01:足りない男の勝たせ方
初投稿です。
色々矛盾などあるかもしれませんが、
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
朝のギルドは、いつも少しだけ騒がしい。
依頼の紙が貼られ、剥がされ、また貼られる。
その中で――レオン・アルバーンは、静かに立っていた。
視線は掲示板の端。
誰も手を伸ばさない依頼ばかり並ぶ場所。
「……これでいい」
彼が選んだのは、低報酬の討伐依頼だった。
その様子を、何人かが横目で見る。
「またあいつか」
「Dランクの召喚士だろ?」
「地味な仕事ばっかやってるやつ」
周りから声が聞こえるが、確実に、評価は低い。
レオンは気にしない。
――気にしないようにしている。
⸻
出発の準備をしている時だった。
「ちょっといいか」
声をかけてきたのは、見知らぬ男だった。
装備は悪くない。Cランク帯といったところ。
「支援できるんだよな?」
レオンは一瞬だけ間を置き、頷く。
「……はい」
「なら、臨時で入らないか」
提示された依頼は、
東の森に現れた魔物の群れの討伐任務。
本来は3人パーティだが、1人欠けたらしい。
「正直、条件ギリギリだが……他にいない...それに、早く手を付けないと面倒になりそうでな」
選ばれた理由はシンプルだった。
“妥協”。
それでもレオンは答えた。
「……やります」
⸻
森は、想像よりも鬱蒼としている。
「妙だな……」
前を行く男が呟く。
「魔物の気配が妙な感じだ...いつもと違う...」
嫌な静けさ。
そして――
「来るぞ!」
一斉に気配が弾けた。
四方から、魔物。
想定よりも数が多い。
「囲まれた!!」
前衛が叫ぶ。
「支援、すぐに出せ!」
レオンは魔導書を開いた。
指がわずかに震える。
(落ち着け……いつも通りでいい)
「――フェアリーバード」
光が舞う。
一羽、二羽、三羽。
妖精鳥が空に散る。
⸻
最初に変わったのは、“ほんの少し”だった。
前衛の動きが、わずかに軽くなる。
盾が、少しだけ長く耐える。
呼吸が、ほんの少し整う。
「……なんだこれ」
だが、その“少し”が途切れない。
レオンは詠唱を重ね続ける。
切らさない。絶やさない。
「回復、まだいけるか!?」
「……いけます!」
強くはない。
だが、確実に続く。
⸻
一体の魔物が、隙を突いて後ろへ抜けた。
「しまっ――」
誰かが声を上げるより早く、レオンは動いていた。
左手が腰へ伸びる。
小剣が抜かれる。
「……っ」
恐怖はある。
だが、足は止まらない。
妖精鳥が一羽、彼に触れる。
世界が、わずかに遅くなる。
振り下ろされる爪。
それを紙一重で外し、
最小限の動きで、喉元に切りつける。
が、浅い。
しかし、前衛が持ち直すのには十分だ。
すぐに後ろへ下がり、杖を構え直す。
「戻りました!」
「よくやった!支援頼む!」
「…はい...!」
それ以上は言わない。
呼吸を整え、また支援に戻る。
⸻
戦闘は長引いた。
だが、崩れなかった。
誰も倒れない。
誰も欠けない。
じわじわと、確実に押し返す。
「いける……いけるぞ!」
最後の一体が倒れた時、
その場に残ったのは、荒い息と――
全員無事という結果だった。
⸻
「……助かった」
リーダーが言った。
「正直、お前のこと、最初は期待してなかった」
レオンは黙って聞く。
「でも違ったな」
男は苦笑する。
「派手じゃない。でも“全部ちょっと良くなる”」
仲間も頷く。
「しかも切れない」
「あと地味に自分で死なない」
レオンは少しだけ目を伏せた。
「……強いことはできません」
すると、リーダーは首を振った。
「逆だ」
「強すぎないからいいんだ」
その言葉の意味が、すぐには分からなかった。
⸻
ギルドに戻ると、視線が少しだけ変わっていた。
「おい、あのDランク……」
「さっきのパーティ、生きて帰ったらしいぞ」
「例の森だろ?」
ざわめきが広がる。
レオンは気にせず、報酬を受け取る。
だが――
カウンター越しに、受付嬢が小さく笑った。
「少しは自信ついた?」
レオンは、ほんの少しだけ考える。
そして、
「……まだです」
そう答えた。
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ギルドを出る。
夕焼けが街を染めている。
肩に、妖精鳥が舞い降りた。
「……でも」
小さく呟く。
「少しは、通用したか」
誰に聞かせるでもない言葉。
それでも確かに、手応えはあった。
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“足りない”ままでも、
誰かを勝たせることはできる。
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その事実だけを胸に、
レオン・アルバーンは、また歩き出す。
いわゆるテンプレのファンタジー系です。




