表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/32

壁の向こう側

壁を叩いた。


コン、と軽い音がした。


「空洞だ」


《構造透視》の映像では、壁の厚みは三十センチ程度だった。向こう側の空間との間には、ほぼ石一枚しかない。


どこかに入口があるはずだ。


壁沿いに手で探っていくと——ほんの少し、石の継ぎ目に出っ張りを感じた。押す。


音もなく、石が内側に動いた。


隠し扉だ。


「……本当にあったのか」


通路の向こうは、暗かった。ライトを向けると、埃一つない石畳が続いていた。Eランクのダンジョンじゃない。作り込みが違う。壁面の彫刻、天井のアーチ、床の紋様——上位ランクのダンジョンで見る様式だ。


踏み込む。


奥に進むと、広間に出た。


そこには棚が並んでいた。木製の、古い棚。上に置かれているのは、装備品だ。


ナイフ、剣、ブーツ、マント、指輪。どれも光を帯びている。素材の質が、明らかに違う。


「……なぜここに」


一つ手に取る。短剣だ。《構造透視》で解析すると、金属の成分がすぐに出た。


《素材解析:深層鉱石「ヴォルケナイト」——Aランク相当》


Aランク。


Eランクダンジョンの隠し部屋に、Aランク素材の武器が眠っている。意味がわからない。誰かが隠したのか。管理された場所なのか。それともダンジョンの生成バグか。


考えても答えは出ない。


「……とりあえず、回収するか」


淡々とバッグに詰めた。短剣、指輪二つ、小さな魔導石の塊、布製のマント。全部で七点。重量は問題ない。


最後に棚の奥を確認すると、折り畳まれた羊皮紙が一枚あった。文字が書いてあるが、現代語じゃない。後で調べればいい。バッグに入れる。


帰還ゲートを使って地上に戻った。


渋谷の深夜。人通りはほとんどない。ビルの谷間に立って、バッグの重さを確かめる。


スマホを取り出す。充電が半分残っていた。時刻は午前二時過ぎだ。


通知が来ていた。


一件じゃない。


「……なんだ」


画面をスクロールする。SNSの通知。フォロワーからのリプライ。見知らぬアカウントからのメンション。チャンネルの登録通知。


数が増えていく。見ている間にも増えていく。


俺のチャンネル? 俺はチャンネルなんて持っていない。


いや、待て。


頭にカメラをつけたまま、ダンジョンに潜った。


あのカメラ、配信機能がついていたか?


スマホの通知が鳴り止まない。なぜだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ