1-4 ギルドで手続きを終えるまでがクエストです
「ただいまー」
「おう、おつかれさん」
「早かったじゃねーか」
詰所に戻り扉を開くと、見張り連中のねぎらいの言葉が飛んだ。鎧を着込んだおっさんがオレに視線を向ける。
「どうだ、坊主はうまくやれたのか?」
「……まぁ」
詳細は語りたくない。あんなもん言えるか。史上最悪のバトルシーンだ。
おっさんが笑う。
「がっはは、リア、しっかり坊主の面倒見てやれよ」
「言われるまでもないよ。今回でランクもアップするはずだし」
「おお、そいつぁめでてえな」
豪快な笑い声が部屋に響く。
「坊主もいつまでもリアのケツに敷かれてんじゃねえぞ!」
余計なお世話だ! オレだって好きでやってんじゃねえよ!
「それじゃ、また来るね」
見張り共に声をかけると、リアは来た時とは違う方の魔法陣に乗った。オレもそちらに乗る。
青い光に包まれ、それが収まるとオレたちはギルドのゲートに戻っていた。そのまま受付の部屋まで戻ると、アンジェラが同僚らしき女の子と雑談を交わしていた。
リアが声をかける。
「アンジェラ、終わったよー」
「ふふっ、二人ともお疲れさま」
アンジェラが微笑みかけてくる。あれ、よく見るとこの子かわいくね?
受付まで来ると、リアが腰元の袋から薬草を取り出した。
「まずこれが薬草ね」
「はい。……確かに」
軽く薬草をチェックするアンジェラ。
「OK、クエストクリアね。それじゃ、まずは報酬の300リル……はい、どうぞ」
そう言いながら、銀色のお金らしきものを二枚と小さな袋を二つリアに手渡す。あれ一枚が100リルって事かね。
「それにしてもさぁ、このクエストで300リルって太っ腹だよね」
「そうね、相場の倍以上かしら」
「うんうん、6階の仕事なら100からいいとこ150リルってところだもんね」
「きっとかなり急ぎの用事だったんでしょう。リアたちはラッキーだったわね」
だよねー、と相槌をうちながらリアがオレに銀貨と袋を一つずつ手渡す。
「で、ルイのレベルなんだけど」
「はいはい、ちょっと待っててね」
そう言いながらアンジェラが何やら腕輪のようなものを二つ取り出した。
「じゃあルイ君、まずこっちに腕通して」
「あ、ああ」
腕輪には十個の玉が埋め込まれ、真ん中にはラインが一筋通っている。言われるままに腕を通すと、まず九つの玉が光り、次いでラインが光り出した。ラインはゲージが伸びるかのように真ん中からぐんぐん伸びていく。やがてラインは一回りし、玉も全てが明るくなった。
「おめでと。これでルイ君もレベル11、晴れてEランクプレーヤーの仲間入りね」
「よかったねー、ルイ」
「それじゃ、一応こっちもつけてみて」
手渡されたもう一つの腕輪に腕を通す。すると今度は玉は光らず、ラインが少し伸びただけだった。
「次のレベルまではまだ遠いみたい」
「大丈夫、私が鍛えてあげるから」
どうやらこの十個の玉がレベル、ラインが経験値を示しているらしい。てかこんな風にレベル判定するんだな。ゲームなんだからウィンドウ開いてステータス確認でいいじゃんよ。どんだけアナログなんだ、この世界。
「じゃあアンジェラ、次のクエストなんだけど」
「はいはい、どの辺にする?」
「そうだねぇ、ルイもEランクになった事だし11階から15階でお願い」
「了解、じゃあこんな辺りかしら」
リアが次のクエストを物色する。思い出した、『デモグラ』ってパーティーランクがEでもFランクのメンバーがいたら10階までしか行けないんだっけ。オレがEランクになった事で晴れて15階まで行けるようになったわけか。
「うん、これにするね」
しばらくクエストのメモを吟味していたリアは、やがてその中の一枚を拾い上げた。
「了解。ここにはいつ来るのかしら?」
「うーん、しあさってでいいかな?」
「がんばるわねぇ。わかったわ、それじゃ今日はお疲れさま」
「うん、ありがとー」
オレに何の確認もせず次の仕事の日程を決めるリア。まあ、オレは何にもわからんからいいけどさ。軽くあいさつを済ませてオレたちはギルドを出た。てか毎回今日みたいなバトルが続くのか……? 冗談じゃねえぞ。
今回は地味な事後処理パート。
ステータスウィンドウがあれば各パラメータやスキル有無が一目でわかるので、ルイ君の絶望もひとしおだったでしょうが(笑)。そうなるとギルド職員の皆さんのお仕事が激減してしまうので、ウィンドウは泣く泣くボツとしました。
パラメータいちいち考えるのがめんどくさかったわけじゃないよ、多分。