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完璧超人の美少女モデルは、僕の前でだけ甘々でポンコツになる  作者: 肥前文俊


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第31話 試験勉強……する?

 僕は、透花から直接に認められたこともあって、最近は何度も失いかけていた、透花のお世話役としての自信を完全に取り戻していた。

 この数日はいつも以上に、透花へのお世話焼きに力が入っていたように思える。


 とはいえ、僕にとっても試験勉強は大切だ。

 母さんも父さんも、勉強を強制するようなタイプではないけど、それは信頼してくれているからだと思っている。



 透花が視線を反らし、照れたように指を突き合わせながら、モゴモゴと口を動かした。

 普段誰に対してもハッキリとものを言う透花にしては珍しい態度に、僕は目を見開く。


「ねえ、守くん、今日もテスト前だし、試験勉強してるんだよね。調子はどう?」

「あんまり自信はないね。元々僕は成績が良い方じゃないし。透花にこの前言われて、少し勉強のやり方は変えてみたけど、まだ結果が出てるかどうかもわからない」

「じゃ、じゃあ……私が教えてあげようか?」

「そりゃ僕は嬉しいけど、透花の勉強の邪魔にならないか?」

「大丈夫。私一人でやるより、教えたほうが効率が良くなるって言ったでしょ。だ、だから今晩一緒に試験勉強……する?」


 透花がとても言いにくそうにしていた理由に思い当たって、僕は顔が熱くなるのを感じた。

 顔を包みこんだ信じられないぐらい柔らかいおっぱいの感触とか、ムッチリとした太ももの張りだとか、とんでもなく甘い香りだとか、そういうのが一瞬にしてフラッシュバックする。


 僕の顔面に押し付けられ、挟んできた、あの豊満な双丘。

 マシュマロよりも柔らかく、それでいて確かな弾力と重みがあった。


 僕の呼吸に合わせて、ふわり、ふわりと優しく押し返してくる感触は、僕の理性をゴリゴリと削り取っていった。

 鼻腔をくすぐる、ミルクのような甘い香りと、彼女自身の柔らかな匂い。


 規則正しい寝息。

 僕だけに見せる、無防備で甘えきった姿。


 その全てが、僕の男としての本能を激しく揺さぶり、思考を真っ白に塗りつぶしていく。

 あの夜、僕は天国と地獄を同時に味わったのだ。


 僕は……僕は努めてその時のことを思い出さないように意識しながら(つまりは思いっきり意識してしまいながら)、透花が頑張って誘ってくれた勉強会に、参加することを了承した。


 頼む、僕の心臓……もってくれよ……ッ!




 その日の夜、僕がテスト勉強の準備を終えて、透花の部屋に入ると、彼女はすっかりと準備万端(・・・・)整えていた。


 部屋に足を踏み入れた瞬間、ふわりと甘い石鹸の香りと、湿り気を帯びた温かい空気が僕を包んだ。

 どうやら、僕が来る直前までお風呂に入っていたらしい。


「いらっしゃい、守くん」


 振り返った透花の姿に、僕は息を呑み、その場で凍り付いた。


 彼女は、白くて薄手のタンクトップに、裾の短い黒のドルフィンパンツという、極めてラフな格好をしていた。

 お風呂上がりで火照った体は、ほんのりと上気して艶かしい。

 濡れた髪はタオルで無造作にまとめられているが、後れ毛がしっとりと白い首筋に張り付いて、妙に色っぽかった。


 そして、僕の視線は、彼女の胸元に釘付けになった。

 薄いタンクトップの生地は、体の熱と湿気でしっとりと肌に張り付き、その下の柔らかな膨らみの形をありありと浮かび上がらせている。


 ――ノーブラだった。


 豊かな双丘の頂きが、布地を内側からつんと押し上げ、その存在を明確に主張している。

 そのあまりにも無防備で扇情的な光景に、僕の思考は完全に停止した。


 ドルフィンパンツから大胆に伸びる、陶器のように滑らかで真っ白な太ももは、まだ水分を含んでしっとりと濡れており、部屋の照明を反射して艶めかしく輝いている。

 その健康的な眩しさに、僕は目を逸らすことすらできない。


 ダメだ。意識すればするほど、昨夜の記憶が鮮明に蘇ってくる。

 顔に押し付けられた、あの信じられないほどの柔らかさと温もり。

 僕の股間に顔を埋めてしまった時の、彼女の絶望に染まった顔。


 心臓が、警鐘のように激しく鳴り響く。


「どうしたの、守くん? 顔、真っ赤だよ?」


 僕の狼狽ぶりに気づいてか、透花はこてん、と小首を傾げた。

 その仕草は、どこまでも無邪気で、自分がどれほど破壊力のある格好をしているのか、まるで自覚がないように見える。


 本当に分かってないのか……?

 いや、もしかしたら、分かっててやっているのかもしれない。


「な、なんでもない! それより、その格好……風邪、引くぞ」

「えー? でも、お風呂上がりで暑いんだもん。大丈夫だよ。それに、守くんの前だし、いっかなって」


 守くんの前だから。

 その言葉が、僕の心に甘く、そして鋭く突き刺さる。


 おま、おまえ……健全な男子高校生を前にして、どこまで無防備なつもりだ!

 こんなの、こんなの襲われても文句は言えないんだぞ……!?


 しないけど!


「……っ! と、とにかく、早く髪乾かせよ! ドライヤー持ってくるから!」

「あ、待ってよ、守くん!」


 僕は、これ以上この空間にいるのは危険だと判断し、半ば逃げるようにして部屋を飛び出した。

 背後で聞こえる透花の楽しそうな笑い声が、やけに僕の耳に残った。


 今夜の勉強会は、昨日とはまた違う意味で、眠れない夜になりそうだ。




 洗面所からドライヤーを持って部屋に戻ると、透花はすでにベッドの縁に腰掛け、僕が来るのを待っていた。

 その背中は、どこか期待に満ちているように見える。


「ほら、こっち向いて」

「ん」


 僕が声をかけると、透花は素直に背中を向けた。

 僕は彼女の後ろに立ち、コンセントにプラグを差し込む。


 ゴォーッという音とともに、ドライヤーから温かい風が吹き出した。

 僕はまず、タオルで大まかな水分を優しく拭き取っていく。


 そして、指先で彼女の髪をそっと持ち上げ、根元から丁寧に乾かし始めた。

 指を通る、しっとりと重い髪の感触。


 ドライヤーの熱で温められた髪からは、甘いフローラル系のシャンプーの香りがふわりと立ち上り、僕の鼻腔をくすぐる。

 濡れた髪は艷やかでキューティクルが光を反射している。


 いつも丁寧に手入れされた、美しい髪だ。

 手入れしているのは僕だけど……!


 僕の手つきに無駄はない。

 熱が一箇所に集中して髪を傷めないように、ドライヤーを常に動かしながら、指の腹で頭皮をマッサージするように乾かしていく。


 指先に伝わる頭皮の温かさと弾力を感じながら、手を動かす。

 これは、僕が長年かけて習得した、透花専用の技術だ。


「ふふん、ふーん♪」

「上機嫌だな」


 温かい風が心地よいのか、透花は機嫌良さそうに鼻歌を歌い始めた。

 とろんとした目つきで、少しだけ開いた唇から漏れる甘い声。


「そりゃそうだよ。守くんの気持ちいいお世話してくれて、とっても幸せなんだもん。やっぱりメイクさんとかも凄いけど、守くんのお手入れが一番好きだなあ」

「……そっか」

「うん。とっても安心できちゃう。こんなの守くんだけだよ」


 その無防備な姿に、僕の心臓が少しだけ速くなる。

 彼女が気持ちよさそうに少し身じろぎした、その瞬間だった。


 タンクトップの襟元がわずかにずり下がり、豊かな胸の谷間が、僕の視界にちらりと飛び込んできた。

 なにか先端にピンク色のものが見えた気がする。


「んなっ、~~~~~~っ!?」


 昨夜、僕の顔を埋めた、あの信じられないほどの柔らかさと温もりが、脳裏に鮮烈にフラッシュバックする。

 心臓が警鐘のように激しく鳴り響き、顔にカッと血が上るのが分かった。


「フフフフーン♪ ラーララー」


 ダメだ、意識するな!

 そう自分に言い聞かせても、一度焼き付いた光景は、そう簡単には消えてくれない。


 しかし、僕の内心の動揺とは裏腹に、その手つきは少しも乱れなかった。

 むしろ、雑念を振り払うかのように、その手際はさらに洗練されていく。


 指先は冷静に髪を梳き、ドライヤーは完璧な角度と距離を保ち続ける。

 外面では、僕はただ黙々と作業をこなす、いつもの「お世話係」の顔を完璧に保っていた。


「んー……きもちい……。守くんのドライヤー、世界一だよぉ……」

「……………………そう」


 髪が乾き、僕がドライヤーのスイッチを切ると、透花はとろけるような表情で振り返った。

 その無邪気な笑顔と、少し掠れた甘い声に、僕は内心で安堵のため息をつきながらも、これから始まるであろう「本当の勉強会」に、再び気を引き締め直すのだった。

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