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1-1  職業『詩人』とか、どんだけ地雷職なんだよ




 そんなわけで、今オレたちはギルドに向かっている。しっかし見れば見るほど『デモグラ』と同じ町並みだな。平屋や2階建ての石造りの家ばっかりで道も舗装されていない。どう見てもここが横浜じゃないのは明らかだ。


 『デモグラ』ってのは『デモンズアンダーグラウンド』の略で、オレが高校の頃ハマってたVRMMORPGだ。魔法はなくて全60階の地下迷宮をひたすら潜っていくっていう、まあどこにでもありそうなゲームだな。選べる職業は剣士、槍兵、弓兵、斧兵、盗賊、格闘家、僧兵の7種類あり、お察しの通り剣士と槍兵の人気が高い。


 また、遠距離攻撃ができる弓兵や各種探索用スキルを持つ盗賊、神の加護による回復スキルを持つ僧兵は人数が少ないこともあってかなり重宝されるので、新規にプレイする奴や女の子には人気がある。


 格ゲーマーから入ったヤツには格闘家を選ぶのも多いみたいだが、なんせ射程が短いのでかなり上級者向けの職業だ。別の意味で上級者向けなのが斧兵で、こいつは戦闘能力は結構高いんだが、いかんせんビジュアルが絶望的にヒドい……誰得なんだよあのデザイン!



 ギルドもやっぱりゲームで見たとおりの門構えで、大きな扉が開け放たれている。中に入ると受付に何人か女の子が座っているのもゲームと同じだ。リアは左端の方にいる赤毛の子に話しかける。


「やあアンジェラ、来たよ~」


「いらっしゃい、お二人さん」


 気さくに答える受付ちゃん。


「今日のクエストだけど」


「はいはい、地下6層の薬草採取ね。パーテイーランクEだから、ルイ君に無理させなければ問題なくクリアできるわね」


「ちょっと待てよ? オレらってそんなに弱いの?」


「当たり前でしょ、アンタまだFランクなんだし」


 何だこの夢はぁぁ! 何で自分の夢の中なのにこんなショぼい扱いなんだよ! こういうのはオレTUEEEEしてハーレム作るのが定番だろうが!


「まあ、ルイ君は詩人だしね」


「……は?」


 わりと意味がわからない。困り顔で何言ってんだこの人。


「いや詩人って、オレそんなポエミーな事言った?」


「だって、ルイ君は詩人でしょう?」


 不思議そうな顔をするアンジェラ。いや、わけわからんのはこっちだって。


「ごめんね、コイツ今朝から何かおかしいんだ」


「いやおかしいも何も、詩人って何の事だよ」


 ややイラッとして問いただすオレは、しかし心底呆れたという様子のリアのセリフに絶句してしまうのだった。


「何ってアンタ、まさか自分の職業も忘れちゃったの?」


 ……? 


 は……?


 はああぁぁぁぁぁぁぁあ!?



 おい、ふざけんなよオレの夢! 何だよ詩人って! そんな職業ねーよ! てかよりによって詩人とかどんなセンスだよ! まともに戦ってる詩人なんか見た事ねーぞ! 某RPGのすぐに隠れるニート王子様かよ!



「あ、アンタホントに大丈夫……?」

 

 心配そうに、というか幾分引き気味にリアがオレに声をかける。てか今の、声に出てたのかよ! 気が利かないにもほどがあるだろ、オレの夢!


 見ればアンジェラの方は明らかに引いている。いや、なんていうか、もはや憐れみの表情じゃないか、あれ?


「報酬は300リルですので。パーティーランクEですから、地下6階へはあちらのゲートをお使いください。それではお二人ともがんばってくださいね」


 事務的な口調で言うとアンジェラは後ろで待っていた一団にお待たせしました、と声をかけた。もうオレの相手はしたくないって事かよ!

 とは思いながらも、ジャマにならないようにその場から少し離れる。



「ねえ、調子悪いなら今日はやめとこうか……?」


 リアが本気でオレを心配する。美少女に本気で気遣われるシチュってのは確かにグッとくるんだが、何か釈然としないものがあるな……。


「大丈夫だ、行こうぜ」


 つとめて冷静に答えてみせる。てかどこが大丈夫なんだよ! 詩人がどうやって戦うんだ? 歌でも歌ってろってか? 寝言は寝て言えこの野郎!




 『デモグラ』では、迷宮移動のショートカットとして「ゲート」というものがある。パーティーランクによって使えるゲートに制限はあるが、これがあるお陰でそうそう野営するハメに陥る事はない。もっとも、このピンク髪少女とキャンプできるならむしろそっちの方がオレは嬉しいがな。


 ゲートに着くと、ふと気になる事があってリアに声をかけた。


「ところでさ、リアの職業は何なんだ?」


「……アンタ、ホントに私をからかってんの?」


 そんな気は毛頭ないんだが。確かに装備を見れば盗賊だという事はすぐわかる。てかもうオレの記憶の方でも再生されてるんだけどな。この過去の記憶らしきものは何なんだよ。演出?


 んな事より、何だよ盗賊と詩人のパーティーって! 戦闘能力ゼロじゃん! 確かに盗賊の女の子は貴重だから人気があるって言ったけどさ! まともなパーティーに参加しなきゃただのザコじゃん! 何をトチ狂って詩人とつるんでんだよ! てかそもそも詩人て何だよ! 話戻るけど!



「さて、それじゃ行くよ」


 二人でゲートの魔法陣みたいなものに乗ってしばらくすると青い光に包まれる。それもつかの間で、光が消えると先ほどとは違う部屋に転移していた。



 部屋は結構広く、数人が集まって雑談したり本を読んだりしている。そのうちの一人がオレたちに気づいて声をかけてきた。



「やあ、いらっしゃい」


「やっほー」


 リアとこいつらは顔見知りのようだ。オレの記憶には……ない顔だな。


「そっちの兄ちゃんは初めて見るな」


「連れて来たのまだ二回目だからね」


「そうか、まあリアと一緒なら問題ないだろ」


 どうやらリアは結構優秀な冒険者らしい。盗賊なんて戦力になるのかよと思ってたんだが、意外だ。もしかして詩人も結構強かったりするのか? てかオレまだ自分が職業詩人であることを受け入れられないんだけど。



「それじゃ、二人とも気をつけてな」


「ありがと」


 軽く手を振りそう言うと、リアは扉へと向かった。オレも後に続く。


 扉を開くと、外にはいかにも洞窟といった空間が広がっていた。ゲームでよく見るダンジョンみたいな感じだ。振り返るとそこにはちょっとした交番くらいの建物があった。なるほど、ゲートを守るための詰所か。『デモグラ』でもそうだったな。外を見回っている奴も二人いる。


「さーて、じゃあ行きましょうか」


「おう」



 こんな調子で、オレの初めてのクエストは幕を開けるのであった。いや、明らかに前途多難だろこれ。




自分の立ち位置に戸惑い憤慨するルイ君。ま、そりゃそうだよね。

実際の所、MMORPGで詩人なんていたらどうやって戦うんでしょうね。

「ん○ゃ砲」みたいなのを飛ばす感じ?

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