新たな遊びを考えよう。
8月にもなり、蝉の鳴き声は更に加熱していた。
公園の隅っこ、トイレの裏側の日陰に金城、修吾、蓮の三人がいた。
金城は緩くなった飲み物を飲みながら話していた。
「よし、靴飛ばしをしよう」
「いきなりかよ」
修吾は嫌そうな顔をし、蓮も両手を振って拒否している。
「金城君の脚力強過ぎて、誰も勝てないよ」
「そうだぜ。屋上超え出来るやつに勝てるかよ」
二人に対して金城は手を突き出した。
「案ずるな。今更普通の靴飛ばしはせん」
「と言うと?」
修吾に呆れた様子で聞かれると、金城はキめた顔で答えた。
「普通のじゃつまらん。だからこそ"靴飛ばし〜シャドウズ〜"をする。俺らサンダルだが」
「「靴飛ばしシャドウズ?」」
聞き慣れない遊びに二人が聞き返した。
そこで金城はルールを説明した。
「名前はアレもルールは簡単だ。1つ、通常ルール同様に靴を飛ばす。その2、ここから特別ルールだ。飛ばした靴を日陰の中のみ歩いて、飛んだ靴を再び履く。それが自分の距離となる。その3、日が差している所を歩くのは禁止だ。その4、日が差している場所を歩いたりした場合は失格とする」
「つまり飛ばしすぎても、落ちた場所が日差しが良い場所から点数は入らずって事か」
「そうだ。これは距離よりも、いかに遠く飛ばしつつ、影の中を通って靴を取りに行けるかが勝負だ」
金城は見本を見せようと日陰の中より、力を込めて足を思いっきり振り、サンダルをぶっ飛ばした。
空高く飛んで行き、50メートル先の公園の隅っこまで飛んで行った。
「まずはこんなもんか」
「まずでそこまで飛ばすか普通」
「こっからだ。ここから取りに行けなければ飛距離とはならないんだよ」
金城は便所の影の中から走り出しって、影から出る直前に走り幅跳びのようにジャンプして、五メートル程離れている滑り台の影に着地した。
そして滑り台の棒から上によじ登って滑り台へと立った。
「そこは大丈夫なのかよ」
「地面じゃなきゃいいんだよ!ここは地面じゃないからセーフじゃ!」
金城は滑り台を走って、またも高くジャンプした。
ブランコの足場にバランスよく着地し、ブランコを漕ぎ始めて振り子のように大きく振り、180度も回転した辺りで、空高くブランコより飛び立ち、ジャングルジムの頂上へと綺麗に着地し、バランスを保った。
「す、凄い……」
「体操選手みたいだ……」
そのまま金城は不安な足場のジャングルジムも端から端まで走って、またまたジャンプしてクルクル回る球体のアレの上をジャンプして、シーソーの上に着地して走り、横にあった鉄棒の上に乗って、公園の隅までバランスよく走って行った。
「そらっ!」
鉄棒からジャンプして、体操選手のように体を回転させながら入り口付近に落ちているサンダルを着地と同時にスポっと履いた。
そしてゼェゼェ息を荒げて、金城は二人に声を上げた。
「どうだ!これが靴とばしシャドウズだ!やるか!」
「そんかサーカス団のような事出来るかよ!」
日陰の中からキッパリとツッこんで断る修吾。
金城が蓮に目線を向けるも、蓮も両手を振って断る。
「僕らは一般人なんだから無理だよ。そこまでのフィジカルはないよ」
「ちぇ、パワーがない奴らめ」
「金城君がありすぎなんだよ……」
「しょうがねぇな。違う遊びすっか」
と金城に言われて二人はブランコの前に連れてかれた。
「今度は何すんだ?」
「"靴飛ばしフライアウェイ"だ」
「また靴飛ばしかよ」
「今回は単純明快なルールだ。見たろ」
自信満々な顔を見せて、金城はブランコを立ち漕ぎし始めた。
二人は金城が何をするか分からない為、ただただ漕いでるのを見ている。
「見てろよお前ら!」
漕いでいるとブランコは180度回転し、勢いが凄まじくなっている中、金城はブランコが上に上がるタイミングで靴を斜め45度にぶっ飛ばした。
「ピョッ!」
ぶっ飛ばしてもう一度漕いだ時、飛び出すようにジャンプして飛んで行った靴を追いかけて行く。
猛スピードで追いかけて、落ちていく靴目掛けてジャンプして空中で足を靴に入れて着地した。
「どうだ!フラウアウェイだろ?」
両手を膝に当ててゼェゼェとより息を荒くして、親指を立てて言う金城。
「そんな事出来るわけないだろ!」
「アクロバティック過ぎる……」
「だいたい、疲れない遊びしたいのにゼェゼェじゃんかよ!」
二人のツッコミに金城は無視して水飲み場で水を飲み、顔を洗って済ました顔で言う。
「……とにかくだ。遊びは子供の想像力高める教養かつ運動能力向上が見込め、チームでの行動心理を勉強出来る賜物だ」
「何、専門家ぶったセリフ言ってるんだよ」
「そりゃあ現代の子供は馬鹿やジジババの文句で遊び場を失っている。この公園だって、いつこの遊具が無くなるか分からない。その時に、求められるのはこの頭脳とひらめきが大事なんだよ」
金城の熱弁に暑さすら感じて引き気味になる二人。
まだ弁論は続く。
「この公園が閉鎖されたら何が出来る。家で遊ぶか?ゲームか?カードか?そしたら、今時の若者はと揶揄される!だからこそ、この閃きにより無限の遊びの可能性を掘り当てるのだ!」
「何か元の話題と俄然離れている気がするが?」
修吾の言葉に耳を貸さず、スマホを取り出して何処かへと電話をし始めた。
「久しぶり!お前の力を貸してくれ!お前の遊び魂を俺のダチ共に叩き込んで欲しいんだ」
「何処に連絡してるんだ?」
「分かった!すぐ来てくれ!」
誰かに連絡して、電話を切った金城。
蓮が聞いた。
「誰に電話したの?」
「遊び魂に精通したプロを呼んだ」
「遊び魂?」
「あぁ」
そして数分後──
公園に猛スピードで自転車が接近して、入り口にキキッーーとブレーキ音が鳴って止まった。
「来たな」
「え?」
公園に入ってきたのは白いTシャツに短パン。麦わら帽子、大きな虫とりあみ片手に、肩には緑色の虫籠。日焼けした薄黒い肌と、古めかしい田舎の少年が現れた。
「よう金坊!久しいのぉ!」
「おっす、とっちゃん!」
少年と金城は互いの肩を叩き合って、何か喜びを分かち合っていた。
「誰?」
「俺の同い年の従姉妹のとっちゃんだ」
金城が説明すると、とっちゃんは二人の前に出て早速遊びで伝授させようと自分の胸を叩いた。
「オメェらに遊び魂を教えてやらぁ」
「不安しかねぇな」
とっちゃんは自転車の荷台に括り付けられている段ボールを持って来た。
そしてその中身を開けて、二人に見せつけた。
「まずはこのロケットブースター付きの靴を用意します」
それは大きめなローラースケートのような見た目をし、踵部分にはジェット反射のエンジンが装着されている。
「また靴かよ!」
「ノンノンノン。靴イコール靴飛ばしと考えるのは脆弱すぎねえか?」
「なんか腹立つ……」
ムスッとする修吾を横目にして、とっちゃんは靴の付け根にあるボタンを押すと両足裏部分からジェットが反射し、徐々に宙へと浮きバランスをとって金城達にドヤ顔を決めた。
「近未来感は溢れてすげえやろ!」
「すげぇバック◯ゥザ◯ューチャー2の宙に浮くボードみたいだ!」
「そらそら見ろ!こんな感じで!」
とっちゃんは更に火力を高めて、空中を飛び回り初めて、何回転もして金城達を盛り上がけてくれた。
だが──
「ん?」
片方の噴射口のジェットが突然出なくなった。
「やばっ、まだ試作段階だったか。だがこんくらい!」
と、とっちゃんは壊れていない方のジェットを噴射を弱めて地面に着地しようとした。
だが、その時突然としてもう片方のジェットが一気にフルエネルギーで反射した。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「突然どうした!?」
「エンジンが逆流してもうた!」
制御も出来ず、とっちゃんは猛スピードで宙を舞い、あらゆる場所に飛んで行く。
金城らの真上を通過して、木に直撃して木は折れた。
それでも、とっちゃんは止まることはなく、縦横無尽に飛んで行き、あらゆる遊具に激突してぶっ壊していき、どんどん公園内が崩壊していく。
「これやばいんじゃないの!?逃げた方がいいよ!」
「いや、俺が止めてみせる!とっちゃんの為にも!!」
「そんな正義いらねぇよ!」
修吾が怒って、蓮と共に公園から撤退した。
金城はとっちゃんを止めようと、金城の元に飛んできたとっちゃんの頭を両手で抑えた。
このまま速度を落として勢いを殺そうとする。
だが──
「ぐわっ!!」
金城は徐々に押されていき、それでも何とかして止めようと力を振り絞った。
すると、ジェット反射の勢いで金城の足が浮いてしまい、金城も共に勢いよく空へと飛んでいってしまった。
「うわぁぁぁ!!」
「何やっとんじゃ!!」
金城ととっちゃんは制御出来ずに飛んで行き、トイレの壁を突き破った。
そしてトイレの中でジェットが大爆発を起こし、公園外からは大量の野次馬とパトカー、消防車などが集まって行くのであった。
次の日──
"先日、近所の子供達が大騒ぎをして公園の遊具やフェンスなどが破壊された為、修理及び危険管理の見直しの為に夏休み中はこの公園を閉鎖します。"
と書かれた紙が貼られており、公園の周りには黄色のテープで入れないようになっていた。
公園入り口前で金城と包帯ぐるぐる巻きのとっちゃんが済ました顔で言う。
「こうやって子供は遊び場を失う訳ですな」
「そうじゃな。そうじゃな」
その二人を修吾と蓮が呆れた様子で言う。
「よく言うぜ」
「爆発で無傷って怖すぎる……」




