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【8/29後日談追加】妹に不妊をあて擦られ続けたので、侯爵家の不正を告発しました【完結】  作者: 木風


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第二話 昨日まではずっとそう思っていたわ

 その夜。

 寝室の窓辺に腰かけていると、背後から声がした。


「楽しそうだな」


 振り返ると、夫のクラウスが立っていた。

 寝衣姿の彼は少し眠そうで、それでも目元には穏やかな笑みがある。


「楽しそうに見えまして?」

「少なくとも、ここ最近では一番すっきりした顔をしている」


 窓の外へ視線を戻す。

 月明かりが庭園の噴水を銀色に染めている。


「カミラから手紙が来たわけではないの。母からよ」

「侯爵家のことか」

「知っていたの?」

「知らないわけがないだろう。俺の執務室にあった書類だ」


 ゆっくりと夫を見る。

その表情はいつもと変わらず優しい。


「怒っている?」

「なぜ?」

「私が、あなたの書類を見たから」

「それは少し困る」


 クラウスは苦笑した。


「だが、怒るほどではない」

「私が告発したことは?」

「告発されて困るようなことをした侯爵家が悪い」

「……ずいぶん、簡単に言うのね」

「事実だからな」


 迷いのない声に、思わず瞬きをした。

 クラウスは隣へ腰を下ろした。


「お前がずっと妹君の言葉に傷ついていたことは知っていた。俺がもっと早く止めるべきだった」

「あなたのせいではないわ」

「なら、お前のせいでもない」


 彼の長い指が、ヴィオレッタの手に重なる。


「私が……こんな嫌な女だから、子を授かれないのかもしれないわ」

「それは違う。人を刺し続けた者が、自分だけ刺されずに済むと思う方がおかしい」


 しばらく黙ると、ぽつりと言った。


「けれど、すっきりしましたわ。最低かしら」

「いいや。ようやく息ができた顔をしている」


 クラウスは静かに言った。

 その言葉に、胸の奥が少しだけほどけた。


 翌朝。

 クラウスとともに宮廷医を訪ねた。

 前日に届いた手紙に、こう記されていたからだ。


『良い報せがございます。至急、お越しください』


 診察室で、宮廷医は穏やかに微笑んだ。


「公爵夫人、おめでとうございます。ご懐妊です。およそ八週かと存じます」


 息を呑む。

 しばらく、言葉が出なかった。

 隣でクラウスが彼女の手を握る、その手がわずかに震えていた。


「……本当に?」

「はい。どうかお身体を大切に。無理はなさらないように」


 口元を押さえた。

 視界が滲む。

 嬉しくて、信じられなくて……長い間、喉の奥に詰まっていたものが、ようやく溶けていくようだった。


 部屋へ戻ると、クラウスは彼女をそっと抱き寄せた。


「よかった」


 低い声が、少し震えている。

 ヴィオレッタは夫の胸に頬を寄せた。


「ええ」


 窓の外では、王都の街並みが春の光に輝いていた。

 その時、侍女が控えめに告げる。


「奥様。ご実家より、またお手紙が届いております」


 封を切ると、母からの手紙だった。

 そこには、カミラが実家に戻りたいと泣きついていること。

 侯爵レナードから、持参金の使途についてまで問い詰められていること。

 社交界では、侯爵家の信用失墜が噂になっていること。

 そして、カミラがこう言っていたことが記されていた。


『どうして私ばかり、こんな目に遭うの』


 その一文を見つめ、静かに手紙を閉じた。


「何と?」

「カミラが、自分ばかり不幸だと嘆いているそうよ。私も、昨日まではずっとそう思っていたわ……」


 腹部に手を添え、春の光の中で微笑んだ。


「私、よい母親になれるかしら?」

「なれるさ」

「なぜ、言い切れるのですか?」

「君には、立派な反面教師がいたからな」


 その言葉に、声を出して笑った。

 お腹に添えた手に、もう片方の手を重ねる。


 やっと、来てくれたのね。

 もう誰にも、この幸せをあて擦るための道具になどさせない。

 私は私の子を、ただ愛する。

 そして妹には、二度と私の人生に口を出させない。

ブックマーク、★★★★★、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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― 新着の感想 ―
旦那さん視点が見たいな 奥様傷つける義妹排除する気で情報集めてたんだろうけど、 奥様が書類見たのは偶然だったのかな
妹の侯爵家と実家には今までの妹の言動を伝えて、最短でも無事出産が終わるまでヴィオレッタに接近禁止命令を出して貰わないと。 何するかわからないよ?この妹。
姉が苦しんでるのを見るのが、快感だったんでしょうな。 『姉より先に懐妊した!』『姉より先に跡継ぎ産んだ!』と、上から目線だったのでしょ。 >「告発されて困るようなことをした侯爵家が悪い」 まさに、…
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