第七試合 グローブ空手VS柔道 1
第七試合
M真島竜胆。グローブ空手、柳一刀館。二十一歳。身長百八十センチ、体重八十二キロ。オープンフィンガーグローブ、空手衣。
N難波剛志。柔道、烈道会館。二十二歳。身長百八十四センチ、体重九十三キロ。バンテージ、柔道着。
『第七試合は、またも打撃VS組技となりました! そして共に百八十センチ越えの巨漢同士です!』
『もっとでけえのはいるが、予選でこいつらにのされてんだよな』
『一般に、サイズがよければ格闘も強い! というもの! 真島はその体格から繰り出される強力なラッシュで、二メートル越えの選手を次々と屠りました! 同じく、難波もまた時には力、時には技でKOの山を築いています! これは激戦が予想されます!』
『さてな。激戦になるかどうかは、すぐ分かるぜ』
『さあ今、試合開始です! 両雄が接近するウーーッ!!』
グローブ空手は、素手のフルコンタクト空手と違い、顔面を打つ。
それだけに、真島はキックボクシングやムエタイといった、顔面ありの打撃系との試合を切望していた。空手を顔面なしの不完全な格闘技をみなす連中を血の海に沈めてやりたかった。
組技との戦いは、本意ではない。男同士、正面からの打撃の打ち合いにこそ真島の興味は集約されているのだ。
(すぐに終わらせてやりたいが)
真島は、難波を見た。その体は、数字で聞くサイズ以上に分厚く見える。
(そう簡単な相手でもないか)
容易には打ち込めない。真島は間合いをとった。
難波は、顔面を両腕でガードしながら前に出た。
柔道の特性上、両腕で相手を掴まなくてはならない。しかしそれこそが、柔道対打撃の鬼門でもある。
打撃VS組技というのは、打撃を数発もらっても、それに耐えて組んでしまえば組技が有利、と当たり前のように言われてきた。
しかし、重量級の打撃を「数発」もらうことの恐怖を、難波が軽視したことは一度もない。
特に、相手を掴む瞬間というのは、己のガードを解いた無防備な状態でもあるのだ。
難波の背中を冷汗が流れた。
『う、打ち合わない! 試合開始から三十秒経過、しかし接触しません! これが一撃必倒の、重量級同士の戦い! おいそれを仕掛けません!』
『だが、そうは続かねえ。二人とも闘士だ。我慢なんかきかねえさ。初動を見逃すなよ』
先に踏み込んだのは、難波だった。
空手に先手を取られ、ラッシュを仕掛けられるわけにはいかない。打撃対策は積んできたが、勢いに任せた乱打戦になれば、何が起きるか分からない。打撃には、常にそうした恐ろしさがある。
首を縮め、分厚い両肩にうずめるようにして、右腕で顎と頭を守りつつ、左腕を突き出した。
この左手は、弾かれても構わない。そこから、密着しての攻防に持って行ける。
しかし、あっさりと――あまりにもあっさりと、その手が真島の右襟を取った。
(え?)
難波がそのことに驚いた瞬間、猛牛の突進のような、真島の連打が始まった。猛烈な回転で、中段突きが次々に打ち込まれる。
「がっ、ぐおッ!」
難波が苦悶の声を漏らす。
(これが真島の狙いか! わざと襟を取らせてガードが薄くなったところで、この連打を打ち込むのが!)
巨漢柔道家の重く分厚い肉体を、急所狙いの技ではなく、正面から力で撃ち抜く。それが、巨漢空手家である真島の選択した戦法だった。
難波が慌てて右腕を下げれば、待ってましたと顔面を打つだろう。素手のフルコンと違い、グローブ空手には顔面打ちの躊躇はない。
(信じろ。俺の腹は、肋骨は、逆に、|グローブ付きの拳では壊せない《・・・・・・・・・・・・・・・》!)
襟は片方しか取れていない。
しかし難波は、竜巻のように体を回転させた。
真島の懐に飛び込み、一気に背負う。
(デカい空手屋! その体で、そのデカさで、まともに担がれ、投げ落とされたことがあるか!!)




