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第八試合 古流柔術VS我流喧嘩術 2

 完全に宙に浮いた花連実の体が、次の瞬間、畳に叩き付けられた。


 ダアンッ!!


「ごぼおっ!!」


 御土垣の喉輪は、最後まで花連実の首を離れなかった。喉仏を押し込まれ、またも未経験の激痛が花連実を襲った。

 これが、アスファルトなら決まっていた。花連実はそれを認める。後頭部は割れ、下手をすれば喉を潰されていただろう。


(でもよ、ここは、お前ら格闘家の大好きな「試合会場」なんだよなあ!! 畳なんだよ!!)


 花連実は大きなダメージを自覚しながらも、決死の覚悟で立ち上がった。体が負った、全ての激痛を無視する。これは花連実が持つ、喧嘩術の奥義でもあった。

 そして、すぐ傍にいる柔術家の襟首を再び掴んだ。

 さっきと同じだと思った柔術家が再び引き技を使う、その瞬間に花連実の勝機がある。

 しかし、柔術家は動かなかった。


(野郎、ならこっちから――……!? なんだ!?)


 急激に、花連実の体から力が抜けて行く。筋肉が緩み、意識さえ遠のいて来た。

 御土垣が、埃を払うように軽く、襟首から花連実の手を払った。

 つかまるところのなくなった花連実が、ふらふらとよろめく。


(嘘だろ、力が入らねえ!? 何が起きてやがる!? くそ、とにかく息を――……何!? なんだ、いや、これだ、このせいだ、何かおかしいのは! 息が吸えねえ(・・・・・・)!!)


 激しく背中から叩き付けられたことと、喉への直接の加撃により、呼吸が奪われていることに、最早極端な酸欠に襲われている花連実は思い至ることができない。

 無理矢理起き上がったことが、状態を更に悪化させていた。

 視界が黒く染まって行く。

 数瞬後には、自分は気絶する。花連実はそれを悟った。


(くそ、こうなりゃ!!)


 花連実は、肺に残った最後の空気を総動員して、柔術家へと踏み込んだ。

 だが天振流柔術の真髄は――相手の反射を、意図を、意志を逆用することにある。

 踏み込んだ不良の足を、御土垣の足が強く払う。

 花連実の上体が、大きく後ろへ傾いた。


 その顔面を、逆に踏み込み返した御土垣の右肘が、打ち下ろす形で直撃した。


 視界と共に意識も完全にブラックアウトした花連実は、そのまま試合場の畳に沈んだ。


 単純な打撃ではなく、人間生理を攻められてのノックアウトである。

 花連実にはもう、指一本動かすことも出来なかった。


 審判の声が響く。

「勝負あり!! それまで!!」


『決まったアア!! 第一回戦の最終試合は、喧嘩屋を見事下し、柔術の勝利です!! 武術家の面目躍如というところでしょうか!!』

『大したもんだ。あの歳で、えれえ慣れてやがる。人間の相手(・・・・・)がな。まだ見せてねえ技も多そうだ』

『はっ! しかし、格闘技である以上人間相手に慣れているのは皆同じなのでは!?』

『ま、そう深く突っ込むねェ』

 我終院は低く笑った。


第八試合

O御土垣正美(みどがきまさみ)

P|花連実竹道(はなつらみたけみち)


『いずれ劣らぬ猛者たちで行われた一回戦、これで全て終わりました!! これよりは、更に激しさを増した二回戦となります!! それでは皆様、放送室から、一旦失礼いたします!!』

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