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序章   朝から家にピンク髪の女の子とか、どんなギャルゲだよ




 ……どうなってるんだ?


 今、「自宅」を出たオレは桃色ショートカットの女の子と一緒に冒険者ギルドに向かっている。


 ……いや、冒険者ギルドって一体何なんだよ。オレはついさっきまで、ごく普通の大学生だったはずだぞ? 大体、その「自宅」ってのもオレの家とは似ても似つかない建物だったんだが。さっきこの女から聞いた話だって、とてもじゃないが信じられない話ばっかだ。


 そう、まるでゲームの中にでも入っちまったかのような。






 今朝目が覚めると、オレは寝ぼけたままとりあえず布団から出ようとして……そこでふと気づいた。うちってベッドじゃなかったっけ?


 やっべ、昨日の夜の事とか全然憶えてねえや。……もしかして一夜の過ち、やっちゃったのか? オレ女とつき合った事なんかただの一度もないけど。


 なんて事を思いながら家の中を見渡すと、どう考えても様子がおかしい。電化製品がひとつもないのだ。それどころか、置いてある家具もやたらと粗末なものばかり。おいおい、なんで何から何まで全部木製なんだよ? プラスチックも全然ないし、ていうかとにかく物が少ねえ! 


 どうなってんだと起き上がって、さらなる異変に気づく。あれ、なんか視界がおかしい……? 妙に目線が低い。寝ぼけてるのかと目をこすろうとしてまたびっくり。腕が……何これ? 白っ! 肌白っろ! しかも細っせえ! ちょっと待て、どうなってんだ、と鏡を探し、見つからないので桶に張った水を覗き……絶句する。


 そこには、典型的日本人であるオレの顔とはかけはなれた、金髪で白い肌の少年の顔が映っていた。




 しばし呆然としていたオレだったが、さらに妙な事に気づく。明らかにオレの部屋ではないその部屋の中を見回していると、その部屋での生活の記憶が甦ってきたのだ。何日か前に皿に山盛りのサラダを食べた記憶や、つい最近すねを机にぶつけた記憶。どういうことだ? オレはこんな部屋に来たことねーぞ? てか、こんな部屋今時日本にねーよ! 今時ってレベルですらねえ! いつの時代だよ!


 謎のちょいイケメンと化した自分と見覚えのない部屋、徐々に甦る全く身に覚えのない記憶。そんな状況に戸惑いながらも、腹が減ったのでとりあえず朝食をとることにする。考え事より、まずメシだメシ。当然冷蔵庫もないのだが、なぜか食材のある場所も憶えていれば、全然やったことがないはずの料理もなんとかできてしまう。ホントどうなってんだよ……。




 朝飯を食い終わり、さて今の状況を考えようと思った矢先、ドアを叩く音が聴こえた。


「ルイー、入るよー」


 お、女の声だと!? こんな朝から? 対応を検討する暇もなくドアが開かれる。っておい! 勝手に開けんなよ! てかカギかかってねーのかよ!


 入ってきたのは、16,7歳くらいの女の子。白い肌にそこそこデカい胸、そして……ピンクの髪ぃ !? こんな色、アニメかコスプレでしか見たことねーぞ! ゴワゴワしたシャツの上にピラピラのジャケットをはおり、下は短パンだ。腰にはなんか小さな剣みたいな物をぶら下げている。


 そしてなぜかこの子の顔を見るだけで、名前やら何やらが思い出せてしまう。何で初めて会ったコの事がわかっちゃうんだろうか? オレの脳ミソ、イッたのか?



「お前、リアって言うんだよな」


「はぁ? 何言ってんの?」


 オレの問いに、訝しげな顔でピンク頭ちゃんが問い返す。


「あれ? 違った?」


「違うわけないでしょうが! 何か悪いモノでも食べたの?」


「いや、オレにもよくわかんないんだけど……」


 どうやら目の前の子はオレと親しい人物のようだ。だったらこの子からいろいろ聞き出す事にしよう。それが一番無難そうだ。


「とりあえず、君が何の用でここに来たか聞いていいか?」


「何さ『君』って。キモいよ。今日はギルド寄ってクエストだって昨日言ったじゃん」


「すまん、いろいろ質問させてくれ」


 何だよギルドとかクエストって? どこのゲーム世界の住人だよ。しかしまたしても、話を聞いていると昨日この子と話してた情景やら内容やらがオレの脳裏に思い浮かぶ。これはホントどういう事なんだろうか?


「まず、ここは日本か?」


「はぁ? ニッポンって何?」


 はぁ? じゃねえよ! 日本知らないとかありえないだろ! 


「じゃあここはどこなんだよ!」


「だから何言ってんの? 今日何か変だよ?」


 こんなやりとりをしている間にも、例によってオレはここの国名と街の名前を思い出していた。

 

 レムール王国王都ロニアン。


 わかった、夢だこれ! もう断言できるわ! なぜって? だってこれ、オレがやってたゲームの国と街の名前だもん! 


 まあ、夢だとわかれば後は簡単だ。せっかくこんなカワいい女の子といっしょにいるんだし、楽しまなきゃ損だろ絶対!


「よしわかった! わかんないけどわかった!」


「ホントどうしちゃったの?」


「なんでもない! よし行こう!」


「変なヤツ~」


 リア、だっけ? 女の子が不審者を見るような目でオレを見る。そんな視線をしかしオレは気にも留めない。夢だとわかればクエストでも何でもやってやるさ! 




目が覚めると見知らぬ部屋、ピンク髪のボインちゃん、そして謎の記憶再生。

自分の置かれている状況がいまいち把握できていない主人公の明日はどっちだ?

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