町で盗みを働く。

当然の如く失敗すれば殴られ、路地へとボロ雑巾のように捨てられる。それで死んだ子供達も少なくない。


そんなある日の事、身なりの良い老人がスラム街へとやって来た。

何をしにここに来たのかは知らない。

着ているものも良さそうで、この時ばかりは発見した獲物を見逃す道理はなかった。

スラムの子供達はすぐに結託してその老人の身ぐるみを剥ぐ事にした。


金や銀の美しい装飾が目立ち、何かのマークが刺繍されたローブは一体いくらになるだろう!

そんな事を片隅で考えながら路地裏で待ち構え…一斉に取り囲む。



しかし、いざ本人を前にすると全員が足を踏み出せない。

何か不可視の壁のような者に阻まれている感触を受け…立ち竦んでしまっていた。


「初めまして、バリフェルと申します。元気の良い子供達だね。1つ、揉んであげよう」


優しげな笑顔が印象的で細身だけど筋肉質なおじいちゃん。

言いようのない悪寒が子供達全員を襲った。

この出会いを得て後に私の師匠バリフェルとなる人物となった。







その後、打ち負かされた10名もの子供達は散り散りに逃げていった。

但し私1人だけはその場に残った…と言うか、痩せっぽちの私は打ち据えられた事で動かなかっただけ。


打ち捨てられて行くのだと思っていたのだけど、そうはならなかった。

可笑しそうに笑った老人は不思議な言葉を唱えると、暖かな光が私を照らした。すると、全身を覆っていた痛みが和らぎポカポカと身体が暖かくなる。


余りの奇跡に呆然と眼を見開いていると、君も魔法を覚えて見ますか?と手を出して尋ねられた。

師匠にとっては気まぐれだったに違いない言葉は、私の運命を変える。

おずおずと差し出された手を握り返した。




どうやら師匠に話を聞けば、スラム街を歩いていたのはここに目的があった訳ではなく、唯の通り道だったようだ。

この先の農村へと近道があるのだと言う。釈然としない説明だったが「君のような面白い拾い物も出来ましたし」と、付け加えられては反論も出来ない。


師匠バリフェルは元ルミナス神に仕えた神官であり、布教活動も兼ねた行動中だったのだという。



目的の農村へと無事到着し、ルミナス神の布教を進める。農村部では信仰が少ないがルミナス神を祈る信者は少ないが存在する。その1名か2名かのためにわざわざ足を運んでいるのだ。



帰りは村の馬車を使わせて貰う。

馬車代と御者代とが掛かるけど、そうする事で少しでも現金を村に落とす事も大切なんだって。


行きはスラム街を抜けて3日掛かった行程も、馬車ならば丸1日も掛ければ到着する予定。

乗り慣れぬ馬車に尻を痛めながら、やっとの事で王都へと到着した。


ルミナス教会は華美な装飾は一切なく、清貧の印象が強い白く質素な作りの建物だった。

他には神官と思わしき中年のおじさんやおばさんが何人かいるだけ。私のような歳の子はいなかった。

紹介されてぎこちなく挨拶したけど、誰も私の事を笑ったりせずに暖かい笑顔で迎えてくれたのを今でも覚えている。


ここから私の新しい生活が始まるんだ。

新しい生活に不安が私を支配するけど、楽しみも同時に膨らんでいた。




そして、この王都にあるルミナス教会支部へと招来されて5年が経った。

教会自体は決して裕福ではないが痩せ細っていた私の身体は普通の人並みにくらいには肉がつき、成長した。


最初こそ馴染みがなかったけど、5年間も経てばここの生活にも大分慣れてきた。



朝の礼拝の後は、午前は王立図書館で歴史と大陸言語の読み書きの練習。此れが文字を覚えるまでが大変だった。

そして私には魔法の適正があったようだ。よく分からない儀式を得て、魔法適正があると判断されたのだった。


午前中のトレニーングに魔法学が追加され、更に厳しさは増した。

しかし、憧れた魔法が使えるかも知れない嬉しさが勝り、何とか乗り越えてきた。


午後からは昔冒険者だったと言うバリフェル様から魔法のトレーニングと戦闘での基礎体力作りが始まる。

何をするにもまず体力が必要という師匠の持論で、おおよそ子供に課せられる筋トレのギリギリな範囲を日々こなしていく。

体は少し筋肉質で二の腕が発達しているのは、いつしか私の誇りになってしまった。



いずれも苦しい訓練だったけど、バリフェル師匠と共に乗り越えてきた。


いつもルミナス神を信奉しなさいと口酸っぱく言われているが、形だけの返事を返しておく。諦めたような師匠とのやり取りはいつもの光景に成りつつある。



勿論ルミナス神様を信奉してますとも!でも、私は助けてくれなかった神様よりもバリフェル様を信じている。



師匠のように立派な人になって大勢の人を救いたい…それが私の生きる目標に成りつつあった。

このままの生活がずっと続くと信じていた。


私に突如王国からの召集がかかるまでは…。
















深夜に目が覚めた。…あれ、ここ何処?


見慣れぬ天井をぼぉーと見つめていると次第に意識がはっきりしてくる。


そっか、ここは王都じゃ無かったんだ…懐かしい夢見ちゃったな。


私たちはここのリザードマンと呼ばれる亜人達に助けられたんだ。




寝静まった夜は静かで…外の風の音だけが聞こえてくる。


今日はそのリザードマン達が歓迎の儀式と称して宴会を開き、祝ってくれた。

図鑑や文書から習ってきた知識では、リザードマンとは頭が悪く、戦闘を好む短絡で好戦的な種族だと記してあった。



大体のリザードマンは下位と呼ばれる種族の構成で括られている。

上位種存在し、それらは下位蜥蜴人とは一線を画する戦闘能力を誇る。

屈強な身体と鱗を持ち、例え素手であってもその牙や爪は簡単に人を引き裂く力がある。

沼地や湿地帯に多く生息し、水陸両用の戦闘に強い。

稀に戦闘奴隷として捕獲されることもあり、人間の武具で武装された個体は、一国の騎士並みの力を持つ個体も少なくない。

最後の欄には戦闘以外は特筆する事なく、文化レベルも最低で野蛮で好戦的な種族と…総評にあった。


彼らのもてなしの宴では、大きな魚に魔獣か動物の肉、キノコや木の実など様々に焼いたモノがそのまま皿の役割を果たす葉や容器にデンと盛られていた。


質素の暮らしをしていたために、料理うんぬんは兎も角、種族は違えど、私達を持て成そうとしている気持ちが切に感じられた。

中には色や斑点の気持ち悪いキノコや、蛙のようなヒレのついた脚肉が見えても…残すわけにはいかず、ちびちびと食べていた。

意外と美味しかったが、個人的には肉ばかりよりもお野菜をもっと摂取したい。

リザードマンの提供してくれた食べ物は殆どの料理が焼く煮る以外になく、それ以外の味付けはないので野生の味が良く解るシンプルなものばかり。贅沢は言えないけど味の付いたものが恋しい。


師匠は以外にもこのような食事に慣れているのか、躊躇なく満遍なく皿からとっては食べ、彼らと談笑を繰り返していた。



私には彼らが何を言っているのか全く分からないけど、師匠はリザードマン限定の翻訳魔法がかかっているマジックリングがあるから平気で話をしている。

師匠曰く、彼らは約定にとても義理堅い種族なんだそうだ。

確かに分かるような気がする。何十年もたった今でもその約定を違えず私達を助けてくれたのだから。









一息つくと、異様に喉が渇いている事に気付く。

自覚すればすぐち喉を潤したくなった。

私の隣では師匠が寝ている。

国から旅立ってかはここまで動きっぱなしだったから、疲れも溜まっているし…何より師匠は高齢だ。


こんな私に付き合う事になって国を追われ…子供ながらに申し訳ない気分でいっぱいになる。

でも、師匠がいなかったら私は絶望のまま死んでいたかも知れない。

それには感謝しても仕切れないと思う。


起こさないようにそっと草を編んだ寝具から抜け出して、水を探す。


探している途中に軽く肩を叩かれ、目の前に植物のような入れ物に入った水が見えた。


結局師匠を起こしてしまったかしら…と、反省しながら振り向くとそこには白い鱗を持つ子供と思われるリザードマンがいたのだ。


余りに突然の事に、お礼の前に悲鳴を上げようとする。

私の大声が漏れる前に、白のリザードマンの手が私の口を塞いだ。意外ともっちりとしていて柔らかい。

しかし恐怖でそんな事にも気が付かず半分以上涙目になった私に対して、牙を見せ大きく顎を開こうとしていた。


食べられちゃう…とパニックになりなながら目を瞑り、次に来る痛みを覚悟した。

………しかし、いつまで経っても痛みは襲ってこない。


困った?ように


「えーと、驚かせてごめん?

俺の声、聞こえてるかな??夜に大声を出されたら困るからさ」


信じられない事に流暢な人語を喋ったのだ。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











バリフェル達の歓迎会である宴の最中に、まだまだ子供である俺たちは宴会場を出て就眠の時間へと入った。

俺たちも滅多にないご馳走の山に食べ騒ぎ、疲れてすぐに眠ってしまった。


いや、俺だけは寝たふりをした。

深夜にむっくりと起き上がった俺は、隣で寝ているルタラとドルゾィを起こさないように慎重に歩きわコソコソと部屋を出る。


無論、こんな行動に出たのはどうしてもバリフェルに会いたくなったからだ。

機会があるまでは我慢しようと思ったが、バリフェルがどういった目的で襲われ、いつまでここにいるのか分からない限り彼らはいつココを出て行くのか…もしかしたら明日早朝にはいないのかも知れない。

そう思ってしまったら、落ち着かず居ても立っても居られないいられなくなってしまったのだ。


そして寧ろ宴会で寝静まっている今こそが機会チャンスなのだと自身に言い聞かせ、こんな偶然はもうないと本気で思った。


今日は集落の門を守る最低限の大人リザードマンしか起きていない。

闇に紛れで見つからないように《魔力転用》を念のために発動させ、慎重に族長宅へと進んでいく。





族長宅を目指す途中、微かに風切り音が耳を捉えた。

《魔力転用》にて強化されているからこそ、気付るほどの微かな音。


不思議に思い出所を探ると、どうやら集落の鍛錬場から聞こえてくる。


月夜の光のみで良く分からないが、何者かがそこにいる気配がする。

20mほど先の建物を遮蔽物として身を隠し、更に耳を澄まして見れば、鬼気を感じるほどの気配を静かに放ちながら冴え渡る剣技を振るっているボルデッカを発見した。


やはり、上位の蜥蜴人ともなればその動き1つで戦闘能力が自身と隔絶している事が良く解る。

1つ1つの動きが芸術であるなように舞い、洗練された動作が眼を釘付けにしてしまう。


暫くその剣の冴えを鑑賞し様子を伺っていると、不意にボルデッカが此方の方をふっと向いた。


「コソコソと見なくとも良いわ。出てくるのじゃ」



(えっっ、バレてんじゃん)


ドキッと大きく高鳴る心臓。

《魔力転用》まで使い、気配もなるべく隠していたつもりだったので、まさか気付かれている…とは思わなかった。


建物の陰から出ようかと逡巡していると、俺より手前の建物から人影が出てくる。


族長のシュシュバルガだった。


二言三言会話を交わした後、最長老ボルデッカと族長シュシュバルガが酒を片手に呑み始めた。


ほっと息を吐くと同時に再確認の為にボルデッカを見ると、族長と話しながらふっと苦笑気味に此方の視線に応えのが、強化された視力でハッキリとわかってしまった。


それでも何も咎めずにいてくれている所をみると、どうやら見逃されたみたいだ。

イタズラを見つけられた子供のような気分でそそくさとその場を立ち去った。


(参ったな…やっぱり後でボルデッカには会いに行こう)






そんなこんなでようやくボルデッカ邸へと到着した。

今日に限っては宴の日とあって見張りはこの集落の門番のみ。


すんなりと中へ入る事に成功。


中の気配を伺うと、奥の部屋から何か物音が聞こえた。そっと近付いて様子を伺うと、10歳前後くらいの子供が見えた。ぼーっとしているようで、ふらふらと立ち上がった。


キョロキョロと周りを見ている。何かを探しているようにも見えた。

取り敢えず、近くのコップ(大きな拳大の木の実をくり抜いて作った俺のお手製。

リザードマンは口が長いので中が空洞になっている乾燥ツタのストロー付きが便利)を手渡してみた。


すると大きく眼を見開いて口を開こうとしたため、慌てて口を閉じさせて貰った訳である。



声かけたもののどうしようかな〜と迷っていると、不意に隣から気配がした。


隣を見るとすぐ側までバリフェルが立っていた。


「おやおや、やんちゃな子ですね。そういう元気な子は私も好きですが…やんちゃのし過ぎはいけません。

この事は黙ってて上げますから、今日の所はお帰りなさい」


と、優しい口調で諭された。


その懐かしい声が自分に向けて話しかけて貰った時…自分は相当嬉しかったのだろう。


「おや、どうしたのです?

大丈夫、内緒にしておく約束は守りますから泣かないで下さいね」


何のことか分からなかった。

頬を伝い、暖かな液体が口や鼻から流れ出しているのに気付いた。

俺自身の自覚は無かったが、滂沱の涙が両眼から溢れ出していたのだ。


子供の口からそっと手を離し、バリフェルの元へと近付いていく。

手前で立ち止まり、深々と礼をする。


「いや、お気遣いありがとう。この涙はきっと嬉しかったんだからだと思う。

思いがけずも…バリフェルに会えてね」



「?それはどう言う意味ですか?私と君とは初対面の筈ですよ?」


困惑するバリフェルと子供を眺めつつ、俺はポツポツと此れ迄の事を話し始めた。

証拠の1つである右手に嵌めた《彷徨ワンダリング探求者シーカー》を見せながら…。









全てを語り合えた俺は、ゆっくりとため息を吐いた。

暫く沈黙が場を支配していた。


「…俄かに信じられない話です」


それがバリフェルに開口一番にいわれた言葉だった。それは自分もある意味一緒だったりする。


「しかし、君の話は辻褄が合っている。私しか知らない情報やレベル測定器の秘密、オルグフェン王国の闇など…リザードマン種族である筈なのに必要ではない情報を知り過ぎていた」


葛藤がありながらも、どうにか言葉を捻り出しているようだ。


「私は信じましょう。稀有な属性の勇者が再びこの世に転生を果たした奇跡を。これも巡り合わせなのですね。ルミナス神よ」


眼をつむり、神に印を捧げて感謝した。


「お師様、私にはどうにも信じられない事が多いですが、貴方が信じるのならば私も信じます」


バリフェルの弟子と名乗った子も頷き返した。


「こんな突拍子もない話を信じてくれただけで有り難いよ。

ともあれ、再会出来てよかった。

バリフェルの爺さんのおかげで沢山助けられたんだ。本当にありがとうございました。こうしてお礼を言えたしね」


そして、貰ったカドゥケウスの杖とハーミットロープなどの希少な装備品を無くした事を詫びた。


気にしなくとも良いと快活に笑うバリフェルに安心しつつ、どうして襲われ、この地に来たのか尋ねた。

その話になると神妙な顔付きで弟子に話しても良いか?と確認をとった。



「お師様、宜しいのですか?」


「うむ、この者は信用できる。決して悪いようになるまいて」


この子供の名はシー・ポゥと言う。

名無しだった彼女にバリフェルがこの子に直接名付けたようだ。

名の由来は神話のルミナス神に仕えた従者の1人で、その人は神の馬を引く役割だったらしい。

フンワリとした髪質に少しタレ目が可愛い独特の雰囲気を持つ女の子。

チェインメイル越しに解る程の痩身だけど、筋肉でしまった良い体付きだ。

つい目線が胸へと移ると、凄い形相で睨まれた。コンプレックスなんだね、でもぺったんこはご愛嬌だろう。

今年で13歳になるという。


バリフェルと奇妙な縁が合って師弟関係となった。魔法の才能もあるらしく、その歳で第2階梯魔法まで回復魔法を使いこなせるという。

第3階梯までが一流と凡人の壁と言われる中、非常に先が楽しみな人材なのだと好々爺のように自慢してくれた。





その彼らが王都にあるルミナス神の支部教会で毎日を過ごしていると、王城から使者がから突如召集があった。

しかもシー・ポゥのみ呼ばれたのだ。


一介の信者であり未だ侍祭のシーは、王城へ呼ばれる要件などあろう筈がない。

流石に不審に思ったバリフェルは一緒に同行する事を求めた。

使者は彼女1人のみで…と嫌な顔をされたが、王国の機密とルミナス神王都支部の総括である関わるバリフェルの要請とあれば、ノーとは言えないのだった。


そのまま王城へと到着して待たされること暫し。最初は王城内の見事な内装を珍しそうにキョロキョロしていたシーだったが流石に待たされ過ぎて飽きてきた所で、ようやく中の間へと通された。


金と翡翠石が散りばめられた豪奢な造りの間には見る者を圧倒させる何かがあった。しかし、それよりも存在感を放つ存在がいた。

そこで待っていたのは、王国最強の魔法使いであり宮廷魔術師長ロード・オブ・マジックキャスターを務める青年マクシミリアン卿であった。

彼が最強だと言われる由縁は宮廷魔術師長ロード・オブ・マジックキャスターだからではない。

国内唯一の5階梯の段階の魔法を操る2属性ダブル持ちだからであった。

180㎝の長身に青髪に端正な顔立ちは王国内の女性の憧れの的である。

いつからか片眼鏡モノクルを愛用しており、それが悔しい程よく似合う男の為、世の男性からは妬みの視線の的であったりする。


マクシミリアン卿はバリフェルの方を見て少し眼を細めたが、歓迎したかのように此処へ来訪して貰った内容と経緯について話した。


簡単に纏めれば以下の通りだ。


この頃大森林より2〜30匹程のフォレストウルフの魔物の群れがオルグフェン国内の村を荒らしまわっていると言う。

最初に襲撃を受けた村は偶然にも依頼で冒険者が詰めかけており何とか撃退出来たようだ。

しかし、被害は大きく再度襲撃を受ければ持たない。

救援の要請を受けた王国はその地方領主へ討伐の要請する。

領主は時間をかけて100名近くの兵士達を編成し終えて討伐に繰り出したものの、狂ったように襲撃してくるフォレストウルフに被害は甚大。


そこで《光》と《慈愛》を司るルミナス神の回復魔法の使い手たる稀少な神官に派遣の要請が来たと言う訳だ。

特にバリフェル殿の秘蔵っ子となれば是非に…との事だった。



優しい口調で語りかけるマクシミリアン。

普通の人ならばそれで騙されてしまいそうだったが…生憎とルミナス教の支部とはいえ、総括を任される程には政争を乗り越えてきた。権力など興味は無いが人間観察の眼には多少自信がある。

バリフェルにはマクシミリアンと呼ばれる青年が見かけだけの優しい青年では無い事を見抜いていた。

このままシーを生かせてはならいと警告に似た危機感がバリフェルに訴えかけている。




代理を立てようとも、現在は回復魔法を使える者はバリフェル以外にはシーしかいない。

それに、この支部が建てられた時にバリフェルの前の前任者が王国より多額の寄付金を受け取っている。


その時から王命があれば有事の際は力を貸すように条件が課せられていた。

キナ臭さは感じているものの、最初から此方の拒否権等はなかったのだ。
















無辜の民を守る為に傷付いた人間を癒すためならば…と、私もシーと共に行く事で救援要請を受諾した。


その間は信頼のおける神官に支部代理を任せた。

長期不在になるのだが、事務的な事や神事は残った彼等だけでも充分に熟る。回復魔法を使った治療などは行えなくとも、薬草より作ったポーションや薬がある為代用は可能だ。

念の為にルミナス教本部に王命により長期不在になる事を新書でしたため、万が一の場合には人材派遣を要請しておく。


そして3日程で準備を整え、出発の時が来た。


片道2週間の旅になる。荷物や食料を乗せ、御者の案内の元馬車場合は動き出す。

オルグフェン王国の用意された頑丈な馬車に乗って件の町へと辿り着くはず……だった。


途中、他の町や農村によりながら旅する事2週間。

ようやく王都から大森林入り口までの最初の町が見えてきた。


そこで降ろしてもらう手筈だったのだが、馬車はいきなり急加速し始め町を通り過ぎて大森林へと突っ込み始めた。

私達は直ぐには気付けなかった。

長旅の疲れが蓄積していた事や、どうやら先ほど食べた朝食に睡眠薬が盛られていたようだ。


でなければ、流石に気付くだろう。気付いた時には手遅れだった。

完全に寝入っているシーを起こし、自らの油断に舌打ちしたい気持ちを抑えて状況確認する。


こうして馬車の外に脱出しようとしても、外から鍵がかかっていて開かない。

いつの間にか馬を操る御者は既におらず、馬だけが口から泡を吹き出しながら狂ったように疾走して遂に大森林へと突っ込む。

馬車も思いっきり木々に揺られ、またはぶつかりながら、やっと2頭の馬が巨木にブチ当たって馬車が転倒した。


馬車の4輪も車軸からへし折れて使い物にならない。

必死に馬車にしがみついていたバリフェルやシーも何度も身体を打ち付けており、頭を守る事で精一杯だった。


やっと止まった馬車から這い出して、お互いの無事を確認した。身体のあちこちは痛むが、幸運にも打撲だけで骨折などはどこも無い。

壊れた馬車からシーを助け起こし、自身もいち早く回復魔法を唱えて回復した所で異変に気付いたのだと言う。


「何故師匠と私が、こんな事になったのか皆目見当がつかないわ。

こんな事をする意味なんてないもの」


シーが呟く。

小さな声でやっぱり馬車なんか嫌いよ…と付け加えて言ってるのも聞こえた。





木々に覆われた大森林の中、壊れた馬車から2人で食料などを集めていると、向こう側からザッザッザッと足音が聞こえ始めた。

音から判断するにそれも1人2人の足音では無い。最低10人以上の単位の集団が此方を目指してやってくるようだ。魔物が多く住まう大森林に一般人など来るはずがない。

間違いなく武器と装備を揃えた者達だ。


冷や汗がシーを襲う。

この状況下で都合よく助けが来たなんて思わないのは、彼女が過酷な環境で育った事が起因しているのかも知れない。


その事を頼もしく思ったバリフェルは、シーを背に庇い近付いてくる足音と相対する。

すると、先方より革で作られたレザーアーマー一式に身を包んだ兵士の一団が現れた。

30人はいるだろうその集団は物々しい雰囲気を醸し出しており、決して此方を救出しにきたとは思えない。


それでもバリフェルは声を掛けてみた。



「おやおや、物々しい雰囲気ですね。

私達は王都から依頼を受けて参ったルミナス教の神官共です。

色々と行き違いがあったようですが、こうしてお出迎え痛み入ります」


惚けたような物言いに少し毒気を抜かれたのか、兵士達の最奥から1人だけ進み出てきた人がいる。

全身を金属製の赤胴の軽鎧で纏め、ヘルムの奥からは険しい顔で此方に語りかけた。


「我が名はクロイツ。この地方領主軍の一団を預かる者だ。

…そこにおられるはルミナス教の神官でも聖者として名高いバリフェル殿とお見受けします。

報告にあった通りだ。残念ながら貴殿とその子供には死んでもらう」


「…ふむ、理由はお聞かせ願えぬかね?」


予想していた事が現実に起こった。

シーは蒼ざめた顔だったが、しっかりと武器を握っていた。


(これが初陣だ。混乱に駆られ逃げ出さないだけマシでしょうね)


弟子の成長を嬉しく思う反面、この人数を相手に、シーを庇いながら生き残る事が出来るかは至難な業だ。

バリフェル1人ならば突破するも乱戦に持ち込んで撃破する事も、この人数差でも可能だろう。

これからする事は奇跡でも起こらない限りは、2人とも無事でいられる確率はかなり低い。


「死に逝く者に説明など必要ないでしょう。せめて、遺言くらいは聞きましょう」




「では、1つだけ。私は十分に生きました。せめてこの子だけも逃して貰えませんか?」


無言でクロイツが腰の剣を鞘から抜き放つ。

それは出来ないと言わんばかりに…。





そこから2対30以上の乱戦が始まった。

壊れた馬車を背後に武器を構える。

これは逃げ切れないと判断したバリフェルが回り込まれて死角を無くすためだった。


彼は慈愛を尊ぶルミナス教とは反するように、若い頃から戦闘神官としての特別な訓練を受けてきた。

それ故、輝翔の勇者との旅を終えた後は贖罪のためにも元ルミナス教の神官と自ら名乗っていた。


奪ってきた命は人・魔物を通しても数知れず。

奪った命で培った技術と経験は雪崩のように槍を構えて駆けてくる兵士達を前にしても、怯えなど1つもない。


「ルミナス神様の神の慈悲を…」


そう短く祈ると、バリフェルは現役時代から愛用していた魔導金属製の魔杖グラムロッドを構えた。

バリフェルの戦闘スタイルは神官と呼ばれるスタイルとは違い、少々奇抜な分類に入る。

カドゥケウスの杖とこの魔杖グラムロッドを操り、バリフェルが編み出した戦法オリジナル

若い頃はその2杖を片方ずつに握って、敵を殲滅していた。




バリフェルはルミナス教の商家に生まれ育った。熱心なルミナス教信者だった両親は彼に魔法の才能があると解ると非常に喜び、スカウトしにきたルミナス教の神官に預けたのだ。

回復魔法以外にも武才にも優れ、メキメキと頭角を現したバリフェルは戦闘神官としてのエリートコースを着実に歩んでいった。

とある日、邪神を崇める部族とルミナス教とで宗教戦争が起こった。

些細な言い合いから殺し合いに発展したソレは悪意を持って戦争へと発展する。


そして当時19歳のバリフェルは初めての戦に参加し戦功を上げた。

突出した能力を持つ少数精鋭たる戦闘神官クルセイダー隊は、多数の犠牲者を出しながらも倍近い戦力差を覆し劣勢だった友軍を盛り返した。

そしてそのまま、敵の首長をその部隊のみで討ち取る事に成功した。

その武勲で正殿の宝物庫に眠っていた魔杖グラムロッドを希望したのだった。


元々グラムロッドは遥か昔に異教徒を討伐した際に戦利品としての押収したらしいのだが…外観は杖と言うより80cm程の長いただの棒に見えた。

その棒に禍々しく装飾された紋様が所狭しと刻まれている。それが不気味だと誰も欲しがらずに長い間放置されていた品。

しかし、バリフェルは宝物庫から一目見てこの杖の希少さに驚いた。

生まれが商家であるバリフェルは、その紋様が魔力を刻まれる古代紋様だと見抜いた。

それ故、どんな能力があるかは解らないが間違いなく宝具級レアないし魔導級ハイレアだと確信をしていた。


その慧眼通りグラムロッドは魔導級ハイレアの業物である事が後に判明した。

魔導級ハイレアに多く使われている魔導金属で耐久性に優れていた。

魔法鑑定によって魔杖グラムロッドの名と能力が判明する。

カンナッキと呼ばれる製作者は知らなかったが、コレだけの業物を打てる者ならば他に作品もあるだろう。


実は魔法杖に分類されるこのグラムロッドには、魔法に対する補正などは一切ない。

寧ろ対魔法使い用の品物らしく、一定量の魔力を通せば表面にレジストコーティングがかかる仕組みとなっていた。

それによって此方に放たれた攻撃魔法すら叩き潰して拡散させたり、接触すれば生き物ならば体内魔力を利用して与えるダメージが増すといった凶悪な能力が判明。

固有能力として《魔弾》が判明していたが、いくら魔力を通しても作動条件が分からず結局現在も使わず仕舞いで効果も判明していない。


その為、普段は唯の金属の塊としての武器の役割を果たし、魔力が多い者には更に致命傷を負わす確率が高まる。

単純ながらに持つ者が持てば非常に強力な武器へと変貌した。

この杖を得た事により更に戦功を上げて、その功にて輝翔の勇者の仲間の一員として推挙される事になる。







そして、もう1つの杖であるカドゥケウスの杖。

その勇者と仲間と共に苦労して成し遂げた迷宮攻略の際の戦利品だ。

遺跡級ユニークの等級に分類し、回復に特化した魔法の杖だと判明している。

そして、この杖にはヒーリングと呼ばれる強力な固有回復魔法が付与されていた。

普通の回復魔法よりもずっと強く、欠損部位の再生は無理だけど千切れかけた指や腕などはこの魔法で綺麗に元どおりに成る程回復能力が高い魔法だった。

ルミナス教の回復魔法の段階では第4階梯クラス相当で並みの神官すら足元に及ばない程。

何度もこの魔法で窮地を回復させてきた。

しかし、使用条件はあるので誰にでも使えない固有能力だった。



また、魔力媒体としてもかなり優秀であり、他の回復魔法の回復力を上げたり、魔力を使った攻撃に対して大幅な補正が付いた。

苦労して手に入れた品だが、この杖は理不尽にも勇者として異界より召喚された青年に託していた為、手元にはない。



カドゥケウスの杖が回復を担うならば、今の自らの手にあるグラムロッドは攻撃専門の杖だ。



例え魔杖を2つ持ったからと言って唱えた魔法の威力が2倍に上がる訳でもなく、それぞれの魔杖から2つ魔法が出る訳でもない。効果は変わらないのだ。

寧ろ魔力を暴走させてしまう危険性が高かったし、構築させる魔力によっては逆流すらあり得るリスクを伴う。

とてもじゃないが、考えついても試す前に結果は分かりきっている。


魔力を齧った者ならば絶対にしない。そう誰もが考えている事に対して、若き日のバリフェルは違っていた。

その先に新しいナニカがあると信じて独自に研究を重ねるようになった。


誰もがそんな狂気を諌めた。しかし、若いバリフェルは聞き入れずに修練に慢心する。

若かった、それに才能もあった、人よりも魔力もずっと強かったのもある。


カドゥケウスの杖を入手した後に、死に物狂いの修練の末にようやく開眼した極意でもあった。






そんはヤンチャ過ぎた昔を懐かしみながら、回復を弟子に任せてこの状況を打破すべくバリフェルは動き出す。


激しい攻防は敵であるクロイツも唸らせる。多勢に無勢にも関わらず、一向に致命傷も与えられず倒れていくのは自身の兵達だけなのだから。

それでも時間を掛ければバリフェルとて危なかったはずだ。


しかし、その奮戦が神に通じたのか、偶然遠征に来ていたリザードマンの族長たるシュシュバルガが救援に入る事で多くの兵士は打ち取られ、半数以下は撤退していく事になった。



「と、言う訳でこうしてお世話になる事になった。これも神が導きしご縁なのかも知れん」


バリフェルがそう締めくくった。


何というか…もう少し遅ければ危なかったんだ。

それにバリフェルの過去はアグレッシブ過ぎて笑えないが、その経験があるからこそこんなに優しくなれたのかも知れないと思った。


小窓から太陽の光が差し込み始めた。

どうやらすっかり話し込んだ見たいだ。

流石にこれ以上はマズイ。


2人にまた会う約束と辻褄合わせを簡単に打ち合わせして俺はボルデッカ邸を跳び出した。

この2人を匿うことで大きな流れがこの地を襲う事になるとは今は誰もまだ気付いていなかった。


















同時刻、王城内にて2人の男性が相対していた。

1人は宮廷魔術師長ロード・オブ・マジックキャスターたるマクシミリアン卿。

そして相対しているのは灰色の髪を後ろで束ね、気怠そうなな雰囲気を持つ1人の老人。

しかしこの老人の足腰や背筋はピンとしており、見る者が見ればその隙の無さに驚愕を禁じ得ない筈だ。


「どうやら、失敗したようですね」


マクシミリアン卿はそれだけを冷たく言い放つ。

声を掛けられた老人は萎縮する訳でもなく、面倒くさそうに答えた。


「あぁ?そう見たいだな。それがどうしたよ」


欠伸をしながら答える老人は、まるで自分は関係無いかのように振る舞う。


「…僕は貴方に行けと命じた筈ですよ」


少し強めの口調で威圧感を込める。



「オイオイおっかねぇなぁ、宮廷魔術師長さまわよぉ。

こんな年寄りにそんなプレッシャー放つなってんの。別に俺が行かなくとも若い奴に手柄を上げさせたいだけじゃねーの。何カリカリしてんの?」


「はぁ、そんな事を言って貴方が楽をしたかっただけでしょうが。

オーギュスト卿、今度は王命です。確実に果たしてきて下さい」


そう言って王家の印が入った印書を渡された。

じっくりとソレを眺め、間違いない事を確かめると


「へいへい、王命じゃ仕方ない。

面倒以外何者でもないんじゃがのー」



ぶつくさと言いながら腰の見事な拵えの剣帯を叩きながら、場を去っていった。


その場から完全に老人の気配が消えると、女性の声で憤慨した声がマクシミリアン卿の背後より浴びせられた。


「もう、何なんですかあの人は!

それに数々のマクシミリアン様に対してのあの態度…許せません」


その場の白壁からスッと現れたのは、特殊なボディースーツに暗器を忍ばせる小柄の女性。

このスーツは彼女の故郷である極東の国アマテラスの頂点の女鍛冶集団【カンナヅキ】の作品である。

代々の長はカンナヅキの名を引き継ぎ、今代の長は歴代最高の腕前と美貌を誇ると言う。

思い切った関節駆動と可能とし、自動調整などの機能がある。

それに中央に質の高い魔力の宝珠オーブを嵌め込んだ逸品は家宝だった品だ。

天涯孤独となった今では家族を感じられる唯一無二の温もりがあった。




そのボディースーツは身体に密着していてメリハリがくっきりと判り、小柄ながらにボリュームのある胸の大きさだった。


実はマクシミリアン個人を守る為に配置されている特別な護衛であった。

ストレートヘアの美しい黒髪に切れ長の目は美人と呼ぶに相応しい容貌をしていた。

その憤りの言葉に苦笑しながら、こう答えた。


「良いんだよフレイ。あの老人は王命には絶対に逆らわない…いや、逆らえないんだから」


そして少し砕けた口調でフレイと呼ばれた女性に話しかける。

普段の王城でのマクシミリアン卿を知る者ならば信じられないと叫んでいただろう。

いつも氷のように冷たい目線と表情が癖になると、一部のマニアが付くほど感情の起伏が少ない彼なのだから。


「それにあんな人でもオーギュスト卿は世界でも数少ない剣聖と謳われた程の剣の使い手だ。

僕がいくら挑発されようが絶対に手出ししちゃいけないよ?今もわざと君が挑発にのって襲ってくるのを待っていた節がある。

君の腕前は知ってるけど、万が一にもと考えたら僕は悲しいよ」


それを聞いたフレイは感動の余り打ち震えた。


「マクシミ…いえ、若様。私に過ぎた勿体無いお言葉、ありがとうございます。

ですが、主家マクシミリアンに仕え若様のために常に命を投げ出す所存です。

例え相手が…誰であろうとも若様の前に立ち塞がる敵はわたくしが討ちます」


決意を新たに誓う彼女は、本当にマクシミリアンの命令ならば自害すら厭わず笑顔でソレを実行出来るだろう。


そんな幼馴染フレイの忠誠心の高さに優しく目を細めた。


「しかし、聖者であるバリフェル卿の暗殺となればルミナス教全てを敵に回す事になりますね」



「奴らルミナス教とはいずれ戦うするつもりだったから問題はないよ。

まぁ、暫く追求は来るだろうけどのらりくらりと躱して、準備の為の時間を稼ぎするだけだけどね。

ともあれ、目的の為には障害は1つでも減らしておいた方がいい。

現時点ではいくらでも修正が効くから、バリフェル殿を殺しても良し、逆にオーギュスト卿が返り討ちにあっても良いのさ」



凡才たる我がフレイでは、主人であるマクシミリアン卿が何を考えているのか思惑は計り知れない。


しかし、人の考える事の何十手も先を読める程の智謀を誇る主ならばこそ、武しか役に立てそうのない自分は命じられた事を一生懸命頑張れば良いのだとフレイは感じ、また任務へと戻るのだった。


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