表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/36

Dランク、ソロ突入

チャンネル登録者七万超えの翌日、俺はギルドに来ていた。


受付の列に並びながら、ダンジョン申請書に記入する。ランク欄に「D」と書いた。


「……ちょっと待ってください、榊さん」


カウンターの受付員が眉をひそめた。三十代くらいの男性で、俺の顔を見てから書類を二度見した。


「E級からの申請でしたよね。Dへのランクアップには審査が」


「ランクアップじゃないです。Dランクダンジョンへのソロ入場申請です」


「……ソロ、ですか」


「はい」


沈黙があった。


Dランクのソロ攻略は違法じゃない。ただし申請者が過去にDランク以上のダンジョンに入った記録がない場合、ギルドの窓口で口頭の確認が入る。要するに「本当にわかってるの?」という確認だ。


「榊さんの記録を確認すると、直近はEランクのソロ攻略ですね。あの……正直に聞きますが」


受付員が声を落とした。


「もしかして、昨日話題になってた配信者の方ですか?」


俺は一瞬止まって、「そうです」と答えた。


受付員は複雑な顔をした。止めたいが止める理由がない、という顔だった。


書類にスタンプが押された。


━━━━━━━━━━━━━━━━


Dランクダンジョン、第三新宿開口部。


地下鉄の廃線跡を改装した施設で、都内では中規模の攻略対象として知られている。モンスターの平均レベルは十五から二十五。ソロでクリアする探索者は少数だが、存在はする。


俺はダンジョン入口の前でヘッドカムを装着した。


スマホのアプリを開いて、配信を立ち上げる。


「今日からちゃんと配信します。榊誠二です。Dランクダンジョンにソロで入ります」


コメントが流れ始めた。


『え、いきなりD?』『正気か』『草』『待ってた!!』


「正気かどうかはわかりません。でも入れます。理由はスキルの性質上、一人の方がやりやすいから」


コメントがまた増えた。『スキル詳しく教えて』『構造透視ってどんなスキルなの』


「説明は中でします。行きますよ」


入口をくぐった。


━━━━━━━━━━━━━━━━


地下十メートル。


石造りの壁が続く通路は、照明が等間隔に設置されていて視界は悪くない。ただし廊下の幅が狭い。二人並んで歩けるかどうかというくらいの幅だ。


俺は壁に手を当てた。


《構造透視》が発動する。


「見えました」


俺はカメラに向けて説明した。


「この壁の中に、空洞が一個。横幅二十センチ、縦十センチくらい。正面から三メートル先の床に、圧力感知式のトリガーがあります。つまり、ここに罠があります」


コメントが止まった。


一拍の沈黙のあと、爆発した。


『えっ』『マジで?』『それ見えてるの?』『壁の中が???』


「見えてます。スキルを使えばダンジョンの構造が透視できます。壁の中の空間、埋まってる金属、内部の圧力変化。全部わかります」


俺は三メートル手前で立ち止まって、床の右端を踏んだ。


「罠は床の中央部分に仕掛けてあります。端を踏めば作動しない」


一歩。もう一歩。


パスした。


後ろで何かが動く音がした。振り返ると、天井から石の棒が降りてきていた。中央に踏んでいたら、後頭部に直撃していた。


『回避した!!』『え怖すぎ』『普通に死んでたじゃん』『解説付きで見ると余計やばい』


「Dランクの罠はこういうやつが多いです。別に難しくない。見えさえすれば」


俺は前に進んだ。


━━━━━━━━━━━━━━━━


三十分で七つの罠を無力化した。


モンスターとも三回交戦した。どれも《構造透視》で内部構造を把握してから攻撃した。スケルトン系は骨格の接合部分が弱い。スライム系は核の位置が見える。全部一撃ではないが、無駄な動きがない。


コメントの流速は、入った時の倍以上になっていた。


同時接続者数を確認する。


「四千二百人」


俺は呟いた。E級の配信より全然多い。


「もうすぐボス部屋です」


廊下の奥に、重い扉が見えた。


Dランクのボスモンスター。こいつを倒せばダンジョンクリアになる。


俺は立ち止まって、扉に手を当てた。


《構造透視》を扉に向けた。


「……」


扉の向こうに、大きな質量の塊が見えた。サイズが想定より大きい。二メートルはある。


でも問題はそこじゃなかった。


俺がまず驚いたのは、見えたものの複雑さだった。


外殻の下に、エネルギーの反応が三か所。三つの点が、それぞれ違うリズムで脈動している。


「初めて見た」


俺は思わず声に出した。


コメントが来た。『何?』『何が見えてるの?』


「ボスの内部構造が、全部見えています」


扉に手を当てたまま、俺はカメラに向けた。


「こいつ、弱点が三つある」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ