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彼女がやる気がない理由

 私のクラスは「モデル・ダンス科」なので、運動が多い。体操着も3種類あり、ダンスの訓練ではレオタード、水泳は当然、競泳水着。体育は体操着で学院の女子更衣室は賑やかである。

「これからダンスの訓練がある。その前に柔軟体操がある」

私たちは、それぞれ個室に入り、インナーを履き白いストッキングを履く。その上にレオタードを着る。みんな違う色の半袖のレオタードを着ているのは、生徒たちが識別しやすいからである。ダンスの部屋には鏡がたくさんあり、自分の体型が見えるし、他のクラスメイトたちの体型も見える。

「さっちゃんは、身体が細いからいいわね」

それを言われても、将来アイドルになるかもしれないから当然である。

「もし男性がいれば、恥ずかしいわ。身体のラインがもろに見えるから」

「肌の露出度が高い競泳水着のほうが、まだ恥ずかしくないのは何故なの?」

「小さい時から男女が一緒に、プールで泳いでいたからじゃないの」



 その時、ダンスの訓練を担当する先生の声が聞こえる。

「これから柔軟体操の練習をします。二人一組になってください」

私たち20人は、10組になり背中を押した。

私の身体は柔らかいので、額が床についた。

「美優、次は私があなたの背中を押すわ」

田中美優は、少しやる気がなさそうだった。背中を押した。

「痛い!もう少しゆっくり押して」

「ごめん」

美優は寮の同じ部屋で住んでいるが、私たちとは、いつも別行動しているし、いつも考え事してボーとしている。

「美優、身体が硬いわ。もう少し頑張りましょう」

「ゆっくり背中を押してね。お願いだから」


 私は美優の背中を押した。やっと額が床についた。


 次は足を高く上げる練習を行った。私の足は軽く垂直に上がったが、美優は苦しそうだった。


 それからダンスの練習を行ったが、美優だけがダンスの先生から注意された。


「それでは、今日のダンスの訓練は終わります。で、田中さん、少しぎこちないみたいですから、あと30分ばかり私とワンツーマンで訓練をしましょう」

美優の表情が暗かった。


 私たちは午後のダンスの訓練を終え、一人一人が女子更衣室のシャワーを浴びてボディソープで身体を洗いシャンプーとリンスで髪を洗った。そして、バスタオルで身体を拭き、タオルを巻いて、個室で新しい下着を履き制服を着て寮に帰る仕度をした。


 レオタード姿の美優の表情が暗い。彼女はダンスの先生から厳しく指導されたみたいだった。


 寮の同じ部屋に住む田中美優と一緒に帰った。彼女は無口だった。入学して1ヶ月、私たちはアイドルになる夢を見ているが、彼女は違う。

「私、この学校をやめたい」

私に、こっそり話した。

「どうして?」

「実は私の親が半強制的に、この学院に入学させたから」

「だって、日本列島各地から多くの応募者から選ばれたから、他の私立学園と違って学力だけでは入学できないのよ」

「私、ほんとうは美術などを習いたいの。でもお母さんが、アイドルになれば何もかもバラ色だと思って小学4年生の時から、この学院に入学させるためにダンス教室や水泳教室、それに女子バスケットクラブとかで強制的に鍛えさせられたのよ。学科試験に合格するために塾を二軒ハシゴしたから、テレビなんか観る暇は全然なかったの。私に自由な時間がないの」

「でも全員がアイドルになれるとは限らないし、アイドルデビューしても一躍人気者になって有名になれるとは限らないわ。私もアイドルになりたいために、この学院に入学したけど、もしアイドルになれなくても、社会に出た時に役に立つと思うの」

「だって毎日、水泳や体操、ダンスの練習ばかりで、身体がもたないわ。自分が学びたいことができないのは、とてもつらいのよ」

「もし変なこと言ったら、ごめんね。担任の南先生とよく相談したら」

「わかった。心配かけてごめんね」


 私と美優は寮に着くと、喫茶室で紅茶を飲んだ。テーブル越しで話し合った。

「美優、私に悩みごとを話してくれてありがとう。話しにくかったでしょう」

「うん。他の2人には内緒にして。それに、私、一人で行動したいから」

その時、寮内で働く職員も私たちが座っているソファーに座った。

「何の話しをしているの?」

「たいした話しではないわ」

その時、美優は自分から話した。

「私、親が決められたレールに走らされているの。本当はアイドルに興味ないの」

「そうなの!」

寮の職員さんは驚いた。

「倍率が高いし学科試験も体力試験も厳しいのに、良く入れたね。この学院は料理の勉強とか裁縫、衣類の勉強、デザインなどの勉強などがあるから、別にアイドルを目指さなくてもいいじゃない。意外と応用範囲は広いし、学院を卒業したら自分の好きな勉強をしても遅くないから」

美優は紅茶を飲み終えた。

「そうね。なんだか少し励まされたみたい。とにかく卒業まで頑張ってみるわ」

「さっちゃん、私の悩みきいてくれてありがとう。それから職員さんも、助言、ありがとう」

 美優と私は、同じ部屋に入って学校の勉強をした。



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